斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

スルガ銀行とサブプライムローンと、麻の木の忍者修行と子どもの抱っこ

先週の土日は、金曜日に公表されたスルガ銀行の不正に関する第三者委員会の調査報告書を読むのにあてた人も多いのではないでしょうか。特に、銀行と不動産会社の関係者なら。

スルガ銀行 第三者委員会の調査報告書の受領と今後の当社の対応について

全文は300ページ以上の大作で、数年以上に渡って、数百人の同行行員が関わっていたという凄まじい状況が微に入り細に入り報告されています。

不正そのものも問題だけれど、なぜ監督官庁である金融庁が気付けなかったのか、サービス残業も蔓延していたのに労基署にはアラートが出ていなかったのか、東芝の件で苦渋を舐めた新日本監査法人がスルガ銀行の監査法人だったのによく監査証明書を出せていたものだとか、外野が誰も異常事態を認識していなかったことも怖いなと思いました。

今回の件が表沙汰になったのは、スルガ銀行が片棒を担いでいた、女性向けシェアハウス事業者のスマートデイズがいよいよ倒れるという状況になってからのことですよね。確か、昨年末か今年の年明けぐらいのことだと思います。

不正自体はスマートデイズの資金繰りがダメになる、もっと前から行われていて、スルガ銀行の行員に至っては「死ね」とか「飛び降りろ」とか時には壁ドンをされて上司に脅されていたにも関わらず、それが表沙汰になっていなかったわけです。偽装が行われていない案件のほうが少なかったぐらいなのに。

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※調査報告書全文のp.100から

スマートデイズみたいに需要がないのに賃料保証してアパートだとかを作らせるのって、ここ数年流行ってましたよね。地方に行けば、ガラガラの真新しいアパートがたくさんある。 

※昨年2月にはテレビCMも流されてた。ベッキーさんの復帰後初CMだったらしい

そこには、スルガ銀行の代わりに別の地銀が、そしてスマートデイズの代わりに別の建設会社や不動産会社が絡んでいるわけで。どこの事業者も、スマートデイズとスルガ銀行のように事業計画をいじくって、借り手を騙すような手口でやっているというわけではないでしょうが、同じような不正はあってもおかしくない印象です。

リーマンショックを引き起こしたアメリカのサブプライムローンでは、本来住宅購入資金を借りることが困難な貧困層に対しても、証券化スキームが使われて融資が行われていました。今回のスルガ銀行による不正は、本来であればマンションやアパートの投資をできる信用力がない人たちに対して融資を行っていたという点は近いところがあります。

スルガ銀行は地銀の中でも突出して収益力が高かったため、他の地銀もバランスシートが同程度には傷んでいるということはないにせよ、今回のことを契機に芋づる式に他行も調査が行われることを望みます。でないと、貸出先がなく、お金がジャブジャブ余っている日本で同じことが行われ続けて、規模が大きくなれば、リーマンショックの頃のサブプライムローンのように、将来的にもっと深刻な事態に発展する可能性はある。

話は全然変わりますが、私は子どもの頃から忍者修行が好きでした。特に、『カムイ外伝』か何かで初めて見た、麻?を植えて、その上を毎日ジャンプしていると、麻の成長に合わせて徐々にジャンプ力が上がり、最終的には驚異的な跳躍力が手に入るという、実に科学的な方法には惚れ込みました。子どもを持ったら、庭に木を植えて、ジャンプさせようと思ったぐらいです。

実際に、子どもが生まれる度に庭に木を植えました。姑には記念樹と言って植える許可を得ましたが、記念樹のつもりはまったくありません。修行目的です。でも、日々の育児にかまけていて、結局、子どもに忍者修行のように木を跳躍させることはすっかり忘れていました。1mを遥かに超える木を今更ジャンプしろといってもさすがに無理でしょう。

一方で、親の私は日々重くなる子どもを抱っこし続けてきました。産まれた頃は3kgでも、小学生に入る頃には20kgを超えます。10kgの米袋を2つ担ぐのは簡単なことではないですが、3kgぐらいからはじめて毎日持ち上げ続けていたら、麻のジャンプ修行のように理論的には子どもが何十kgになっても抱っこし続けられるはずです。

しかし、もはや赤子ではない、米袋2つ以上の重さである我が子を私が長時間抱っこし続けられるかと言えば至難の技です。結局のところ、忍者修行も適正がある人だけができるものであり、私にはその適性がなかったということなんだと思います。私の子どもに毎日麻をジャンプさせ続けていたとしても、恐らくは適正の問題から難しかったはず。

スルガ銀行でのアパートローンの不正融資やサブプライムローンでも同じことで、適正な信用力がない人に無理に貸付けしても上手くいくわけがなく。状況に応じて変わるにせよ、人にはそれぞれ適正がありますから、無理なハードルを設定するものではありません。

お後がよろしいようで。