斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

『響け! ユーフォニアム3』がとても良かった。良すぎて1期・2期・映画を一気に見直してしまった

京都アニメーションによる、今年4月からの春アニメ『響け! ユーフォニアム3』を見終わりました。

正確には先週時点で見終わっていたのですが、あまりに良すぎて、シーズン1全13話、シーズン2全13話、劇場版の『リズと青い鳥』『誓いのフィナーレ』『アンサンブルコンテスト』を見てから、もう一度、シーズン3全13話を見直してしまいました。

あらたなユーフォニアム

※全てリンク先のアマプラで見ました

この記事では、ネタバレ全開で『響け! ユーフォニアム3』のレビューをします。お好きな人だけどうぞ。

 

私が『響け!ユーフォニアム』を見始めたのはアニメのシーズン1の2015年からですから、もう9年になります。

高校の吹奏楽部を舞台にした同名の小説のアニメ化で、音楽とは無縁な人生を送ってきた私からすると音楽に関する表現はよく分からないところが多かったものの、一人一人のキャラクターの深堀りや、ちょっとした表情の変化が丁寧で、情報量が多い青春物として大好きなアニメの一つでした。

シーズン2は2016年で、こちらは高校生の親との確執がかなり多く描かれており、親の都合でコンクールを辞退しようとする3年生の田中あすかに対し、主人公の黄前久美子が長台詞で思いのたけを語るシーンは、何度も見直して、その度に泣くぐらい大好きです。

その後、スピンオフ映画の『リズと青い鳥』が2018年に、新作映画の『誓いのフィナーレ』が2019年4月に公開され、6月には主人公が最高学年になった3年生編の制作決定が公表されていましたから、1年程度待てばシーズン3を見ることができると考えていました。

www.youtube.com

※サムネイル画像はキャラクターデザインの池田晶子さん

しかし、結果的にシーズン3が公開されたのは今年の春となりました。制作にここまで時間がかかった背景は、あの件が影響していると思いますが、詳しくは触れません。

久々に見たユーフォニアムは、長いこと待ったせいで上りに上がった私の期待値を優に超えて行きました。本当に素晴らしかった。

主要登場人物は10名程度であるものの、吹奏楽部の部員たちは約100名で、期間は4月の新人勧誘から京都府大会、関西大会、全国大会と約半年の時間を、20分程度のアニメの13話で描き切るわけですから、元の小説から端折った部分は多くあったでしょうが、私は違和感なく楽しむことが出来ました。

主人公の黄前久美子が部長として奔走し、加えて進路をどうするか迷うことから、部活の生徒との関係だけでなく、高校を卒業した先輩や社会人の姉や学校の先生とのやり取りがかなり多くあったのも良かった。

吹奏楽部の顧問の滝先生の、「自分が大人か子どもかは周りの環境によって決まる」「(理想の人は)正しい人でしょうか。本当の意味での正しさは皆に平等ですから」といった言葉は、「そりゃ、この言葉を聞けば久美子はこの進路を選ぼうとするよな」と思いつつも、滝先生の声優さんの2022年~2023年の不祥事がどうも思い浮かんでしまい、素直に受け取ることができなかったのは少し(いや、大分)残念でした。まあ、滝先生の指導力の物足りなさも散見されたので、イーブンと言っていいか……?

このシーズン3ですが、最後の最後で、実は原作と大きく異なる展開があったというのがネットで話題になりました。主人公が重要なオーディションで、ぽっと出の3年生の転校生に負けてしまうのです。

『響け!ユーフォニアム3』石原立也監督が最後の演奏シーンに込めた想いとは【連載07】 | アニメイトタイムズ

このオーディションはただのオーディションではなく、シーズン1からずっとお互いを高め合ってきたトランペットの高坂麗奈と、最後に一緒にソリストとして大舞台で演奏をする機会を得るためのものでした。それが、作中のキャラクターにとっても、視聴者である私たちにとっても特に思い入れのない、転校生にその座を奪われてしまうわけですから、かなり衝撃的な展開です。

ネットでは賛否両論があり、すっきり気持ちよく終われず納得できないという声も多くあったようですが、私はこの展開はすっと入ってきました。

進路に悩む主人公の黄前久美子と、プロを目指す高坂麗奈が同じレベルで音楽を続けていなくても、これまでのかけがえのない人間関係を続けていけることを確認できましたし、個人的には何でもかんでも結果が全てではないと考えているところも大きいです。

ジャンルは何でもよく、人生で何かに集中した経験(プロセス)は、その後の人生で大きな財産になります。集中の仕方を学ぶこともそうですし、自分のキャパシティの理解や、何よりやり切ったことでの自信に繋がります。

※いわゆるGRIT的なもの

シーズン3での主人公の紆余曲折、試行錯誤と言ってもよい努力は、まさにそのような類のものだと思いました。

創作に何を求めるかは人それぞれとして、私は、『響け! ユーフォニアム』では、当たり前のように起きる人間関係の衝突や、とげとげしい会話や、モブキャラ一人一人の表情の変化や成長を楽しみにしていましたから、主人公が必ずしも特別に選ばれないという展開と、その後の登場人物の会話は、すべて私が望むものでしたし、作品が私の期待を上回った要因でもありました。

以上、『響け! ユーフォニアム3』の感想です。

最後に、この素晴らしい作品を、大変な困難もあった中で世に公表された京都アニメーションのスタッフと、その家族の皆様には御礼を申し上げたいと思います。本当にありがとうございました。