私が信頼している小説の読み手の方が、紹介していたので『屍人荘の殺人』を読んでみました。(以前、この人からはメタミステリを個人的に紹介されたこともある。)
“アレ”であふれる山荘の密室殺人 今村昌弘「屍人荘の殺人」 - あざなえるなわのごとし
読んだ後でgoogleったら、
投票していただいた皆様、SNS等で話題を広めてくださった皆様、ありがとうございます。僕にとっていくつもの好条件が重なった上での結果だと理解しておりますが、これを重荷ではなくエンジンとして背負っていけるよう、頑張ります。これからも応援よろしくお願いします。 https://t.co/pAMYYYueBD
— 今村昌弘@『屍人荘の殺人』発売中 (@Imamura1985) 2017年12月8日
史上初、デビュー作でミステリーランキング三冠を達成したことを知りました。凄い。
この作品自体はある仕掛けというか設定に話題がいっていて、私もそれが好きなのでそれを楽しみにしていたんですが、読み終わって一番頭に残ったのは「加害者にも事情がある(ことがある)」でした。
本作には、母親から愛されなかった経験から女性の愛し方が分からず傷つけてしまう男性が登場します。フィクション作品なのだから、そういう加害者をたまたま著者が配置したということだけなんですけどね。
同じような男性が登場する『先生の白い嘘』も最近読み終わったこともあり、自分の中で「加害者にも事情がある(ことがある)」が繰り返し確認されたということで、頭に残りやすかったのかなと思います。
※最終巻は『屍人荘の殺人』と同じく10月発売。
以前、最近の少年漫画に親が片親の子どもが主人公になることをしばしば見かけることを紹介しましたが、フィクション作品の中で「加害者にも事情がある(ことがある)」という考え方も見かけることが増えたような気がします。
これも以前紹介したように、子どもを持ってからONE PIECEの喫煙描写がやけに目に入るようになったのと同じで、単に、私の観測範囲が変わった(偏るようになった)というのもあるんでしょうけどね。
ONE PIECEのとある喫煙描写とSIDS(乳幼児突然死症候群)【追記あり】 - 斗比主閲子の姑日記
大学受験のときに「読者の数だけ作品の読み方はある」 という現代文の文章を読んで、「そんなことなら国語の問題なんて嘘じゃん」と思いましたが、年を取って色々な経験を経ると、合理的にこうとしか読めないという解釈の話とは別に、その作品から受けるものや得るものというのは人それぞれだというのも、自身の経験から分かってきました。
たぶん20年前に『屍人荘の殺人』を私が読んだとしたら、「加害者にも事情がある(ことがある)」という描写はほとんど頭に残らなかったはずです。フィクション作品も自分を知る鏡ですね。
ということで、作品のレビューはそっちらけで頭に残ったことを書いてみました。面白かったですよ。