斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

「現在、大企業勤務で仕事は順調。家業を継ぐならもうすぐだが、躊躇がある。どうするべきかロジカルなアドバイスがほしい」

今日は一人小町です。安定した今の仕事を続けるか、家業を継ぐかというモヤモヤ。

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Q. 現在、大企業勤務で仕事は順調。家業を継ぐならもうすぐだが、躊躇がある

斗比主閲子様

はじめまして。いつもブログとTwitter見ています。ロジカルなアドバイスを求めています。もやもやは家業を継ぐべきか、ということです。

長男の私は旧帝大→某大企業の中堅社員数という経歴で、家業は今の会社の中小の取引先という立場になります。家業は地元ではそこそこのようです。

父は私に家業を継いでほしいようですが、選択についてはまかせてもらっています。母はもったいないから帰ってくるなという意見のようです。婚約者は専業主婦予定のため、どちらでもいいよと言ってくれています。

自分自身はマネジメントは好きですが、お酒も飲めなければカラオケもうまくないので
(父はお酒も飲めてカラオケもうまく、いわゆる「田舎の社長」という感じです)、田舎で経営者をやっていけるかわかりません。

私に息子ができたら、自分より優秀であれば大企業で活躍してほしい、自分より出来が悪ければ継がせる意味がないと思うため、どちらにせよ今時点では私の息子に家業を継がせる気はありません。(自分が実感していないからかもしれません。)それを父に話したところ、父は家業を代々継いで欲しいと考えていたようで少し怒っていました。

このままいけば、今の会社でもそこそこの地位には届くと思います。わざわざ安定した道を捨てて、転職することも家業でなければ考えることのなかった道です。ただ、父の年齢的なこともあり、決断はもうそろそろしなくてはなりません。

なかなか同じ悩みを持った人は周りにおらず、相談させてください。

トピシュさんにアドバイス頂ければ嬉しいです。よろしくお願いいたします。

一読者より

A. 自分が何がしたいかの整理と、家業がどれくらい勝てるかをシミュレーションしましょう

ご相談は、今の仕事を続けるか、家業を継ぐか、どうしたらいいかというものですね。ある意味転職の相談と同じで、ただ、転職先が家業(社長業)というのが特徴でしょうか。

お求めに応じて、できるだけロジカルに回答していきます。

まず、これを転職と考えると、現業と転職先の家業とで自分がやりたいことがどれだけ実現できるかを比較するといいですね。

仕事を比較するときの切り口は、①仕事そのものに興味が持てるか、②人間関係が良好か、③対価が良いかという3つの観点で、自分が何を重視しどう実現したいかを考えるといいです。

①仕事そのもので言えば、大企業の一社員の仕事と中小企業の社長業とではやることがかなり違います。大企業の一社員であれば仕事の規模は大きいけれど部分的な業務に従事し、中小企業の社長業であれば規模は相対的に小さくなるけれど見ようと思えば経営(営業・調達)・財務・人事等々すべての仕事に絡むことができます。どちらがご自身としてやりたいか。

②人間関係では、大企業であれば優秀な人材は多いし、企業規模の大きさから嫌な人間からの逃げ場所はそこそこあります。ただし、自分は一社員に過ぎないので、必ずしも人事が思ったようになるわけではありません。一方で中小企業の社長であれば気に入らない社員の首を切るようなことはできたとしても、ずぶずぶな取引先との関係は維持する努力が必要だし、人間関係の範囲は狭いものです。必ずしも全員が優秀というわけではない。どちらの人間関係が良いか。

③対価では、大企業ではほぼもらえる金額に限界があります。中小企業の社長であればもしかしたら相当多く役員報酬を取れるかもです。ここはお父さんに聞いておきたいところ。

上記の①~③で紙に書き出してみましょう。これだけですっきりせるはず。それで、比較してどちらがいいか考えてみましょう。もちろん判断基準はこれだけに限らないので、自分で軸を増やしてもOKです。

ここまでは通常の転職の話ですが、ここからは家業を継ぐかどうかの判断です。この点では、家業が本当に勝てる商売か、面白みがあるかもシミュレーションしておくのがお勧めです。

お父さんから過去5年~10年分の決算報告書をもらって、どうしてそういう数字になってきたかを聞いてみましょう。家族だからこそ詳細な情報が手に入り、分析がしやすいです。例えば、次のような分析をしてみるといいですね。

  • 売上が過去急激に落ち込んだ、上がったときにどんな要因があったか。低迷しているのであれば成長する余地はあるか、もっと悪くなるのか。
  • コストは仕入原価が高くなっていないか、人はちゃんと採用できているか、どれだけ固定費が重いか(損益分岐点がどれくらいか)。コストの削減見込みはあるか。
  • 売掛・買掛の回転比率を見てみましょう。資金繰りが厳しくなっていることはないか。
  • 固定資産は継続的にどれだけ必要か、無理無茶な投資が必要なことはないか。
  • 借入はどれくらいあって、個人保証はしているということでいいか。

などなどです。

勝ち筋が見える(キャッシュフローが長期的にそこそこ稼げる)ことがない中で無闇に家業を引き継ぐのはシンドいでしょうから、予め情報は集めておくといいということです。

できれば、お父さんの右腕みたいになっている人や重要な社員数名と一人1時間ぐらい話ができるといいですね。自分が決算報告書を読んだ上での仮説をぶつけてみて合っているかの確認や、その人たちと働きたいかを考えてみるのも有効です。最低5人は話しておきたい。

これぐらい検討をしたら、もう少し選択の解像度が上がって判断もしやすくなるんじゃないかと思います。ついでに転職活動も試しにやってみると、さらに解像度が上がる(比較材料が増える)と思いますが、これは余裕があればですね。

以上、回答してみました。

これを読まれたみなさんも、どうぞetsuko.topisyu@gmail.comまで、ブログにそのまま掲載してもよい、ほっこりエピソードをご気軽に送ってください。私が一言コメントを付けてブログに掲載します。

なお、投稿にフェイクを入れるのは確認で時間がかかるので、ご自身でするか、私に全面的にお任せする形でお願いします。また、どんな方向でコメントをしてほしいかも書いてくれたら、期待に応えるようにします。罵ってほしい、褒め称えてほしい、傾聴してほしい、何でもOKです。