斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

n=1で社会を語らない

しばらくブログの更新はお休みししていました。気になったことがあったので簡単に書いておきます。

どうやら集団を対象にした殺人未遂があったようで、そのニュースに対して、「○○という属性の人が窮地に追いやられていたことが原因だ」とか、「攻撃対象が○○という属性だったのはいつものことだ」とか、色んなコメントがSNSで流れていました。

個々人が何を思ってどういうリアクションをするかは個々人の自由ですから、私が何か言うつもりもないですし、何か言ったところで大して効果もありません。

ただ、私個人としては、何度も書いているように、n=1のニュースで社会を語らないように気をつけてはいます。

というのも、自分で言っているうちに、世の中に対して偏ったイメージを持つようになってしまうからです。(逆に、政党・政治家の政策・発言ではn=1でも、過去からの連続性で見るように意識しています。そうでないと見誤る。)

例えば、犯罪の認知件数はここ10数年以上に渡って減少傾向にあり、殺人事件もずっと減少しているのはご理解の通りですが、被害者でみれば男性も女性も等しく減少傾向にあります。

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※グラフは令和二年犯罪白書より

性別で被害者の特徴が出るのは、30歳未満の女性に対する強制性行等と強制わいせつや65歳以上の女性に対する詐欺です。そして、今回報道されたような加害者と被害者の事件が統計上増加傾向にあるとは私には確認できませんでした。

日本は驚くほど犯罪が減少している国なのは間違いありません。にも関わらず、n=1の事件で、加害者属性と被害者属性に着目して、同じような犯罪が多く行われているのではないかと思うと非常に生きにくくなります。

ほとんどの男性は犯罪をしていませんし、ほとんどの女性は犯罪に遭遇していません。妊婦が攻撃されるなんてことはまず起きません。

※とうとう子どもができたゴローさんとパウさん。ゴローさんの「妊婦がこんなに優しくされると思っていなかった」「ネガティブな話題ほど広がりやすい」「不安な気持ちも分かる」というくだりは良かった

当然ながら、どんな事件事故に遭うかは住んでいる地域によっても異なるわけですから、世界のどこかで起きていることが、自分の真隣で起きていることなんてほとんどありません。

そんなレアケースのn=1に脳みそのリソースを費やして恐れるぐらいなら、私は日々の生活での手洗いの励行を忘れないようにしたいと考えています。殺人事件や暴力の被害者になるより、病気に感染するほうが私によってはよほど可能性があるからです。

個人的に、日本の犯罪で着目している点は再犯率の高止まりです。

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初犯が減少しすぎて、再犯も多少は減っているものの減りきっておらず、日本の検挙人員の中で再犯者がほぼ半数を占めている状況です。

これ以上日本で犯罪を減少させようと思うなら、初犯をどうにかするより母集団がある程度絞れる再犯者に着目するほうがよほどコスパがいいんじゃないかと素人ながら考え続けています。

最後に、繰り返しですが、個々人がn=1の事件で色々考えるのは私は何も否定しません。ただ、その事件の国民の反応が大きいから、特定の政策を導入するなんてことは私は絶対に反対します。

この前もとある交通事故で首相自らが対策をとりまとめていましたが、私はこのような対応には反対です。

菅首相“通学路点検行い10月末めどに対策まとめ”|NHK 首都圏のニュース

というのは、児童の交通事故での死者重傷者数は、児童の人数の減少以上に減少傾向にあるからです。首相がやることは、重要な式典で自分が読む原稿がのり付けされていないか予め確認するとか、他にあるでしょう。

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※グラフは警察庁資料より

日本には残念なことに潤沢なリソースはもはやありませんから、ゼロリスクを目指すのではなく、他の問題と定量的に比較して、政治的には費やすべき分野を選んで欲しいと考えています。報道機関もどうにかしてほしいところです。

今日はこんなところです。