昨日、政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議による「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(2020 年 3 月 19 日)が公表されていましたので、読んでみました。
ちなみに、記者会見の動画もフルで公開されています。
新型コロナ対策の効果は? 専門家会議が見解発表 脇田座長らが会見(2020年3月19日)
専門家会議のメンバーは以下の方々です。
座 長 脇田 隆字 国立感染症研究所所長
副座長 尾身 茂 独立行政法人地域医療機能推進機構理事長
構成員 岡部 信彦 川崎市健康安全研究所所長
押谷 仁 東北大学大学院医学系研究科微生物分野教授
釜萢 敏 公益社団法人日本医師会常任理事
河岡 義裕 東京大学医科学研究所感染症国際研究センター長
川名 明彦 防衛医科大学内科学講座(感染症・呼吸器)教授
鈴木 基 国立感染症研究所感染症疫学センター長
舘田 一博 東邦大学微生物・感染症学講座教授
中山 ひとみ 霞ヶ関総合法律事務所弁護士
武藤 香織 東京大学医科学研究所公共政策研究分野教授
吉田 正樹 東京慈恵会医科大学感染症制御科教授
私がこの分析・提言を読んだ感想は、
- 国内外の状況が分かりやすくまとまっている
- 日本国内の対応が上手くいっていることを触れつつも、まだまだまったく余談を許さないこと、課題もあることなどが書かれている
という感じです。一言で言えば、信頼感がありました。次のような課題をちゃんと出しているのがいい。
しかしながら、現在の国及び地方公共団体におけるクラスター対策の実施体制には、そもそもクラスター(患者集団)対策を指揮できる専門家が少ないことや、帰国者接触者相談センターへの対応を含めて保健所における労務負担が過重になっており、クラスター対策に人員を割けないことなど様々な課題が存在しています。
p.2
実行再生産数 (感染症の流行が進行中の集団のある時刻における、1人の感染者が生み出した二次感染者数の平均値)を基準にして、いかに1を下回らせるかという説明とグラフも理解しやすい。
イベントの自粛や休校への評価は次の通り。一定の評価をしている。
扇動的ではなく、抑制的な文章で、私はとても信頼感を持てました。
それで、上の文章でも一部触れられている通り、①換気の悪い密閉空間、②人が密集している、③近距離での会話や発生が行われる、という3つの条件をいかに避けるべきかというのが、分析・提言では何度も登場しています。
この3つの条件を国民・事業者が避けなければ、オーバーシュート(爆発的患者急増)は起こりかねなく、イタリアやフランスのようなロックダウン(都市の閉鎖、外出禁止、店舗閉鎖など)に近いことを日本でも行わなければならないとも書いています。
かなり踏み込んだ内容だと思うのだけれど、それだけ専門家に危機意識があるということでしょう。
私は、オリンピックを長野オリンピック以来まともに見たこともなく、サッカーやラグビーのワールドカップもまったくチェックしていない、日本人という一括りで何かに注目するのが得意ではない人間ですが、この提言を読んで、一人の日本人として、「3つの条件が同時に重なる場」は避けようと思いました。