金融審議会のレポートが公表されて以降、「老後2000万円必要」という曖昧なフレーズがマスコミで頻繁に登場するようになり、金融機関への投資の相談が増加しているそうです。
Session-22で山崎元さんが金融審議会のレポートの解説。
— 斗比主閲子 (@topisyu) June 22, 2019
レポートの良いところ悪いところだけではなく、リスナーからの「いくらお金が足りなくなるのか」「年金を自分で投資したほうがいいのでは」といった質問に、正直に回答している。
この件で不安な人は是非聴いてほしい。https://t.co/s8ZqQjjRGr pic.twitter.com/EgjHM6e3vy
私は「やっぱりな」と思いつつ、一連の報道の仕方には非常に疑問を持って眺めています。というのも、薬物や虐待報道と同じで、渦中の人にどうしたらいいかを示さないで問題だとだけ報道すれば不安に駆られる人がいて当然だから。
薬物報道でも、虐待報道でも、そして、今回の金融報道でも、単に「こんな恐ろしい!」と垂れ流すだけだと、視聴者は不安に駆られる。
— 斗比主閲子 (@topisyu) June 28, 2019
薬物や虐待なら公的な窓口やNPOの紹介をセットにしたほうがいいし、金融なら、専門家のコメントをとるなり、信頼できる金融機関や金融商品をお勧めしたほうがいい。
今回の件もマスコミが数字だけ独り歩きさせるようなことをするから、
経産省に独自試算、老後に必要な蓄えは「2895万円」:朝日新聞デジタル
金融機関への相談が増加するようなことになったと見ています。金融審議会の報告書でも、数字はざっくりとした計算であって、自分で計算するのが大事って書いてあるのに。あんな地味な報告書なのに。
前にも金融庁の報告書を紹介したとおり、2000万円必要だとは書いてないし、自分たちで計算するのが大事としてる。
— 斗比主閲子 (@topisyu) June 28, 2019
老後にいくら必要かは、収入と支出のバランスと、本人がいつまで働くかと、他の資産の有無で全然違う。
「こんな試算があった!」と金額だけ一人歩きさせて報道するのは好ましくない。 pic.twitter.com/nvy2XWw2kE
正直言って、投資初心者が、銀行や証券会社の対面窓口に投資の相談に行くのは、カモがネギを背負って行くようなものです。そのような行動に走らせていてフォローをしない、メディアの報道の仕方は問題だと私は考えているわけです。
このブログでは、過去、自殺やDVやパワハラの相談窓口も適宜紹介してきましたし、
話題になった自殺を取り上げる際に読んでおきたいWHOの手引き - 斗比主閲子の姑日記
「ただでさえ切れやすいのにお酒を飲むと手がつけられない夫。それでも愛していたのに裏切られた。この気持ちどうしたらいい?」 - 斗比主閲子の姑日記
新入社員にお勧めの、お勧めしない社内トラブル - 斗比主閲子の姑日記
投資関連の記事も折に触れて書いてきましたので、
「この機に投資をしなきゃ!」と思っている人向けに、お勧めできる証券会社と投資商品を紹介するのがこの記事の趣旨です。
なお、このブログでは証券会社と投資商品の紹介で、私にお金が振り込まれるような仕組みにはなっていません。リテラシーが高い人であれば分かるはずですが、分からない人のために書いておきます。
お勧めできるネット証券会社
お勧めできる"ネット証券会社"としたのは、銀行と対面販売メインの証券会社を外す目的です。
投資商品は銀行でも買えますが、銀行は扱っている商品が少ない上、買うときにはしばしば営業されます。私は、みずほ銀行の他行宛振込手数料を月間4回まで無料にするために、みずほ銀行で投資信託(たわらノーロード国内債券インデックス)をネット経由で1万円購入しましたが、申し込み後、みずほ銀行から営業の電話が増えました。
銀行は当然ながら、対面販売メインの証券会社もお勧めしません。理由は、同じく営業されるからです。
郵政、ノルマ営業見直し 投信不適切販売で社長陳謝 :日本経済新聞
日本郵政傘下のかんぽ生命保険が契約者の負担増につながる保険商品を販売していたことが24日分かった。ゆうちょ銀行でも高齢者への不適切な投資信託の販売が発覚した。
有店舗型の国内金融機関は、店舗での売上が急激に減少しているため、店舗の担当者のノルマが厳しくなっています。その上、本人たちも金融の知識は大してなく、知らずに銀行や証券会社が儲かる手数料の高い商品をお勧めしがちです。それしか知らないから。だから、豪ドルの為替リスクを知らずに、年寄りに対して無邪気に「豪ドル建て貯金しましょう!」とか言い出す。私の姑も見事に掴まされました。
ネット証券では、購入する商品の営業をされることはまずありません。
ネット証券と一言でいっても、松井証券とか、マネックス証券とか色々ありますが、私がお勧めするのは、ネット証券のTop2である、SBI証券、楽天証券です。
昔(5年~10年前)はマネックス証券も非常に魅力的な、低コストな商品を一早く販売していましたが、最近は、SBI証券や楽天証券に遅れを取っています。扱っている投資信託の数はこの2社が圧倒的に多い。余談ですが、マネックス証券については、創業メンバーで、かつ広告塔だった内藤忍さんがワインファンドとか紹介しだしたのを見て、個人的にはドン引きして距離を取るようになりました。ワインファンドは、ない。
脱線しましたが、SBI証券はみんな大嫌いなTポイントでの投資ができるようになりますし、
SBI証券、Tポイントで投信買い付け可能に 投資初心者取り込む :日本経済新聞
楽天証券は以前から投資をすると楽天ポイントがたまったり、楽天ポイントでの投資ができたりします。
余ってる楽天ポイントの使い道を考えるのが嫌だったけど、投資信託を自動で買えるようになって気が楽になった - 斗比主閲子の姑日記
非常に身近な感じがしますね。
同じように身近に感じるだろう、LINEワンコイン投資はお勧めしません。手数料が年1%と高いから。
個人的には、楽天証券で、楽天カードで投資をするのが超お勧めです。投資商品の手数料(せいぜい年間0.5%以下)をポイント(月5万円まで1%還元)でかなりカバーできる。
お勧めできる投資商品
晴れて、SBI証券か楽天証券か、どちらかの証券会社で投資用の口座を開設したとして(開設にかかる期間は、2週間~1ヶ月ぐらい)、お勧めできる投資商品は、インデックスファンドで、手数料(信託報酬)が安く、ノーロード(購入時手数料がゼロ)なものです。
具体的には、投信ブロガーに対する2018年度のアンケートで、21商品中7商品もラインナップされた、
投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2018
三菱UFJ国債投信が作った金融商品のeMAXIS Slimシリーズのどれかをお勧めします。
※画像はとことんコストを追求する投資信託、eMAXISSlim(イーマクシス・スリム)から
お勧めする理由は、みんなに人気で、人気が継続するのが想定できるからです。みんなに人気なのがなぜ重要かというと、ちゃんと資産残高が積み増されていくので、途中で償還されるリスクが非常に低いからです。長期的に投資をする前提だと、その商品が人気がなくなり償還されるのは困る。
人気が継続するのが想定できるのは、このeMAXIS Slimという金融商品は、一年間の手数料(信託報酬)を常に業界最安値にすると明示し(通称、コバンザメ作戦)、これまで実行し続けてきているからです。スーパーの「近所でこれ以上安い価格のお店があったらお知らせください!」を金融商品でやっているわけです。人気にならないわけがない。
だから、マネックス証券でも、松井証券でも、もちろん、楽天証券でも、販売される投資信託の上位には、いつもこのeMAXIS Slimシリーズが並んでいます。逆に、eMAXIS Slimを扱っていない金融機関は口座開設しないほうがいい。顧客に最良の商品を提供する気がないと言っているようなものですから。ちなみに、上に書いた通り、私が振込手数料を無料にするため投資信託を1万円購入した、みずほ銀行では、eMAXIS Slimシリーズは取り扱っていません。
そんなお得なeMAXIS Slimeシリーズのうち、どれを買うかは個人のリスクとリターンで選べばいいと思います。今は11本ラインナップがあります。
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国内株式(TOPIX)インデックス
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国内株式(日経平均)インデックス
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先進国株式インデックス
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全米株式(S&P500)
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新興国株式インデックス
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全世界株式(除く日本)
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全世界株式(3地域均等型)
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全世界株式(オール・カントリー)
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バランス(8資産均等型)
- 国内債券インデックス
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先進国債券インデックス
どうしても投資に忌避感があり、リスクが怖いということなら10番目と11番目に紹介した債権メインにすればいい。国内債券だと銀行預金とそんなに変わらないし、海外債権は為替リスクに見合わないと私は考えていますが。なお、9番目のバランス(8資産均等型)でも債権は含まれています。これはREITも入っていて、面白い商品。
私自身は、リスクとリターンと運用機関と信託報酬の関係から、3番目の先進国株式インデックスをメインにしています。子どものジュニアNISAは、運用期間と子どもの金融教育を考慮し、全米株式(S&P500)がメインで、その他にも新興国とか国内株とかひふみとかを混ぜています。
我が家のジュニアNISAは米国株45%、先進国株40%、新興国株5%、国内株5%、ひふみプラス5%(合計100%) - 斗比主閲子の姑日記
リスクとリターンの感覚は人によって異なりますから、試しに少額でいいから投資をしてみて、
株価がガクーンと下がって狼狽したらとりあえず美味しいケーキを食べる - 斗比主閲子の姑日記
株価が上がったり下がったりするのに、自分がどれだけ一喜一憂する人間かで判断するといいと思います。私は、長年投資をしてきた結果、一日に100万円ぐらい上下しても特に気にならないリスク感覚になっているため、株式メインで運用しています。
なお、eMAXIS Slim以外の商品を買いたいなら、金融庁がつみたてNISAの投資先として選定した140本ぐらいの金融商品から選べば安心です。
しかし、この中には、三菱UFJ国債投信の、かつては低コストであったものの、今では競争力が失われた(名前にSlimがつかない)eMAXISシリーズも含まれていたりしますので、中身はよく見てください。それでも、何千とある金融商品の比較をするよりかは手間はかかりません。"商品名+信託報酬"で検索してみてください。
なお、世の中で金融商品をお勧めしている人の中には、ここ5年ぐらいで熾烈な手数料競争が起きていることを知らない人が結構います。私が投資系ブログで定期購読している、たわら男爵さんでも、そんな人が紹介されていました。
ブランド人・●●●●●が買っているインデックスファンド - 40代でアーリーリタイアしたおっさんが たわら先進国株でベンツを買うブログ
信託報酬が今どき0.8%だったり、2001年10月1日から運用を開始しているのに純資産額は216億円しかなかったりするわけですが、ご本人は幸せそうですから外野がとやかく言うべきではないでしょう。
※名前を私のブログに載せたくないため、●で隠しています。
今時は信託報酬はめちゃくちゃ下がっていますから、インデックスファンドなら信託報酬は0.5%以下という目線は持っておくといいですね。 eMAXIS Slimシリーズの信託報酬はすべて0.2%以下です。
NISAとかiDeCoとか
NISAとかiDeCoとかの制度面については、以前にもブログで紹介していますから、詳しくは書きません。
加入者が激増している『iDeCo』(個人型確定拠出年金)。年間数万円の節税メリットがあるけど、デメリットはないのか、誰向けなのか - 斗比主閲子の姑日記
子どもの学費相当(400万円)をジュニアNISAで運用する - 斗比主閲子の姑日記
「子どもの学費は、払出制限のあるジュニアNISAより、一般orつみたてNISAで運用したほうが便利ではないでしょうか」 - 斗比主閲子の姑日記
便利でお得なので、我が家はフルに活用しています。なお、SBI証券のiDeCoではSlimシリーズを扱っていますが、楽天証券では扱っていません。非常に残念ですね。
締め
繰り返しですけど、実態は地味な内容で、かつ、金額もレンジで紹介している金融審議会のレポートを準拠するようにして、「老後2000万円必要」とメディアが煽るのは非常によろしくないと私は考えています。
煽られて投資をし始めた人なんて、金融機関の養分にされがちだし、狼狽売りとかもしちゃいがちだから。できれば、時間をかけて金融リテラシーは向上していったほうがいい。
周りを見れば、ロシアでも年金受給年齢が後ろ倒しになり、
ロシアの年金制度改革がプーチン人気を潰す | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
積極的に移民を受け入れて人口が増加しているオーストラリアでも、iDeCoに似た私的年金制度(スーパーアニュエイション)が強化されて、オーストラリア国民の資産の多くがこの私的年金となっています。
高齢化が進む中で年金制度を持続するには、将来のオーストラリア国民がその負担に耐えられるものでなくてはならない。このためオーストラリア政府は、2009 年に、老齢年金について「支給開始年齢の引上げ」、「所得テストの強化と年金資源の低所得者への重点化」、「高齢者の就労促進」等の改革を実施した。また、スーパーアニュエイションの強制的掛金率を引き上げることも決定した。
日本もこの流れに追従するのは、私には違和感ありません。
なお、この議論に党派性は関係ないと思いますが、お金のことを書くならば私が自民党支持層に違いないと考える人がいるため、念のため補足をしておくと、私は2013年から地方選挙・国政選挙ともに自公維新以外にしか投票していません。
立憲民主党の経済政策の金融所得・相続財産へ増税(≒資産課税の強化)には私は大賛成 - 斗比主閲子の姑日記
一昨年のテロ等準備罪の採決プロセスや、昨年の統計不正問題などを眺めていても、今の自民党のやり方は目に余るものがあります。今回の参院選も野党に入れるつもりです。新聞には、年金がいくら必要かを争点にするより、今からでも消費税増税反対のキャンペーンを打ってほしいと期待しています。