興味深いTweetがありました。
お金持ちの家に生まれて結婚はお金じゃないと言って結婚した女性の知り合いが軒並み、子供が産まれてから、自分が親にしてもらってきたことを自分の子供にしてやれないことで絶望している。
— ちぃ (@chii_barimama) 2024年3月17日
結婚はお金じゃない、けれど子育てにはお金が必要。
確かに、親とは違う夫婦の在り方を模索して、配偶者の所得が低く、思ったような生活ができないで苦しんでいる人はいると思います。
ただ、この話ってそのまま鵜呑みにはできないんですよね。なぜなら、他人に不幸を言うのは喜ばれても、惚気や生活が豊かであることなど幸福を語っても喜ばれないどころか嫉妬を買うという前提があるからです。つまり、この人が聞いた"絶望"が、真の意味での"絶望"ではなく、他人向けのリップサービスとしての"絶望"である可能性があるということ。
仮に実家が太い場合、配偶者の所得は低くても、実家の太さの恩恵は受け続けることが可能です。
というのも、日本では教育資金であれば最大1500万円まで、住宅取得資金であれば500万円~1000万円まで、直系尊属(親や祖父母)からの贈与が非課税で可能だからです。
ちょっと古い情報ですが、野村資本市場研究所の調査では、これらの贈与が熱い(金融機関の飯のタネになる)ものとして紹介されています。
また、普通に暦年贈与(非課税になる110万円までの贈与)も行われています。生前贈与では死亡する3年前の相続人への贈与は相続とみなされる(課税対象になりうる)のですが、相続人ではない孫への贈与はたとえ死亡する直前であっても相続財産とみなされません。だから、祖父母の死亡直前に孫にお金がばら撒かれることがしばしばある。
このように、実家が太い場合は様々な形での贈与が行われますが、この事実はあまり多くは語られません。なぜなら、冒頭で書いた通り話したら嫉妬を買うからです。
想像してみて欲しいのですが、自分が贈与を親族から受けた時に、友人・知人に対して、「〇百万円の贈与を受けたから、子どもの教育費はこれで賄えるよ~」なんて言いますか? 言わないですよね。
下手をすると、親や祖父母からの贈与は配偶者に対しても秘密にしている場合があります。配偶者に話すと、大きな出費がある時の夫婦間の支払いのバランスが崩れたり、家計を実家に頼ることを嫌がられたりするからです。そもそも、この手の贈与は夫婦の共有財産に当たりませんから、絶対に伝えないといけないものでもないですし。
実際、私の周囲で実家が太い人は、何らかの経済的恩恵を受けていることがしばしばあります。ただ、この事実は本人が積極的に話したことでも、私が直球で質問して教えてもらったものでもありません。
まず、その夫婦の所得水準を何となく会話の中で把握していて、その所得水準からすると賄えないはずの家や車や教育費を掛けていることを確認していて、さらに、その人とそれなりの信頼関係を築いた上で、アルコールが入った相手からぽろっと話が出てくることがあるという次第です。そう簡単に確認できることではない。結婚式・披露宴が異常に豪勢だったとかは分かりやすいですけどね。
話は戻りますが、不幸話は娯楽として楽しまれる傾向があります。最初に紹介したTweetに、ある種の「メシウマ」的な反応が多くあったことからも分かる通りです。
親の資産が子に移転されないのであれば、富の偏在(スパイラル)が起きていないのですから、それはそれとして個人的には喜ばしいことです。ただ、実態としては、贈与の仕組みで親の富は子・孫に移転できるし、されています。非常に、残念なことですが。
※松岡さんの近著。こっちの方が『教育格差』より読みやすい