昨日の記事で少年ジャンプに触れたので、せっかくなので連載されている作品のうち、私が好きな『約束のネバーランド』について書きます。
私は、家庭内トラブルものが大好きですが、他にもホラー、サバイバル、ソリッドシチュエーションの要素がある物語も好きです。 メディアは拘らず、小説でも、映画でも、ゲームでも、何でもOKです。ただ、洋ドラはちょっと食傷気味です。シーズンが続きすぎる。漫画については以前にこんな記事も書いています。
私の愛するサバイバル漫画6作品~7SEEDS、アイアムアヒーロー、自殺島、漂流教室、サバイバル、ドラゴンヘッド~ - 斗比主閲子の姑日記
だから『約束のネバーランド』を読んだ時にはすっかりハマりました。
舞台は孤児院です。フィクションの世界での孤児院と聞くと、『PAN』のピーターとか『アンチャーテッド』のネイサンとかがいた、子どもにとっては必ずしも快適ではないイメージがあるかもしれません。この孤児院は、清潔な居住空間、美味しそうな食事、広くて遊びがいのある庭、素敵な仲間とシスターと、子どもたちにとって凄く快適な居場所です。
ただ、ちょっとおかしなところがあって、毎朝テストがあります。就職活動のCAB・GABみたいなやつです。論理思考を求めるもの。11歳までの子どもがこのテストを受けさせられる。そして、子どもは、里親が見つかると孤児院を離れます。
私みたいにひねくれた人間だと、幸せ描写を見るとイヤな予感がします。7SEEDSの夏Aチームやブラッドハーレーの馬車みたいになるんじゃないかと身構えます。
実際、そのイヤな予感通りの展開になります。一話から。後は、もう、この孤児院からの脱出ゲームになります。
昨日の今日なので、フィクションをどこまで親がフォローできるか視点で見ると、私の感覚では、議論になっている『ゆらぎ荘の幽奈さん』より、『約束のネバーランド』のほうが親的にはキツいと思います。普通に子どもの生命が脅かされますからね。映画のレーティングでいえばPG12ぐらいついてもおかしくない感じ。よく読まないと分からないから、見つからないだろうけど。
たぶん、私が子どもだったら、それこそ作中の登場人物のように、大人には悟られないように読んでいたと思います。私の親は、小学生の私がジョージ秋山さんの浮浪雲を読んでいるのを見つけても何も言わなかったので、隠れる必要はないでしょうけど。隠れて読むと楽しさがアップする作品です。
ただ、私はもう大人になってしまったので、大人から隠れてこの作品を読むことはできません(子どもの目からは隠したフリをして読みます)。一方で、大人であり、子育てをしている人間としての観点で作品を鑑賞することができるので、それはそれで楽しいです。
例えば、このシーン。
※画像は第1巻、P.21より
テスト終わりに子どもがシスターから褒められ、庭で遊んでいます。このシーンを、それなりに子どもの教育方法の論文とかを読んできた私の観点だと、子育て上、良いところと悪いところがあります。
良いところは、遊びの前に面倒なこと(テスト)があるところ。ご褒美をあげてからテストをさせるより、テストの後にご褒美があったほうが子どもはテストを頑張れるものです。あとは、子どもの目を見て、物凄く分かりやすく褒めていること。自己肯定感を育めそう。
悪いところは、テストの結果を褒めているところ。何でもそうですけど、今時は、結果を褒めるより、プロセスを褒めたほうが子どもの学力が伸びることは知られています。主人公は満点だからこれ以上伸ばす必要はないというシスターの判断があるかもしれないですけどね。あとは、褒めるのも、子どもが慣れてきたら褒める頻度を下げてもいい。頻繁に過剰に褒めると、ご褒美としての褒めの効果が薄まります。
シスターには子どもの学力を伸ばすインセンティブがあるので、ページ数や漫画的限界はあるにせよ、この辺の要素が考慮されていてほしい……なんてことを考えながら、読んでいます。
そんなことを考えて読んで楽しくないんじゃないかと思う人がいるのは想像できるんですけど、実際これで楽しめているので、許してください。
私の中での、こういう大人視点で見ても何にも違和感がなかったのが田辺イエロウさんの『BIRDMEN』です。超お勧めです。特に親子の描かれ方がいい。
大人も楽しめる少年マンガ、田辺イエロウ『BIRDMEN』(バードメン)とシンママ - 斗比主閲子の姑日記
巻が進むと、主人公も色々あって母親とのコミュニケーションの形が変わっていって、親子関係にも影響が出てきます。たぶん、どこかで母親の目は描かれることになると踏んでいるんですけどね。こういう親子関係の変化も楽しみで読んでいます。
未見の人は是非読んでみてください。まだ連載は続いていますが、まったく中だるみがありません。 素晴らしい作品です。
ちょっと脱線しました。
以上で、『約束のネバーランド』の紹介を終わります。面白いですよ。
ちなみに、少年ジャンプの連載作では他にも面白い作品があります。以下の記事は、この人も私の中で「この人の子育て観は信頼できる!」フォルダに入っている、ぱれあなさんによるもの。
君はもう『Dr. STONE』を読んだか - 科学と生活のイーハトーヴ
ここ最近の週刊少年ジャンプでは『鬼滅の刃』『約束のネバーランド』、ジャンプ発のアニメでは『BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS』あたりの話がしたい! と思っていたのですが、ハイラルを救うのに夢中*1で、すっかりブログがおろそかになっていました。
ぱれあなさんは独立開業された弁理士さんです。
こう書くと「弁理士なんて難しい資格を持っていて、子育ても(きっと)しっかりしてて、しかもプライベートもハイラルとか海外行ってそうだし、何でも持ってて、ズルいズルい!」と思う人が、発言小町に投稿すれば必ず現れますが、そういうマインドがある人は、ぜひ、ぱれあなさんのこちらの記事も読んでみてください。あとはゼルダの伝説の最新作に触れてみてください。
「もっと好きなこと」をするために、今日を生きる - はたらく女性の深呼吸マガジン「りっすん」
当時はまだ「ワンオペ育児」という言葉はありませんでしたが、まさしくワンオペで仕事と家事育児を回す毎日でした。夫に少しでも早く帰ってきてもらえないかと頼んでみたこともありましたが、「俺の仕事の時間を減らせと言うのか」と怒鳴られ、取り付く島もない始末(夫も業績を上げて生き残るために必死だったのでしょう。最近になって、このころのことを謝ってくれました)。
夜泣きする子どもをひとりで抱きしめながら、このまま研究職を続けていくことはもう難しいだろうと思いました。
この記事には、決して超人ではない、一人の人間としての苦悩が、垣間見れます。抜粋部分は家庭内トラブルものとして、私がほっこりしたところ。
漫画でもそうですけど、何の説明もない完璧超人の話はつまらないんですよね。誰しもが、それなりにバックグラウンドを抱えているものなので。事情はある。私が「この人の子育て観は信頼できる!」フォルダに(勝手に)入れている人たちは、一つ一つの文章から、そういう個人の物語を(私が)読み取れる人たちです。
その意味では、私は大人になった今でも、フィクションと現実の違いは認識しつつも、物語という共通の観点で、フィクション作品かも現実の人からも同様に、楽しく影響を受けています。
二者択一の選択肢で悩んだらクラピカ理論で右を選びます(笑)