斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

学校教諭の下着泥棒事件、守山市教育委員会の調査報告書「加害者が分かっても被害者は被害届を出そうとしなかった」「被害者ファーストで学校の対応は変わっていた」と自己保身

こんなニュースを読みました。

男性教諭が同僚女性の下着盗む、市教委と校長「被害届出さないで」 抗議受け謝罪 | 京都新聞

市教委などによると、盗難は昨年6月16日に発生し、8日後に男性教諭が盗んだことが判明した。女性は被害届を出そうとしたが、校長から「児童や同僚への影響を考えて」と暗に警察へ届けないよう求められた。学校現場に警察が入ることなどによる混乱を懸念し、市教委との協議の上で校長が伝えたという。女性は納得できず、約7カ月後に被害届を提出し、男性教諭は窃盗容疑で書類送検されている。

絶句しますね。

下着を盗まれた被害者女性に対し、校長が市の教育委員会と協議した上で、「児童や同僚への影響を考えて」と伝えるなんて。

あまりにふざけた話なので、もう少し詳しい情報はないかと検索したら、守山市教育委員会のWebページに調査報告書が上がっていました。

守山小学校教諭による不祥事の守山市教育委員会および学校の対応に係る検証結果および再発防止について - 滋賀県守山市役所

「自ら調査をして、調査報告書もアップロードしているなんて、まともだな」と思って読み進めてみたら、どんどん気持ちが悪くなっていきました。一応、調査報告書では再発防止策をまとめていますが、こんな調査報告書を臆面なく出せる教育委員会が再発を防止できるとはとてもじゃないですが、思えませんでした。

なぜなら、この調査報告書自体が、被害者自身に落ち度があったような記載になっているからです。信じられないと思いますが、私もこんな調査報告書を読んだのは初めてです。

守山市教育委員会「被害者が被害届の提出を迷ったから、報告も公表もしなかった」

調査報告書に入る前に、実は、この件は6月21日付けの京都新聞で報道されています。

教諭の下着泥棒、県教委に半年報告せず 市教委「被害者保護の観点から遅れた」|社会|地域のニュース|京都新聞

同小学校は事案を把握した翌日に男性教諭を自宅待機としていた。守山市教委は「被害者が被害届を出すか迷っており、被害者保護の観点から県への報告も含めて公表を控えるべきと考えた。報告が遅れ、申し訳なかった」としている。

市の教育委員会が県の教育委員会に報告をしなかったのは、被害者が被害届を出さなかったからというものです。

この報道を見て、被害者が「(被害届を出さなかったのではなく)被害届の提出は止められた」ということを県の教育委員会に申し出たことで、冒頭の報道に続きます。

※調査報告書p.2。赤線は筆者

で、実際のところ、被害届の提出を校長と守山市教育委員会が止めたかというと、

※調査報告書p.2。赤線は筆者

ご覧のように、直球で被害届の提出を止めています。

こんなことを言っておきながら、「被害者が被害届を出すか迷っていた」って臆面なく言える守山市の教育委員会はサイコパスだと私は思いました。自分たちが迷わせるようなことを言っておきながら、「被害者が迷っていたからだ」って凄いですよね。

ここまででも相当ヤバいんですが、調査報告書でも「自分たちは悪くなかった」という、暗に被害者に問題があったと臭わせたい記述がたくさんあります。

詳しくは読んでもらうといいんですが、特に分かりやすいところを紹介していきます。

守山市教育委員会「加害者が分かっても、被害者から被害届を提出したいという申し出はなかった」

一つ目は、この記述。

※調査報告書p.3。赤線は筆者

まず見出しで、「加害者が窃盗を自ら申し出」と、自らの部分をわざわざ書いているのはよく分かんないんですが(加害者が自白したから罪が軽いって言いたいのかな? この調査報告書で、この記載必要??)、「加害者が分かっても、被害者から被害届を提出したいという申し出はなかった」と書いています。

事実としては確かにそうなんでしょうけど、加害者が自白した2日前に、校長が教育委員会とも相談して、「被害届を出すと学校に影響がある」って被害者に伝えてるわけですよね。しかも、教育委員会と学校は、「被害者は加害者の担任児童への影響を心配して、被害届を提出しないことを納得している」って認識を持っていたわけで。

こんな状況だったら、加害者が分かっても被害者が被害届を提出したいって言えるわけないじゃないですか。なのに、この調査報告書を素直に読むと、加害者は自分から加害行為を自白したのに、被害者が被害届を出そうとしなかったから、学校と教育委員会側は対処をしなかったと読めてしまう。

めちゃくちゃ、サイコパス味があります。ヤバい。

ちなみに、最後の部分の、「加害者が守られ」のところは後で同じ内容が出てくるので覚えておいてください。

守山市教育委員会「被害者に声かけをしたが、被害者に現状を変えようとする動きはなかった」

二つ目は次の記述。

※調査報告書p.3。赤線は筆者

これ、凄くないですか。

「被害届を出すような動きをしなかったこと」=「被害者に現状を変えようとする動きはなかったこと」としています。わざわざ、調査報告書で、こう言い換える必要は何があるんですかね。

事実としては被害届を出すか出さなかっただけじゃないですか。それを「被害者に現状を変えようとする動きはなかった」って書いたら、まるで、被害者自身が現状維持を望んでいたと受け取れてしまいます。

というか、このときに学校は被害者になんて声かけをしたんですかね。「影響は気にしないでいいから、被害届を出すべきではないか」と声かけしたんでしょうか。それとも、「被害届は出してほしくないけど、被害は辛かったね」と声かけしたんでしょうか。

どのような声かけをしたか次第で、被害者がどう対処するかは違うはずで、この点を明らかにしないで、「被害者に現状を変えようとする動きはなく」って書くのは、調査報告書としては、相当ヤバいと思います。

全然調査してないじゃん!

守山市教育委員会「学校は被害者ファーストの対応に変わっていた」

三つ目。

※調査報告書p.4。赤線は筆者

ここも酷い。

教育委員会が学校に対し被害者ファーストで考えるように指示していたということですけど、この指示で学校は何をしたんですかね。しかも、続く文章の「対応の変わった学校には伝えてもわかってもらえない」というのに、話が繋がりません。

そのまま読むと、教育委員会は学校にもしっかり指示を出したし、学校は対応を変えたということで、教育委員会も学校も対処をしたということになります。ただ、具体的な内容は何も書かれていないから、本当に被害者ファーストで動いたかは分からない。

ここで、「今からでも遅くないから被害届を出した方がいい」って学校が被害者に提案しているぐらいなら、まだ被害者ファーストで考えているように見えますが、そういうことしたんですかね。

全然調査してないじゃん!(二回目)

結局、加害者が懲戒免職処分になったのは事件から一年後

で、答え合わせなんですが、教育委員会も学校も、事件が起きて以降で、被害者ファーストでなかったことが、調査報告書の次の記述から分かります。

※調査報告書p.4。赤線は筆者

弁護士に相談したことで、「被害届を出す判断は本人で、今からでも被害届を出せると初めて知った」とあります。ということは、つまり、学校や教育委員会は、後からでも被害届を出せると伝えていなかったということになります。

しかも、「事案について児童や同僚に話せない」の部分から、学校側は学校内で事件のことを説明していなかったことも推測できます。被害者に単に声かけだけして、周りには何も伝えないのに、被害者ファーストってちゃんちゃらおかしいですよね。

さらには、「加害者はしっかりと罰を受けるべき」というところ。

上のほうで抜粋したように、昨年6月24日に加害者が自白したタイミングで、被害者としては「加害者が守られ」という認識をしているわけですが、それ以降で、罰らしい罰を加害者が受けたかが、この調査報告書ではほとんど書かれていません。

京都新聞の報道によれば、自白した翌日に自宅待機にしているんですけど、加害者が懲戒免職という処分を受けたのは今年の6月20日です。事件が起きてから1年経過してから。

もしかして、自宅待機後に同じ職場で働き続けてたりしてないですかね……? だとしたら、ホラーなんですが、そのぐらいのことは調査して書いてあってしかるべしだと思います。

締め

最後の方で、守山市教育委員会と学校は、自己評価を書いています。

※調査報告書p.7。赤線は筆者

このような対応になった原因を「被害届を出されたら学校が混乱し、児童に影響を与えると考えたから」と分析しています。

私は違う評価をしていて、このような対応になった原因は「被害者に被害届を出すのを躊躇わせ、あまつさえ、被害者理由で公表が遅れたと言い訳する、自己保身体質があるから」と分析しました。調査報告書でさえ、一見すると被害者にも問題があり、自分たちもやることはやったような表現にしているぐらいですから。

そもそも児童への影響を本当に真剣に考えていたなら、教諭が下着泥棒をしていた事実を隠蔽するような体質の人間たち(自分たち)が教育に携わること自体が間違っていると分かるはずです。

ちなみに、守山市の教育委員会の報告書関係では、2022年11月にこんなニュースもありました。

中2自殺両親「絶望的な気持ちに」滋賀・守山市を提訴 調査報告書で養育姿勢否定|社会|地域のニュース|京都新聞

19年6月の非公開の報告書には、自殺原因を断定できないと結論付ける一方、「多忙な両親に代わり、祖父母が養育者として機能したと推測されるが、その結果、ネグレクト状態に陥ることを回避できた」など、両親による養育が不十分と読み取れる表現があったという。両親は報告書を読んで「絶望的な気持ちに追い込まれた」としている。19年6月の非公開の報告書には、自殺原因を断定できないと結論付ける一方、「多忙な両親に代わり、祖父母が養育者として機能したと推測されるが、その結果、ネグレクト状態に陥ることを回避できた」など、両親による養育が不十分と読み取れる表現があったという。両親は報告書を読んで「絶望的な気持ちに追い込まれた」としている。

(中略)

市教育委員会は取材に「訴状が届いていないのでコメントできない」としている。

この調査報告書は非公開で読めませんが、さすがに8か月経ってますから、訴状はもう手元に届いているはずです。今からでも遅くないので、守山市教育委員会はこの件についてコメントしたほうがいいと思います。

今回の件がきっかけで、自分たちに隠蔽体質があることが分かって再発防止策を考えたのだから、同じような過去のやらかし(可能性)も、県の教育委員会と速やかに連携し、オープンに議論・判断してこそ、体質が変わるきっかけになるはずです。

今日のところは以上です。以下、発言小町っぽい締めの一言が読みたい人だけどうぞ。

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