今年も折に触れてお勧めの漫画は紹介しているんですが、一年を振り返って、まだブログで紹介していない作品を一気に紹介しておきます。比較的新しめのものが多く、基本的に連載中なので、一緒に成り行きを楽しんでもらえると嬉しいです。
なお、紹介するにあたり備忘録的に全て掲載誌も付けてみました。順番は出版社ごとでざっくりまとめています。Web媒体連載のものもそれなりにあり、時代の変化を感じました。
- 詩歌川百景(既刊2巻) 月刊flowers
- 第九の波濤(既刊20巻) 週刊少年サンデー
- マチネとソワレ(既刊12巻) ゲッサン
- 任侠転生(既刊10巻) サンデーGX
- 海が走るエンドロール(既刊3巻) 月刊ミステリーボニータ
- 株式会社マジルミエ(既刊5巻) ジャンプ+
- エクソシストを堕とせない(既刊3巻) ジャンプ+
- ブラックナイトパレード(既刊8巻) 週刊ヤングジャンプ→ウルトラジャンプ
- スキップとローファー(既刊7巻) 月刊アフタヌーン
- メダリスト(既刊7巻) 月刊アフタヌーン
- ワンダンス(既刊9巻) 月刊アフタヌーン
- クロウマン(既刊2巻) ヤンマガWeb
- 締め
詩歌川百景(既刊2巻) 月刊flowers
吉田秋生さんが月刊flowersで海街diaryの次に連載し始めた作品。
山形の温泉街での狭い中での人間関係模様を描いているのですが、海街diaryと同じく異常に察する力に秀でた人たちばかりなので、普通の日常のはずがやけに濃密なコミュニケーションをしているように感じるのは私だけでしょうか。
大きな出来事は起きず、どうしようもない悪者も登場せず、まともな人々による淡々とした日常を楽しみたい人にお勧めです。
第九の波濤(既刊20巻) 週刊少年サンデー
サッカー漫画『ファンタジスタ』シリーズの草場道輝さんによる、長崎大学水産学部を舞台にした作品。
線の細い、ファッションセンスに長けた、常にスマホでSNS発信を欠かせない高校生の主人公が、長崎での父親の法事をきっかけに出会った女の子に惚れて、その子が進学するであろう長崎大学水産学部を受験するというところから物語は始まります。
最初は主人公の男の子にまったく共感を覚えられず、水産学部への進学理由含めてチャラい感じが拭えないんですが、読み進めていくと、行動力と決断の速さが凄まじい感じになっていって、どんどん圧倒されていくのが楽しいです。
作品の大きなテーマとして、持続可能性のある漁業という観点があり、洋上風力や地球温暖化の影響が紹介されるなど、現代日本漁業が置かれている状況を垣間見れるのも楽しみにしています。
マチネとソワレ(既刊12巻) ゲッサン
死亡した偉大な兄の影を追いかけて役者を続ける弟が、ひょんなことから並行世界に移動して、その世界では兄が生きていて……というお話。
役者漫画って、登場人物たちがどれだけ凄い役者なのかが理解しにくくて、楽しめる漫画は多くはなかったんですが、この作品では素直に「この演技、凄い……!」って思えます。
主人公の弟君が並行世界では誰も頼れる人もいないとこからスタートするので、立身出世的に役者が成功するための道のりを見られるのも楽しいです。特に、2.5次元舞台での、読者による色々な解釈が存在しているキャラを演じるのが良かったですね。舞台自体もそうなのだけれど、「私の解釈通りの推し……!」って恍惚の笑みを浮かべる観客の描き方が素晴らしかった。
任侠転生(既刊10巻) サンデーGX
渋い感じの高齢ヤクザ"竜"が半グレにハメられて死んだと思ったら、剣と魔法の世界でお姫様"リュー"に転生したという設定です。
普通に考えたらこの設定だとイロモノ枠になっちゃいそうなのが、ヤクザ漫画の原作を複数手掛けている夏原武さんと、画力が異常に高い宮下裕樹さんとの合作で、『ブラック・ラグーン』が連載されているサンデーGX掲載ですから、まったく違和感なく渋いヤクザのお姫様ファンタジーが成立しています。奇跡的だと思う。
リューは見た目はか弱い女の子なのに、腕っぷしが強く、涙もろく、情に厚いところが格好良くて、私が読んでるアプリの『サンデーうぇぶり』だと、みんな自然と"リュー様"呼びしているのが面白い。
海が走るエンドロール(既刊3巻) 月刊ミステリーボニータ
夫を亡くし、特にやることもなく日々を過ごす女性(65歳ぐらい)が映像専攻の美大生と出会ったことで、映画を作ろうと美大に入学する話。
『メタモルフォーゼの縁側』みたいな、高齢者と若い人での共同作業という構図なんだけど、本作は若い人にイケてる子が多く、そんな子たちに主人公のどこにでもいそうな高齢者がチヤホヤされるのが、ハーレムっぽい感じになってて、「私は何を読んでるんだ……!」って思いながら楽しく読んでます。
私は子どもが大学に進学するタイミングで、大学か大学院に入るつもりなので、我が事のように思えるのも、特に感情移入しやすい理由かもしれない。
株式会社マジルミエ(既刊5巻) ジャンプ+
自然災害として『怪異』が出現する世界で、それを退治する魔法少女が所属する企業のお仕事漫画。
いわゆる普通の魔法少女物ではなく、職業としての魔法少女ですから、服装もギアも誰かが仕事で作っているものだし、打ち出す魔法もバックでプログラミングが組まれていたり、当然、採用活動なんかも描かれます。
『任侠転生』もそうだけど、フィクションにリアルな世界観を反映しているの作品が私は好きなんですよね。ジャンプ+の大好きな漫画の一つです。
エクソシストを堕とせない(既刊3巻) ジャンプ+
そして、ジャンプ+の大好きな漫画のもう一つがこちら。
タイトルから分かる通り、エクソシストの男の子をサキュパスの女の子が堕落させようとするという話なんだけど、とにかく話が暗い。圧倒的に暗い。
エクソシストだから悪魔を退治するわけですが、登場する悪魔がやることがエグいことばかりです。中にはまだ通じ合えそうなのもいるんだけど、基本的に邪悪。絵柄が可愛くなければ耐えられないエグさ。特に、最近戦っている蠅の王が本当に酷い。
そんな邪悪な悪魔と、人間勢力最強の小さい男の子がほぼ単体で、体を失いながらも、傷付きながら戦い続けているので、サキュパスの女の子が最初は普通に堕とそうとするんだけど、「神父君、もう休んで……!」って自分が堕ちちゃう。
最初は普通の恋愛物だと思ったんですけどね。色恋よりも、人間愛、無償の愛を打ち出したいんだなと思って、読んでます。
ブラックナイトパレード(既刊8巻) 週刊ヤングジャンプ→ウルトラジャンプ
『荒川アンダー ザ ブリッジ』の中村光さんの最新作。大学受験も失敗し、就職も上手く行かず、練馬北口ポーソンで使えない同僚の後始末をしながら働く主人公が、ひょんなことからサンタクロースの会社で働くことになるというお話。
基本ギャグ漫画なんですけど、主人公の生育環境と、どうしてここ(サンタクロース業)に至るかというのが、巻が進むたびに徐々に明らかにされていくミステリー?要素も楽しみにしています。
スキップとローファー(既刊7巻) 月刊アフタヌーン
石川県の田舎から、東大→官僚→政治家で地元の町興しをしたいと、東京の進学校に主席入学する女の子の話。
この作品は私の読者さんに紹介してもらったんですが、私が好きな要素がてんこ盛りで、思わず感想を数十Tweetを使って呟いていました。
何がいいって、普通に嫌な感じの人が登場する度に、その人がどうしてそういう振る舞いをするようになったかがしっかり描かれるところ。人それぞれ、事情がありますからね。主人公の女の子のまっすぐなところが効いて、嫌な感じの人たちが自省をして、徐々にみんなの関係がいい感じになるというのが、短い話数できっちり描かれていきます。
三回ぐらい泣きました。特に奇麗な子扱いされている子の、過去の苦しいエピソードと、その解消のされ方が良かった。
メダリスト(既刊7巻) 月刊アフタヌーン
アイスダンスで夢破れた男性(26歳)と、母親の毒に晒され、学校ではいじめられながらも、アイススケートだけは自分を裏切らないと隠れてスケートをしていた女の子(小5、11歳)が出会って、女の子がフィギュアスケートの金"メダリスト"を目指すもの。
スポーツ漫画としてフィギュアスケートがどのようなゲームルールであるのか、今主人公とライバルがやっている技がどれだけの点数を狙ったものなのかなどなど、フィギュアスケートの楽しみ方を描いているのはもちろん、
主人公の女の子が、フィギュアスケートでの成長と合わせて、母親の毒含めた自分のコンプレックスと戦い、そして克服するシーンが、親としては涙なく読めませんでした。子どもは親の見ないところで成長しますね。
ワンダンス(既刊9巻) 月刊アフタヌーン
高校のダンス部のお話。
義務教育でダンスが必修化となり、高校のダンス部がリアルに活躍しているのは知っていたんですが、何だかちょっと怖いなと私からは少し遠い世界の出来事と考えていました。
この漫画はそのダンス部を舞台にしていて、過去多く漫画家されてきた社交ダンスではなく、ストリートダンスを扱っています。正直、ストリートダンスの違いはまったく分かっていなかったんですが、体の動かし方や、得意不得意が微妙に違うというのを、漫画という絵を通して知るのがとても楽しいです。
本作は、『ピアノの森』を読んだときの衝撃に近いところがありました。『ピアノの森』が音楽を漫画で表現するのは無理だと思っていた私の既成概念を取っ払ったように、『ワンダンス』を読んでいると静止画にも関わらずストリートダンスの動きが伝わってくる感じがあります。
主人公たちの恋愛模様も若干はあります。各人の事情があるのがいいですね。
クロウマン(既刊2巻) ヤンマガWeb
シングルマザーに育てられている口の悪い少女が、借金のカタに誘拐されて改造人間にさせられるという悲惨なところから話は始まります。
今回取り上げた作品の中で本作だけは完結しています。基本的に現在連載中のものだけ取り上げようと思ったんですが、単行本最終3巻はまだ発売されていないので、同じカテゴリーとして許してください。
本作は改造人間のバトルってことになってるんですが、絵柄がちょっと昔の少女漫画チックなんですよね。目はキラキラしてるし、輪郭がきっちり閉じなくて、細い線のタッチが多い。しかし、主人公たちは言葉遣いが悪い……! バトルも何か変……!!
このギャップが楽しくて、次に何が起きるのか、登場人物たちが何をやらかすのがまったく想像できなくて、毎話楽しみに読んでいました。
今ならヤンマガWebで全話無料で読めるので、ぜひ読んでみてください。
締め
以上、全12作品を紹介しました。何とか年末に書き切れて良かったです。年末年始でコンテンツ不足がある人はぜひ読んでみてください。
来年も色んな漫画に出会えるのを楽しみにしています。