こんなTweetが話題になっていました。
コミケ前に声を大にして言いたいんだけど、PayPayに「熱中症見舞金」っていう保険があるから今年は本当に入った方がいいとおもう……。
— ごままま (@gomamama0522) 2024年7月8日
月額がちょっとお菓子買うの我慢すればいいくらいの金額なのと、点滴でも治療保険金がでるそうなので……!
我が家は全員加入させました( ˇωˇ )
個人がどうしようが他人が止めるものでもありませんが、私が家族からこの保険の加入を提案されたら、確実に止めるはずです。この記事ではその理由を簡単に紹介します。
保険は高額負担&レアケース用に掛ける
まずは保険の基本から。保険を掛けるのは大きく次の二つの条件が揃った時です。
- その出来事が、なかなか起きない出来事であること
- その出来事が仮に起きた時、貯金では賄えない高額の負担が発生する出来事であること
そもそも、よく起きる出来事については保険が成立しません。成立したとしても、保険金を支払う確率が高いため、保険料が高くなる(保険の利回りが良くない)。なかなか起きない出来事は、保険料を支払うことも少なくなりますから、保険料は安くなります。
そして、その出来事が起きたとしても必要な金銭的支出が大きくないのであれば保険に加入する必要はありません。
全然ピンと来ない例として、一年に一回義実家に帰省する際に事前のお土産を買うのを忘れた時のことを想像してみてください。お土産ぐらい忘れても大した影響はないし、いざとなればコンビニで割高なお土産を買えばいいだけです。義実家帰省お土産忘却保険なんてものがあったとして、加入する人はいないでしょう。
もちろん、貯金で賄えるかどうかというのは個々人で違いがあるにせよ、数万円~数十万円程度の損失に対しては、保険加入しようとするよりも、まずはその金額までの貯金を作る方法を考えるのが先です。
熱中症はレアケースかもしれないが、治療費は高額ではない
この原則で、熱中症の保険に当てはめてみます。
今年の7/1~7/7の熱中症の救急搬送状況を見ると、元のTweetのような成人によるコミケでの熱中症というのは、レアケースであることが分かります。何しろ、熱中症での救急搬送で限定しても、高齢者以外は4割で、中等症以上は3割で、屋外は1割程度ですから。熱中症のメインターゲット(?)は屋内高齢者。
では、熱中症による治療費が多額かというと、そんなことはありません。
冒頭で紹介されたような熱中症での点滴治療は、保険適用されて3割負担だと、せいぜい3000円~6000円程度です。入院した場合でも一日2.3万円程度で二日で4.6万円程度です。「長期入院したらどうなるんだ!?」と思うかもですが、高額医療費制度が適用されますから、例えば年収156万円~370万円なら自己負担額は5.7万円で済みます。
日本の国民皆保険制度は優秀で、いざというときは健康保険で多くの金額がカバーされています。熱中症に限定して、少額の自己負担額をどうにかするために保険に加入する必要はありません。
どうしても保険で安心を買いたいなら県民共済がコスパが良い
恐らく、PayPayの熱中症保険は保険会社はかなり儲かっているはずです。熱中症での治療自体がレアケースの割に、保険会社の保障額が少なく、保険料は200円/月と高額だからです。確率計算したら正確な数字は分かるでしょうが、私の感覚だと広告宣伝費を考慮しなければ50円/月ぐらいが妥当な保険料だと思います。
「そんなこと言って、何かあった時のために保険に入っておきたい」と思うなら、まずは今自分が加入している民間の医療保険を確認しましょう。大抵の医療保険で、点滴はまだしも、入院は保障対象です。旅行中なら旅行保険が使えます。業務中の熱中症なら労災保険が適用。
もし民間の医療保険に未加入で、何か保険に入っておきたいなら、県民共済がお勧めです。月の掛金は熱中症保険の10倍の2000円になってしまいますが、熱中症に限定せず、入院したら1日1万円の保障があります。手術や先進医療も対象です。
さらにお得なことに、保険料の余った部分が年によるものの3割ぐらい戻ってくるので、実質1400円/月ぐらいになります。熱中症保険の7倍程度で、このカバー範囲は超お得です。
※画像は生命共済 入院保障型:特長|全国共済から
締め
PayPayの熱中症保険は、保険料が少額であり、加入のしやすさから人気の保険商品のようです。ただ、まとめた通り、保障は大した金額でない割に保険料は割高ですから、オトクな保険ではありません。
「ペットボトル一本ぐらいだから、そんな真面目に考えなくても良いのでは?」という考えはあるとは思いますが、こう言っては何ですが、この保険に加入するような金融リテラシーだと、恐らく他のリスクに対しても、「いざというとき」を考えて何らかの金銭的手当をしている可能性があります。リスク回避のためにお金を使い過ぎているんじゃないかって。
さらには、この保険に入るようなリスク回避型の用意周到な人は、熱中症に十分な対策をしようとするはず。ちょっと体調が悪いと思ったときに、自分で冷暗所で休める判断ができる人には、この保険は不要です。
加入しておくと良い人がいるとすれば、真夏に自宅で冷房を付けるのを頑なに拒む高齢者ぐらいでしょうか。高齢者は所得と年齢で自己負担額が少なくなるにせよ、症状が重症化しやすい傾向がありますしね。