斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

「大好きなおじいちゃんのお通夜で遺産の話される」のは私は好きだけど、嫌いな人は多い

このコメントがすごく人気になっているのをたまたま目にして、 

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「大好きなおじいちゃんのお通夜で遺産の話されてる感じ」と言われていたのがしっくりきた

2020/03/20 23:08

b.hatena.ne.jp

私は「大好きなおじいちゃんのお通夜で遺産の話されてる」のは好きなんだけど、世の中では嫌いな人のほうが多いものだよなと思いました。

嫌いな理由を言葉にすること自体が嫌なぐらい、嫌なことは自明の理でしょうが、あえて、あえて言語化すると、大好きな人の思い出を悼む最もピークのタイミングで、その思い出を汚されるような下世話な話がされるからですね。

あとは遺産というのがポイント。これが大好きなおじいちゃんの隠し子騒動とか、おばあちゃんによるおじいちゃんのDV告白みたいな、おじいちゃん自身の過失であれば、おじいちゃんへの非難も多少は生まれうる。だけど遺産だから、おじいちゃんが悪いってことではなく、きな臭い話をする周囲の人間中心に嫌悪感が生まれる。

この「大好きなおじいちゃんのお通夜で遺産の話」というたとえがピンと来ない人には、たとえば、家族や知人が死んだ直後にその死んだことを第三者が寄ってたかって宣伝して商売にするというと理解しやすいと思います。妻が死んだ後で、死んだ妻の代わりに娘が味噌汁を作ってくれるのが嬉しいという本を出すとか。そんなことする人いないでしょうが。

もとの話では誰もリアルには死んでいませんが、フィクションでも死はセンシティブなテーマなんですよね。扱いが難しい。

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ちなみに、私が「大好きなおじいちゃんのお通夜で遺産の話される」のが好きな理由も一応書いておきます。お好きな人だけ読めばいいと思いますが(このタイトルと、ここまでのくだりで好きな人しか残っていないでしょうが)、遺産相続トラブルが好きなだけです。

私は死んだ人は死んだ人でもう過去のことだし、他人の感情と私の感情は別物なので、他人がどんな話を故人についてしようがまったく気になりません。自分が好きな作品を他人がどうレビューしようが、自分の好きだという感情に関係しないのと同じ。

それとは別に、遺産の話というのは、周辺の人間の経済状態や欲が赤裸々に開陳されるんですよね。それを眺めるのが好きなんです。通夜振る舞いの仕出しの店が悪いとか文句をつける親族とかも大好物です。

ちょっと話題がずれますが、以前に本にも書いたように遺産相続のトラブルは金額が大きくなくても起きます。家裁に持ち込まれた事案のうち75%が5000万円以下で、1/3が1000万円以下です。

遺産額が大きくなくても相続トラブルが起きるのは当たり前のことで、そもそも遺産が多額になる人は全体としてはそんなに多くありません。遺産額が5000万円以下ぐらいがボリュームゾーンだから、揉めるのもボリュームゾーンで多いだけ。あとは、遺産額が少ないケースでの相続人こそお金を持っていないことも多々ありますから、あぶく銭みたいな遺産に群がる。

私も何度かその場を目撃しています。「葬儀をこれだけ立派にできたんだから、まだお金は余ってるよね?」「言いにくいんだけど、子どもが進学したから生前贈与だけじゃ生活が回らないの……」と家族を看取った人に直球でお金の話をしてくる親族。

このときのことがわだかまりになって、縁が絶たれるというのも、それはそれでありふれた話です。ありふれているけど、人間の我欲が見られる機会というのはなかなかないので、嫌いな人が多いのは知っているけれど、「大好きなおじいちゃんのお通夜で遺産の話される」のは私は好きです。