斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

斗比主閲子がお勧めする「読むと頭が良くなる漫画20作」

『東大生300人が選んだ「読むと頭が良くなる漫画ランキングベスト30」』という、頭の悪そうなテレビの特集があったそうです。

東大生300人が選んだ「読むと頭が良くなる漫画ランキングベスト30」にランクインしなかった『ハイパーインフレーション』がなぜかトレンド入り - Togetter

まずは、頭が良いことの定義と、頭が良くなるプロセスの説明が必要だと思いますが、恐らくは「読むことを通じて勉強に通じる、頭を使う漫画」というのを狙っているんでしょうね。ただ、ラインナップを見る限りは、現役大学生ぐらいの子どもたちが、自分が中高大で読んで面白かった漫画をお勧めしているという印象です。だって、名探偵コナンが一位だし。

私もたしなむ程度ですが、子どもの頃から長くは漫画を読み続けていますので、私の独断と偏見で、「読むと頭が良くなる漫画」 というものを紹介してみます。こういうのはたくさんあったほうが楽しいから、皆さんもぜひ紹介してみてください!

なお、並び順は、ランキングにするのは難しく、日本学術会議の部会「第一部 人文・社会科学」「第二部 生命科学」「第三部 理学・工学」の三つに分類しつつ、なんとなく作中の時代順に並べていきます。まずは一覧。

次に、一作ずつ紹介していきます。

第一部 人文・社会科学系

『ヒストリエ』(既刊11巻)

紀元前4世紀のギリシャを舞台に、アレキサンダー大王の書記官だったエウメネスを主人公にしたもの。当時の地理、歴史、風土はもちろん、アリストテレスの登場で自然科学の始まりを楽しむことができます。

岩明均さんらしい残酷描写が問題なければ。

『テルマエ・ロマエ』(全6巻)

西暦130年代のローマと現代を風呂を介して往復する漫画。阿部寛さんが主演の映画が話題になったので知っている人も多いはず。当時隆盛を誇った古代ローマを理解するだけではなく、現代日本文化(平たい顔族)との比較文化の観点でも面白いです。

『あさきゆめみし』(全13巻)

源氏物語を漫画化したもの。当時の風俗含めて忠実に再現されているようです。高校で古文を勉強し始めた時に、学校の先生からお勧めされた人も多いはず。皆さん、知ってますよね。

『石の花』(全6巻)

第二次世界大戦下のユーゴスラビアのパルチザン闘争を描いた漫画。同じ坂口尚さんの一休宗純を扱った『あっかんべェ一休』も歴史物としてお勧め。

『新九郎、奔る!』(既刊13巻)

足利義政時代から始まる、後の北条早雲を主人公にしたもの。応仁の乱のグダグダっぷりをここまで描いた漫画はなかったと思う。凄く勉強になるんだけど、登場人物が多すぎる……!

『大奥』(全19巻)

「実は徳川三代目以降の将軍は女だった」という歴史IF物。ジェンダー観が揺さぶられる点で社会科学的フィクションとして秀逸だし、歴史物としても徳川将軍の名前とやったことがストーリーで頭に入ってくる。

『MASTERキートン』(全18巻)

この漫画を読んで、考古学に興味を持った人も多いはず。保険の調査員と言いつつ、戦闘と謎解きがある。国際情勢に興味を持ったら、『勇午』『紛争でしたら八田まで』を読みましょう。

『加治隆介の議』(全20巻)

1990年代の日本の政治がカオスで色々と面白かった頃の漫画。政治経済を勉強できる漫画って実は多くないですよね。私は、高校生の頃に選挙の仕組みをこれで勉強しました。

『サトコとナダ』(全4巻)

アメリカを舞台に日本人女性とサウジアラビア人女性の大学生としての交流を描いた漫画。イスラム文化を理解するきっかけになる。

『テロール教授の怪しい授業』(全4巻)

テロリズムを教えてくれる大学の先生の漫画。テロだけじゃなくて、新興宗教も扱うし、大学に受かった子どもにとにもかくにも最初に渡しておくのがお勧めです。

第二部 生命科学

『もやしもん』(全13巻)

農大を舞台にした、菌(というか、お酒)の漫画。菌が可愛くて、頭に入る。同じ、石川雅之さんの『惑わない星』はまだ続いていて、こっちは宇宙科学をテーマにしていて、ちょっと難しい。

『はたらく細胞』(全6巻)

体内の細胞がどのような機能をしているか、擬人化した漫画。小学校低学年の子どもで生物好きなら大抵読んでる。

『銀の匙』(全15巻)

農業高校を舞台にした、農業・畜産漫画。高校受験の失敗や、大学受験の過程を描いたりしているので、勉強自体を扱った漫画としてもいいかも。農業高校に行きたくなる。

『百姓貴族』(既刊7巻)

『銀の匙』と同じ荒川弘さんの作品。こちらはフィクションではなく、リアルな農家の"生態系"を面白おかしく紹介したもの。北海道の食べ物が美味しいのがよく分かる。

『天地創造デザイン部』(既刊8巻)

神の依頼を受けて、新たな生物をデザインするという漫画。色々無茶な機能を付けると生物として成り立たないというのが、そういうもんかと思いつつ、実在する有り得ない生物が同時に紹介されていて、とても楽しい。

第三部 理学・工学

『決してマネしないでください。』(全3巻)

『天地創造デザイン部』の蛇蔵さんの前作。こっちは理系の研究室の科学実験を扱ったもの。過去の偉人の名前を楽しく覚えられるよ!

『宇宙兄弟』(既刊42巻)

みんな知っているだろうから紹介するか悩んだけど、うちの子どもたちは大好きだし、宇宙好きな周りのお子さんも大抵読んでいるので、一応紹介しておきます。宇宙飛行士の選抜試験が特に私は好き。

『プラネテス』(全4巻)

宇宙兄弟の前に話題になった宇宙漫画と言えば、『プラネテス』だと思う。JAXAの元職員の人が批判していたりしましたが、デブリの概念を一般人に浸透させた、ちょっと近未来のお話。同じ幸村誠さんの『ヴィンランド・サガ』もお勧め。

『Dr.STONE』(全26巻)

石化光線で石になり、3700年後の石器時代の文明からスタートして、最後は宇宙までいってしまう、科学漫画。……なんて説明しなくても多くの人が知っているでしょうが、この作品が人気になって科学漫画はかなり裾野を広げたと思う。科学監修は、あの、くられさんです。

『宝石の国』(既刊12巻)

こちらもアニメ化して話題になったから知っている人も多いはず。鉱物が主役の漫画。鉱物と強度を理解するという意味では科学漫画のジャンルだけど、後半になってくると、仏教の世界観が前面に出てくるので、人文・社会科学系でもおかしくないかも。

その他

以上、20作品の紹介でした。

今回紹介した以外でも、読んでいると頭を使う漫画としては『HUNTER×HUNTER』や『DEATH NOTE』が思い浮かんだり、私はまだ読んでいないのだけれど『せいすうたん』はAmazonで試し読みをした限りでは数学を扱っている漫画だったりするし、

あさりよしとおさんの『まんがサイエンス』シリーズ、鈴木みそさんのブルーバックスのシリーズは、ド直球で、勉強になります。

歴史物はもう際限なくありますよね。日本だったらすべての時代がすでに漫画化されています。

色々紹介してきましたが、読んで頭が良くなるかは機序がまったく説明できないけど、どの作品もとても楽しいので、子どもの手の届くか届かないところに置いておくのはお勧めです。ハマるよ!