斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

入社3ヶ月の新人を、一人で、立入禁止の場所に送り込み、取材方法も教えず、バレたら身分をはぐらかすよう指導してたって、どんな極悪企業

なぜかGoogleの検索エンジンに引っかからないように設定されている、北海道新聞の社内調査報告書を読みました。

旭医大取材の本紙記者逮捕 社内調査報告:北海道新聞 どうしん電子版

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※noindexを設定するとGoogleは検索結果にそのページを表示しない

私は調査報告書には目がない一方で、関電の第三者委員会の調査報告書(2020年3月)東芝の調査報告書(2021年6月)も、まともにこのブログで紹介しきれていなかったので、北海道新聞の調査報告書も積ん読しようかと思ったのですが、

会員登録しないと調査報告書が読めず、また、検索エンジンにも引っかからないようになっていると知り、これはきっとGoogleドライブ上で公開され、ダウンロードも印刷も禁止になっていた聖マリアンナ医科大学の調査報告書以上に他人に見てほしくない調査報告書なのだと俄然好奇心が湧き、読むことにしました。

読んだ感想としては、調査主体が誰か分からず、社内だけで完結している調査なので主観と客観がごっちゃで、再発防止策も具体的に触れられていないし、最後に今後も事件にひるむことはないと書いちゃっているので、調査報告書としては程度の低いものだと思いました。調査報告書というより弁明書です。記事を書くプロである新聞社が書いたものとはとても思えないクオリティ。

クオリティの低い調査報告書であることは置いておいて、私が読んでいて気になったのは逮捕されたとされる入社3ヶ月の新人記者への会社の指導方法です。まともな指導がされてきていないというのが調査報告書を読んでいるだけでも推測できました。

新人社員の所在を把握していない報道部

まず、逮捕された記者は、会社から現場にいることが認識されていませんでした。以下、調査報告書からの引用です。

旭医大は6月22日午後3時から、吉田晃敏学長の解任問題を議論する学長選考会議を校内で開きました。

節目の会議だったため、北海道新聞の4人を含む報道各社の記者が、会議を終えた選考委員に取材するため大学の敷地内で待機していました。

午後3時50分ごろ、旭医大は報道各社にファクスで、会議終了後の午後6時に同大中央玄関前で記者団の取材に応じることを通知。文書には新型コロナウイルス感染防止のため、構内への立ち入りを禁止していることも記載していました。

大学から通知を受け取った報道部では、現場取材の責任者(キャップ)ら3人の記者に通知をメールしましたが、現場に入社1年目の記者もいることを把握しておらず、この記者には送りませんでした。

※太字は筆者

入社して3ヶ月程度の新人社員がどこで働いているかを把握していないというのは、かなり杜撰じゃないでしょうか。スケジューラーに入れたり、同行者の確認とか普通はしませんか?

新人を単独で立入禁止の場所に取材方法を教えずバレたら身分をはぐらかすよう指導

極めつけは、その新人社員への取材のさせ方です。こちらも調査報告書からの引用です。

新人記者を単独で校舎内に立ち入って取材させたことにも問題がありました。この記者が旭医大問題を取材するのは22日が初めてで、取材経験の浅い記者に校舎内に入るよう指示した理由について、キャップは「経験を積ませたかった」としています。

的確な指示がなかったため、記者は一部の先輩記者から聞いた体験談をもとに、自分の判断で会議内容をスマートフォンで無断録音していました。北海道新聞は取材のルールを記した「記者の指針」で、記者の倫理上、無断録音は原則しないと定めていますが、指導が徹底されていませんでした。

職員に見つかった際も、すぐに北海道新聞記者と名乗り、取材目的であると告げるべきでしたが、動揺していたこともあって、できませんでした。キャップや別の記者から、校舎内で身分を聞かれても、はぐらかすように言われていたことも影響しました。

※太字は筆者

構内への立入禁止のメールを受けていない新人社員に、「経験を積ませたかった」という理由で単独で校舎に立ち入らせ、指示がなかったから取材方法として禁止している無断録音に至り、あろうことかバレたら身分をはぐらかすように指導していたというわけです。

こんな企業ってありますかね。指導不足というより、もはや新人いじめ、ハラスメントじゃないでしょうか。

新人に度胸試しで一人で名刺配りをさせる地雷企業がありますが、さすがにそんな企業でも立入禁止の場所に新人を一人で送り込んで、何をどうしたらいいかを教えず、また身分を隠すようになんて言いません。

こんなやり方で積んだ経験が長く生きるはずがないわけで、会社として人材を長期育成する気が甚だしく欠けていると思いました。そう思って、社員のレビューを見たら、やはり人材の長期育成は2点(5点満点)と低評価でした。

想定される再発防止策は?

こういう状況だとすると、北海道新聞が一切触れていない再発防止策としては次の内容が考えられます。

  1. 社員の所在把握のためスケジューラーへの所在入力の徹底
  2. 従業員への「記者の倫理」教育の再指導。特に年次が上の社員を中心に
  3. 経験の浅い社員にはワンオペさせず、「記者の倫理」の把握状況を確認の上、適宜単独取材の時期を検討
  4. 社内でのハラスメント通報が適切に運用されているかの確認

私はメディア業界には詳しくないので素人が思いついたものですが、特に2番目と4番目は一般企業としても重要だと思います。事務次官がセクハラをしていた財務省でも幹部に対してセクハラ研修をしていました。

財務省でセクハラ研修 講師「世の中の常識とズレてる」:朝日新聞デジタル

締め

繰り返しですが、私はメディア業界に所属しているわけではないので、論点になっていた「この程度で逮捕するのは権力によるメディアの弾圧だ」という点もあまり答えを持ちません。

気になっているのは、この新人に対するハラスメントとも考えられる指導方針です。

あんまり言いたくないけど、大学生と間違えられる年齢の記者(22歳)に、あえて何も伝えないで送り込んで、記者が若い女性だから無茶しても有耶無耶にできるなんて現場の経験のある記者たちは考えていたんじゃないかと穿って見てしまいます。

報道機関としての再発防止策は置いておいて、これをきっかけに社員の働き方改善、特に新人指導の方法は見直したほうがいいんじゃないかと思いました。

若者であること、女性であることは搾取していい免罪符では決してありません。