世の中には手作りのものが苦手な人がいて、特に直接手を触れて作った料理を食べられない人がいます。
分かりやすいのだと、おにぎりですね。コンビニの機械で作ったおにぎりは食べられるけれど、人が直に握ったおにぎりは何か生々しさが感じられて食べられないという人は結構います。『きのう何食べた』の16巻でも弁護士事務所内でおにぎりは手で握るのは衛生的に良くないというエピソードがありました。
前置きが長くなりました。
タイトルの発言は誰がしたかというと、これも同じく漫画で、月間モーニング・ツーで連載されている『ゴールデンゴールド』の第7巻、p146になります。
※男性の発言への大将と女性の呆然としたリアクション
これ、そのまま受け止めれば、人が触ったものを食べたくないという最初に紹介したような人に見えますよね。それだけなら周囲の人々の反応は大げさに見える。しかし、そもそもでいえば、お店は寿司屋で、お店を指定したのはこの男性なんです。
わざわざ寿司屋に女性を連れてきて、女性と大将の前で、「寿司は食べられない」宣言をしたのだから、そりゃ周囲は愕然とします。「ならわざわざ何で寿司屋に連れてきたの……!?」と。
理由はすぐに明かされるものの、この男性の7巻に至るまでの人物描写からすれば、「まあ、言ってもおかしくないな」と思わせるところがあり、私はこのコマを見て思わず爆笑したのでした。
で、ここからは『ゴールデンゴールド』の宣伝なんですが、『ゴールデンゴールド』は本当に良い漫画なんですよ。私の中だと『波よ聞いてくれ』と同じフォルダに入っていて、新刊が出る度に必ず読むようにしています。
作者は堀尾省太さん。前作は、モーニングで連載され、アニメ化もした『刻刻』です。『刻刻』は本当に変で良い漫画なんですよね。新興宗教の教祖が、あるうだつの上がらない家族の持っている特殊な装置と血筋に目をつけて、信者と雇ったチンピラたちと一緒に、時が止まった世界でその家族と、町の中で超能力バトルを繰り広げるというものです。
『刻刻』の良さは主人公たち家族が本当にうだつが上がらない、どこにでもいる、まったくもって魅力を感じない描かれ方をしているところで。キャラを好きになれない作品をなぜわざわざ描くのかと当惑しながら、ワクワクして読んでいました。しかも、舞台が狭い。狭すぎる。8巻使って、物理的に半径1kmぐらいの距離で、半日ぐらいしか時間が進まない。連載は数年使っているわけですから、「私は何で狭い世界の話を数年かけて読み続けているんだろうな」とずーっと考えて読んでいました。
で、その次の作品が『ゴールデンゴールド』なわけです。もう、期待しないわけないじゃないですか。絶対面白いに違いないと思って読んだら、本当に素晴らしい作品だった。
『ゴールデンゴールド』のあらすじをざっくりいうと、瀬戸内海のイケてない島に住む中学生の女の子がたまたま福の神を拾っちゃったせいで、祖母が急に金儲けに目覚めたことを発端に、島全体が急激にバブルの様相となり、欲望の渦の中殺人事件含めたトラブルがエスカレートしていく……というものです。
『ゴールデンゴールド』の何が良いかというと、最重要キャラクターであるとところの福の神(作中ではフクノカミ、フクと呼ばれる)が超絶気持ち悪いんですよ。次の絵は2巻の表紙で、
この地蔵みたいなのがフクノカミです。どうです? 愛せないですよね?? 後ろの女の子(主人公)は可愛いのに! なぜこの造形にしたのか!?
『刻刻』は舞台が狭すぎてわけがわかんなかったんですが、『ゴールデンゴールド』も同様に狭いです。高齢化が進む過疎の島が基本的な舞台だから。ただ、『刻刻』よりかは広いし、登場人物たちが曲者なのは確かだし、超常現象も『刻刻』よりかは理解しやすいです。正当な進化を遂げているのは間違いない。
冒頭で紹介した男性と、そして呆然としていた女性も『ゴールデンゴールド』の主要キャラクターとなります。二人とも非常に良いキャラしてます。
『ゴールデンゴールド』は既刊7巻で、まったくつまらなくならずにずっと話が続いています。私の感覚では万人にお勧めできる作品ではありませんが、ほっこりエピソードが溢れかえっているので、私のブログの読者なら楽しめるはずです。
面白いですよ。
※主人公の女の子は表紙よりもっと可愛いですが、フクノカミは表紙よりもっと気持ち悪いです。