前から書く書く言っていて、書いてなかった、渡辺ペコさんの『1122』(いいふうふ)のレビューをします。
以前ブログでも宣言していたし、世界の姑ことid:kukkyさんにもお願いされていたのに、随分お待たせしました。
それを読んだトピシュがブログネタにするとこまでが様式美や(『1122』のレビュー早よ書けや! / “1122って漫画の1巻にセックスレスになった妻が夫に「小町にかいてやる!」っ..” https://t.co/I2jreJbbkk
— くッきー (@kukkyx) April 10, 2018
どんな話?
ざっくり言えば、
妻・相原一子のセックス拒否が起因となって、セックスをしなくなった相原夫婦が、不倫OKというルールを設定したら、夫の相原二也が、あろうことか、夫に不満を抱え、長男の育児に苦しんでいる、物事を自分の中で溜め込みがちな三月という不倫相手としては地雷持ちまくりの女性と不倫をし始め、
三月からの依存的アプローチに情にほだされた二也が、公認不倫OKするときのルールをばしばし破りまくることに、一子はモヤモヤしっぱなしだけど、でも、元はと言えば自分のセックス拒否がきっかけだからと問題先送りをし、
一方で、三月の夫の志朗は三月が不倫をしていることを何となく察しているが子育てしてくれるママなら何でもOKというスタンスで、三月は三月で、公認不倫だったとは二也に言われてなかったから、「え、本気なのは私だけだったの……?」みたいなモードになるなど、
登場人物のそれぞれが考えが足りない行動をし、思っていることを伝えないで、問題を先送りし続けることで、更に問題が大きくなっていく……
という話です。
以下、人物相関図です。
※名前が一、二、三、四と分かりやすく並んでいる。五がつく登場人物もいる。
楽しみ方は?
色んな楽しみ方があると思います。
例えば、第一話で、お酒の銘柄が『濃家の嫁』(農家の嫁を文字っている)だったり、発言小町や、はてな匿名ダイアリーなんかにちらっと触れるところがあるなど、そういうネットの家庭内トラブルが好きな人向けの要素は、特に1巻では多めになっています。
一子と実母のバトルは大変心温まるところがあり、それが故に、一子は実母からの連絡を二也経由でフィルタリングして受けていたりします。
また、三月への義母のアプローチも大変ほっこりするところがあります。
※画像は1122/渡辺ペコ 第1話 - モーニング・アフタヌーン・イブニング合同Webコミックサイト モアイから
巻が進めば進むほど、主人公たちの、ディスコミュニケーション(というか無しコミュニケーション)によって、問題が悪化していくので、それを楽しむといいかと思います。
何しろ、公認不倫というルールができたこと自体が、もともとは一子が二也のセックスの誘いを、相手の自尊心がズタズタになる形で断ってからというところがスタートですから。要するに、臭いものに蓋をして、問題先送り措置として公認不倫になった。
相原家では公認不倫のルールが何となく設定はされているけれど、二也はかなりナチュラルにルール違反するし、一子は一子でルール変更や修正についてまともな会話はしないで「ルールは守ってね」と言うぐらい。
その上、二也が付き合う相手も良くない。公認不倫にするつもりなら、少なくとも、相手と、相手に配偶者がいるならその配偶者にも、公認不倫であることを伝えるのが最低限のマナーだと私は思いますけど、そんなことは一子も二也もしないから、日々の生活に苦しんでいる三月が物凄く依存する形で二也と不倫をしている。そして、公認不倫であることを当初知らされなかった三月は自分を当て馬だと考える。しかし、三月には二也以外に自分のことを分かってくれる人はいない……。
結局のところ、公認不倫という設定は新しそうで、やってることは普通の不倫なんですよね。一子も自分で公認不倫を言い出しておいて普通にモヤモヤしているし。でも、そのモヤモヤを二也には伝えない。
だから、吉田秋生さんの『海街diary』や海野つなみさんの『逃げるは恥だが役に立つ』のような、多様性のある、しっかり会話をする家族の話というより、『1122』は、昔ながらの、昼ドラ的な、ズブズブの、良くある不倫物という位置づけとして捉えると、期待に添えると思います。
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締め
以上、『1122』のレビューでした。
まとめると、1巻まではこのブログの読者は楽しめると思います。2巻以降は、登場人物の考えが足りず、思っていることを伝えないことで問題が先送りされて、同じ問題を登場人物たち(主に一子)がグダグダ悩むシーンが続き、その演出結果として、問題が悪化する……という感じなので、無為無策が故のトラブルが好きな人はどうぞ、という感じです。