斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

加入者が激増している『iDeCo』(個人型確定拠出年金)。年間数万円の節税メリットがあるけど、デメリットはないのか、誰向けなのか

皆さん、iDeCoという仕組みをご存知でしょうか。ざっくり言えば、一定の金額を毎年貯金や投資をする年金みたいなもので、掛け金分が所得控除の対象になる、お得な制度です。

iDeCoの加入者は激増中

昨年1月から20歳~60歳までの人が基本的に全員加入できるようになり、加入者数が激増しています。制度としては2001年からあったものの、名称がいまいち定まらなかったり、加入者に制限があったりしたのが、昨今、政府がめちゃくちゃ後押ししています。2015年3月で加入者は20万人ぐらいだったのが、2016年、2017年で激増して、2018年8月には100万人を突破しています。 

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※グラフは確定拠出年金の統計|統計資料|企業年金連合会から

iDeCoのメリット

制度のメリットは、大きく2つです。

一つ目は掛け金の所得税控除。iDeCoでの掛け金(最大は月1.2万円~6.8万円。属性による。最低は月5千円)が全額所得控除になります。例えば、所得税と住民税の合計で税率が20%なら、掛け金が月5千円で年6万円とすると、その20%の1.2万円分、税金を払わなくてよくなります。

例えば、年収200万円の人だと課税所得は控除が色々あって60万円弱になるため、それに所得税と住民税で課税があって、8万円ぐらいの税金の支払いがあります。仮に、月2万円をiDeCoで拠出していると、年間での24万円が課税所得から控除されることになるため、税金の支払いが3万円ぐらい安くなります。節税額は人によって違うので、詳しくはシミュレーションサイトで自分の情報を入力してみてください。

イデコの節税シミュレーター|iDeCoスペシャルサイトbyろうきん

二つ目は運用益の課税免除。運用期間中(加入してから受給できる60歳以降まで)の運用益が非課税です。ふつうは20%運用益に課税があるのに、それがかからない。

この2大メリットがあることで、最強の節税方法として知られています。iDeCoの投資商品の中には貯金もあるので、運用のリスクを取りたくない人でも一つ目の所得税控除のメリットを享受できます。

預金金利が0.5%もつかない日本で、この節税メリットはヤバい。上記の通り、年間24万円をiDeCoの掛け金として拠出して、預金商品に回したら、3万円とか節税できるわけですから、その1年の金利としては10%を超えるみたいなものですよね。

比較的難易度の低い、一般的な節税方法8つ - 斗比主閲子の姑日記

iDeCoのデメリット

こんなお得な制度ですけど、iDeCoにはデメリットがないわけではありません。

まず、制度が複雑なこと。そもそも、政府が支援している私的年金制度ということだから致し方ないけれど、自分がiDeCoの加入対象者になるのか、いくらまで拠出できるのか等々がよく分からないですよね。手続きも結構面倒です。

iDeCoの企業版の企業型確定拠出年金に加入している場合は、掛け金(の全部or一部)を会社が拠出しており、規約なんかで追加でiDeCoに加入したくても加入できなかったりします。

次に、拠出した掛け金を受け取れるのは最低でも60歳となります。加入期間は最低10年必要なので、55歳から加入したら受け取りは65歳以降になります。23歳から加入しても60歳です。その間、自分が死ぬとかでもない限り、払い戻しはできません。また、解約もできません。一度入ったら原則入りっぱなし。この辺からも年金制度の一部って分かりますよね。国民年金を途中で解約して受け取るなんてできない。

後は、iDeCoというのは、お金を運用する金融機関を選ぶ必要があります。銀行とか証券会社の中から、手数料と商品ラインナップのバランスから選ぶことになる。これに手数料が年間3千円~4千円かかります。あと、商品ラインナップも預金商品はどこの金融機関もあるけど、投資商品については、結構ぐちゃぐちゃです。信託報酬が高い商品も混ざってる。

これがかなり厄介です。例えば、最低の拠出金である月5千円を掛けたとして、年間6万円で税金を6千円安くできたー!とか思っていても、手数料3千円~4千円ぐらい払わないといけない。また、途中で解約できないから、拠出することは一時辞められても、その間ずっと手数料は掛かり続けます。

そして、お金の受け取り方も複雑。退職金見合いで受け取るか、年金見合いで受け取るかを上手く設計しないと、運用益次第では課税が発生する可能性もありえる。退職金見合いの場合は、退職所得控除が使えるのでこれは有利なんだけど、他(勤務先とか)で退職金を貰う可能性がある人は、退職所得控除の枠はダブルでは使えません。これをシミュレーションするのは相当大変。

最後に、最近はずっと凍結されている特別法人税がどうなるか。説明は端折るので、詳しく知りたい人はご自身でお調べください。

凄くざっくり書きましたけど、とにかくややこしいんですよね。私は制度の正確な仕組みを理解するのに1年以上掛かりました。本を読むだけじゃなくて、自分で手続をしてみないと実感が湧かないことも多い。

結局、誰向けの仕組みなの?

ここまで書いて、一体誰が一番利益を享受できるのか、誰向けなのかと思われると思うんですけど、基本的には、従業員の老後に対しての福利厚生が手薄い企業に勤めている人向けだと思います。退職金が少ないとか、企業型確定拠出年金がないとか。

実際、加入者の8割が第2合保険者(民間で働いている会社員等)です。

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※画像はイデコをはじめよう|イデコ公式サイト|老後のためにいまできること、iDeCo|国民年金基金連合会から

他に想定される対象は、主婦(夫)層ですね。専業主婦(夫)なら第3合被保険者として、2017年1月から、iDeCoに加入できるようになりました。ただ、ここは全然普及していません。所得税も住民税も払う必要がなく節税メリットがないから、当たり前っちゃ当たり前。

ただ、主婦(夫)が130万円以上働くようになると第3合被保険者から第1合被保険者(自営業者等)になり、所得税も住民税も払うようになります。もはや専業主婦ではなくなる。そうすると、iDeCoの節税メリットが得られるようになります。しかも、掛け金は6.8万円/月額までいけるから、所得税と住民税をゼロにできる人もいるでしょう。最近は国が共働きにするように制度を色々変えていますから、iDeCoもそのうちの一つと捉えていいと思います。

もちろん、第1合に含まれる個人事業主もメリットを享受しやすい。

要するに、会社に守られていない人に節税メリットを享受させつつ、老後に備えてほしいというのが、国からのメッセージだと私は考えています。

締め

以上、iDeCoについてざっくり説明しました。もっと詳しく知りたい人は、検索したり、本を読んだりしてください。ここまで書くだけでも疲れました。

一応、私が読んだ中での、iDeCo限定のお勧めできる解説本は次の2冊です。どちらも同じようなことを書いています。

個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)活用入門

個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)活用入門

  • 作者: 竹川美奈子
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2016/10/17
  • メディア: Kindle版
 
図解 知識ゼロからはじめるiDeCo(個人型確定拠出年金)の入門書

図解 知識ゼロからはじめるiDeCo(個人型確定拠出年金)の入門書

  • 作者: 大江加代,大江英樹
  • 出版社/メーカー: ソシム
  • 発売日: 2017/12/20
  • メディア: 単行本
 

わざわざiDeCoのことをここまで丁寧に書いたのは、金融機関のページに飛ばして広告収入を稼ぎたいとか、読者の皆さんに節税してほしいとか、主婦(夫)層の人たちにもっと働いて欲しいとか、そういうことではありません。

先日、NISAの記事を書いたら、読者からiDeCoについての質問メールが来たからです。

子どもの学費相当(400万円)をジュニアNISAで運用する - 斗比主閲子の姑日記

世の中のほとんどの人がiDeCoをよく知らないでしょうから、制度について知らない人を置いてきぼりにして、質問メールに回答するんじゃつまらないなと思いまして。具体的な話に入る前に、まずは制度の概要を今回紹介した次第です。

ジュニアNISAで私が選んだ金融商品とか含めて、投資関連の記事はこれから何本か書きます。どうぞ楽しみにしてください。