斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

神戸市須磨区の小学校での職員間ハラスメントは極悪な2教員以外に優しい先輩教員も"悪ふざけ"で加害行為をしていたのが恐ろしい(調査報告書の感想)

私はライフワークとして、不祥事に関わる第三者委員会の調査報告書を読んでいます。

今日紹介するのは、昨年10月に報道され大きな話題となった神戸市立小学校での職員間ハラスメントに関する調査報告書です。弁護士3名によるもの。

神戸市:神戸市立小学校における職員間ハラスメント事案に係る調査委員会

今年の2月21日に調査報告書が公表されてから時間も経っていますので、当時事実関係に興味を持っていた人であれば当然ながら読了済みでしょうが、私が検索した限りでは報告書の内容を読んで紹介する記事は見かけなかったので(荻上チキさんはsession-22で紹介していた)、今回紹介する次第です。

教員4名による教員4名への3年に及ぶハラスメント

どんなハラスメントだったかというと、次の教員4名による教員4名への3年に及ぶ暴言・暴力・性的いやがらせを含む100以上のハラスメントです。

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調査報告書p.11より

①の20代の男性教員が主な被害者として報道されていましたが、この男性教員以外にも被害者はいたそうです。その上で報告書を読むと、この学校では前校長によるハラスメント、学級崩壊、教員同士の対立などなど、様々な問題があったことがうかがえます。他にも問題があり、先生方が忙しすぎていて、感覚が完全に麻痺していたことがこれだけ長期間の複数人によるハラスメントを存続させていたっぽい。

ちなみに、加害教員のうち40代女性のD教員が主犯格のようにネットではみなされていたように記憶しています。ただ、報告書を見る限りは、A教員が極悪で、B教員は徐々に傲慢になり、C教員はABに付き合って、D教員はA~Cとはほぼ別行動で"いじり"(最悪な慣習)をしていたことが分かります。調査報告書を読まなければ、今でもD教員が主犯だと思っている人は多いでしょう。

内容が内容だけに、過去ハラスメントを経験したことがある人には結構きつい描写がありますので、心に余裕があるときに読むことをお勧めします。

昨年12月に公表予定が教育委員会教職員課のやらかしで2月に延びた

報告書の中身に入る前に、今回の件で処分が下された教職員を見てみると、

神戸市:市立小学校ハラスメント事案等に関する教職員の懲戒処分について

ハラスメントをした加害教員4名と管理責任があった校長3名に加えて、教育委員会の教職員課の6名にも処分が下されていることが分かります。

これは、教育委員会の教職員課が調査委員会の調査に対し、被害教員が提出していた被害事実の半分ぐらいが確認できる書類を調査の後半まで渡していなかったことによるものです。

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調査報告書p.6より

"事情を知る由もないが"と調査報告書の中では目的が違うので深くは言及していませんが、調査の後半になってから新情報を提供するというのは心証の悪い行為ですね。

処分は下されたものの、どうして資料の後出しがあったのかは特に説明がされていないし、再発防止策もないので、神戸市の教育委員会は隠蔽体質がある組織なのかなと私は思いました。

調査報告書の中身①膨大なハラスメント

脱線しましたが、調査報告書の中身で私が気になったところを紹介していきます。

まず、ハラスメントが膨大にあったということから。

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 調査報告書p.9より

最初に紹介した4名の加害者による4名の被害者へのハラスメントだけで130ぐらい認定された事実があるんですが、教職員へのヒアリングではそれ以外にも膨大なハラスメントがあったそうです。この点は詳しくは報告書では書かれていません。

問題の背景としては加害教員個人の資質の問題が大きいとしつつも、このように大量のハラスメントが発生しており、しかもそれが解決・報告される土壌がない組織自体の問題点も指摘されています。

調査報告書の中身②加害教員のキャラクター

ちなみに、加害教員はいじめ加害者が良く言う、

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※調査報告書p.12より

「ふざけていただけだし、被害者も嫌がっていなかった」を主張していたそうです。これについて、調査委員会はいじめで良くある構図を教員が行っていることの愚かさをバッサリ切っています。

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※調査報告書p.13より。赤線は筆者(以下同様)

ちなみに、私が極悪と称したA教員は校長から指導されたら被害者に報復することを伝え、無視をしたそうです。この辺も完全に普通のいじめっ子です。どうしようもなく腐っている。

それで、B教員はA教員とつるんで徐々に態度が傲慢になっていき、C教員は、

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優しい先輩だったはずが、AとBと、そしておかしい職員室内の雰囲気に影響されてハラスメントをするようになったということです。これが怖いですよね。Aのような極悪な人間ならまだしも、環境があれば優しい先輩だったはずの人間がハラスメントをするようになるわけですから。

ちなみに、D教員についてはこんな感じです。

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※p.17

もっぱらA~Cとは別行動で、飲みの席で被害教員から聞き出したプライベートな情報を職員室で言いふらすようなやらかしを何度かしていたらしい。調査報告書を読む限りでは、タガが外れた迷惑スピーカーといった印象を受けました。

調査報告書の中身③校長の問題

ここまでが加害教員についてです。歴代3代の校長がどのように関与したか(しなかったか)も調査報告書では触れられています。

前々校長は管理職として現場に興味を持っておらず、現校長は指導力が低いということが問題視されていますが、特に紙面を多く使われているのは、前々校長時代の教頭でもあった前校長です。

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※p.19より

まあ、駄目ですね。で、この校長は仕事ができるとして評価もされていたそうです。

ハラスメント加害者が仕事ができるが故に、その暴力性が維持され、そしてハラスメントの負の連鎖を生み出すというのは非常によくあることです。本当は、「あの人、優秀なんだけどやり方がな……」というような評価の人は、評価しちゃ駄目なんですけどね。強烈なリーダーシップが求められる状況では、ハラスメントをしがちな人間が重宝されることはしばしばあります。

調査報告書の中身④組織がおかしくなっていた

ここまでで、加害教員自体と校長に問題があったことが分かるかと思いますが、それだけではなく、学校組織自体がおかしなことになっていたことも問題が起きた原因として挙げられています。

まず、難易度が高い小6を受け持つ教員が権力を持つ構図があり、

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※p.24より

他にも、学級崩壊やら専科の先生と担任との確執もあり、

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加えて、「死ね」「カス」というのが職員室で普通に使われたり、教職員のコミュニケーションも「ここに書いてるじゃないですか」「見てないんですか」といった攻撃的なものが当たり前のように行われていたらしい。

その上で、仕事が忙しすぎた。

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こんな環境であれば、AやBまでいかずとも、CやDのレベルでの"かわいがり""悪ふざけ"というのは常態化するのは当然のように私は思いました。

調査報告書の中身⑤再発防止策

再発防止策としては人員の増強や報告体制の確立やハラスメント講習の実施等が触れられています。この小学校は今でも普通に運営されていますから、現在進行形で対応されている方々を思うとご苦労が容易に想像できます。お疲れ様です。

私としては、なぜ犯罪被害者が増えるかという背景として紹介されていたものが示唆深いなと思いました。

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※p.33より

今回の被害教員もそうですけど、被害者というのは本当に声を上げにくいんですよね。加害者による報復行為が怖いのと、感覚が麻痺して自分こそ悪いと思っていたりしたり。被害者の声をいかに早期に汲み上げるかというのは、どんなハラスメントであっても重要なポイントです。DV被害者も同様。

調査報告書の中身⑥10ページに渡る全125項目のハラスメント

ここまでが調査報告書の本体なんですが、全部で45ページある報告書の最後の10ページは全125項目のハラスメントの内容が列挙されています。最初の1ページだけ紹介しますが、下劣で低俗で見るに堪えないものばかりです。注意してください。

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これがこのあと125項目続きます。何ですかね、輪ゴム飛ばしとか。小学生ですかね。このハラスメントには男性加害教員による女性被害教員へのセクハラもあります。どれか一つあっても普通はかなり問題視されるものが125もある。 

この別紙を読めば、ネットで主犯格とされた40代女性のD教員が相対的に可愛く見えるはずです。可愛く見えたところでこのD教員がやっていることも相当なんですが。

締め

ということで、神戸市須磨区の小学校での職員間ハラスメントに関する調査報告書でした。

文中に何度か書きましたが、極悪な教員自体にも大きな問題はあるにせよ、何というか環境のおかしさがここまで放置され続けていたことが驚きでした。優しかった先輩教員が加害者になっちゃうというのは、環境によって良い人間も悪くなるということで。当たり前といえば当たり前なんだけど。

「死ね」「カス」とか職員室で言い合っていたなんて、なにか変だなって誰かが気付いてもおかしくないですよね。他にもたくさんの問題があったわけだし。被害教員が自死を意識して告発してからようやく問題視されるというのは、日本の隠蔽体質というか事なかれ主義の最たるものだと思いました。たぶん、今でもどこかで同じような被害者はいるはず。

今回の事件に憤り、同じ事態を起こしたくないと思う人がいるとすれば、誰かの心の余裕がなさそうな状況を見たら、手助けしたり、問題が抱え込まれないように明らかにしたり、自分の身の回りでできることをしていくのが大切なんだろうと、私なんかは思いました。