斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

【36万部のベストセラー】親を死なせて親のありがたみを分からせる親向けの絵本『ママがおばけになっちゃった』【全国学校図書館協議会選定図書】

こんな依頼がありました。

(全ページ読める)ママがおばけになっちゃった!|絵本ナビ : のぶみ みんなの声・通販

本屋で平積みになっていたので立ち読みしたけど、ものすごくモヤモヤした。特にラストが気持ち悪い。id:topisyu さんにモヤモヤ解説してもらいたいです。

2016/05/24 21:52

ということで、この記事では、のぶみさんの『ママがおばけになっちゃった』について、どこらへんがモヤモヤするかを解説したいと思います。

好きな人がいるのは知っているので、ここから先は、この作品及が大好きで大好きでたまらない人は読まないことをお勧めします。

試し読みしたければ

2015年7月に発売されて2016年1月時点では36万部超ということでしたので、ご存知の方は多いかもしれませんが、未見の人は、以下のサイトで読めます。(会員登録すれば全文を一回読める)

(全ページ読める)ママがおばけになっちゃった!|絵本ナビ : のぶみ みんなの声・通販

また、公式でのYoutubeの読み聞かせ動画もあります。 

賛否がくっきり

先ほどの絵本ナビの評価でも高い評価の人がいる一方、低い評価がかなりあります。

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Amazonはもっとはっきりしていて、星5つと星1つでキレイに分かれています。

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※画像はAmazonのページより

絵本で否定的なレビューがこれだけ出るのは珍しいです。id:tanpopopさん以外にもモヤモヤした人がたくさんいたのがうかがい知れる。 

親を死なせて親のありがたみを分からせる親向けの絵本

それで、この絵本のどこにモヤモヤするかと言えば、子どもが読む絵本としてどうなのかというところでしょうね。

  • 子どもに親の死を強制的に想像させる
  • 親が死ぬといっても死が軽い(冗談みたいな描かれ方)
  • 一晩で一人で生きていけると思うなど子どもが物分かりが良すぎる

絵本に関わる仕事をされている方からは、子どもに親の死を想像させるやり方についての弊害が指摘されています。

再び、違和感のある絵本を問う : みどりの緑陰日記

その時に絵本の中とはいえ、母親を引き離され、しかも死別という形で亡くす・・・そういう状況は子ども達にとって想像を絶することです。そこで引き起こされることは、ママが死ぬかもしれないという不安感と、だからママから離れたくないという気持ちの醸成です。

幼児期を過ぎれば、子どもたちは同年代の子どもたちと過ごしながら、徐々に親離れし、自立して行きます。その時期に差し掛かる時に不用意な不安感を煽ると、自立を阻害することになりかねません。ママとの突然の分離が怖くて、親離れできなくなってしまうことさえあるのです。

中学校の息子さんに読ませた方のレビューでも同様の指摘があります。

「ママがおばけになっちゃった!」に対する息子の批判がまっとうすぎる - 仙台広瀬川ワイルド系ワーキングマザー社長

子どもが読む本としてどうかとすれば、どうしてこんなに高い評価があり、人気になっているのか。これは親向けの本だからと考えられます。現に絵本ナビでのアンケートでも、

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こんな結果です。しかし、アンケートの選択肢に大人というのがあるのが面白いですね。

子どもが死を理解する教材としては雑ですし、その上で、親の価値を子どもが理解し、そして子どもが勝手に自立してくれるという親にとっては都合がいい終わり方になっているのも、親向けとすれば理解できるわけです。親が溜飲を下げるための本ということです。

だから、冒頭に書いたとおり、大好きな人はいるはずなんですよね。実際に、この絵本に登場するような四歳児が、親をこれだけ認めてくれて、自立してくれるかというとそうではないですから。この子のために頑張らなきゃ!と疑似体験するために読まれているんじゃないかと思います。

賛否が別れるところはこんなところですね。自分向けのものと捉えるか、子ども向けのものと捉えるかの違いかなと。 

細かいところでは、

  • 父親が登場しないこと
  • 祖母の描かれ方がステレオタイプであること
  • 子どもが母親のパンツを履くこと

についてもモヤモヤする人はいるかなと思います。

こういったところは、のぶみさんの作品にほとんど共通するところなので、これが合わない人はのぶみさんの絵本を読むことはお勧めしません。

自分はのぶみさんの絵本を10冊ほど読んだことがありますが、どの絵本でも父親はまともに登場せず、家事育児をするのは母親だし、その母親はガミガミ怒るキャラクターだし、完全二世帯同居している祖母はいつも着物で優しい。かなり、コテコテの家族観を持っていることが推測できる作家です。 

個人的には、6-7ページの、冷蔵庫に貼られたメモ書きが凄いと思いましたけどね。

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絵本の中で「のぶみこうえんかいにいく♥」「のぶみさんの♥ Twitter♥ おもしろい♥」などと、作家自身の講演会活動やTwitterを宣伝しているのなんて初めて見ました。のぶみさんの絵本だとこういういたずら書きでの自作の宣伝は当たり前でしたけどね。ちなみに、のぶみさんの講演会は40万円からです。

絵本作家のぶみのオフィシャルホームページ

講演会、ワークショップは、40万~です。 

締め 

ということで、のぶみさんの『ママがおばけになっちゃった』のモヤモヤ解説でした。

もっとモヤモヤしたい人で、仮面ライダーシリーズやスーパー戦隊シリーズが好きな人は、同じのぶみさんによる『ぼく、仮面ライダーになる!』『○○かぞく』シリーズを読むのがお勧めです。

Amazon.co.jp: ジュウオウジャーかぞく (講談社の創作絵本)の モリノリさんのレビュー

子どもが祖母と本屋で購入してきました。
寝てしまった子と車で待っていたので後で妻に聞くと、ジュウオウジャー好きな長男が表紙をみて選んだのだそうです。
読む前から嫌な予感がしていたのですが、読んでがっかり。
戦隊ものと絵本が互いのよいところを打ち消し合っているように感じられてなりません。
ところどころに出てくる作者の絵本シリーズのキャラクターも、話とは無関係で興ざめします。
仮にこの作家の本が好きな読者だったとして、ああいう使い方は逆にして欲しくないし、そうでない私にはうすら寒く感じました。
他にも歴代の戦隊ものや仮面ライダーで同じことが繰り返されているのを知って、ちょっと気持ちが悪くなりました。
来年、もし新しいシリーズが出たら(おそらく出すのでしょう)、自分は買いません。
でも子どもは表紙をみてまた買いたがるのではないかと思います。
これ、絵本なんですかね?

このレビューは『ジュウオウジャーかぞく』を読まれたお父さんによるものでしょうが、この人の見立ての通り、仮面ライダーシリーズやスーパー戦隊シリーズについて、その作品である必然性のない、オーズやフォーゼやウィザードや鎧武や、トッキュウジャーやニンニンジャーがヒーローとして登場するだけの、金太郎飴のような絵本が大量にシリーズとして売られています。ニンニンジャーでいうところの「忍ぶどころか、暴れるぜ!」みたいなキャッチフレーズが違うのが救いですけど、キャッチフレーズも意味が分かって使われている気はしません。

シリーズ化されているということは、売れているし、東映としてもよしとしているということなんでしょうけどね。 

それと、もっとモヤモヤしたい人向けに、この『ママがおばけになっちゃった』が全国学校図書館協議会選定図書になっていることもお伝えします。毎年8万点絵本が発売されている中で、図書館向けに7千点を選ぶということなので、これだけ売れている本であれば入って当たり前でしょうけれど、

全国学校図書館協議会|全国SLA制定の各種基準|全国学校図書館協議会図書選定基準

9 絵本
(1) 子どもに対する愛情に貫かれ、絵と文が芸術的に調和しているか。
(2) 絵は、内容を的確に表現したもので、子どもの感覚に合った楽しいものになっているか。
(3) 文章は、子どもに理解できる内容や表現になっているか。
(4) 用紙・装てい・判型などは、内容にふさわしく作品を充分に生かしているか。
(注)中学・高校生向きの絵本についても上記に準ずる。

この選定基準に合っているかについては、これも賛否両論はありそうな気がします。

以上、本題です。以下、余談です。  

このレビューがほっこりする!

『ママがおばけになっちゃった』のAmazonのレビューでこんなものがありました。

Amazon.co.jp: ママがおばけになっちゃった! (講談社の創作絵本)の りんごちゃんさんのレビュー

義母から娘へ、クリスマスプレゼントとしていただきましたが、内容が内容だけに素直に喜べず、悪意さえ感じてしまい、夫にも読んでもらって同意をもらい、娘に見せることなく即古本屋へ売りに行きました。
贈り物としてなんて、もっての外です。

まあ、姑が娘にプレゼントなんて悪意を感じますよね!この後の、姑との関係が気になる!! 

うちの子たちがハマった絵本

これで終わるのもなんなので、うちの子たちがハマった絵本のうち、絵本ナビでも編集部が推薦していたものを紹介しておきます。

じゃあじゃあびりびり (まついのりこのあかちゃんのほん)たべたのだあれ (どうぶつあれあれえほん)おたすけこびとそらまめくんのベッド (こどものとも傑作集)からすのパンやさん (かこさとしおはなしのほん (7))じごくのそうべえ (童心社の絵本)

順に0,1,2,3,4,5歳向けと絵本ナビではなっています。 

我が家は3歳までに1万冊というのはさすがに読んでいないと思いますけど、毎週家族で図書館には行ってます。図書館がいいのは、いい本のセレクション機能が働いているところです。子ども向けに絵本をどう選んだらいいか分からない人は、図書館で司書さんにぜひお勧めを聞いてみてください。親切に紹介してくれます。

図書館に行くのがどうも……という人は、今日紹介した絵本ナビのサイトは、とにかく盛りだくさんでたくさんの情報があります。例えば、年齢別のお勧め絵本が紹介されているので、そちらを参考にされるのもありじゃないでしょうか。

絵本ナビ 子どもに絵本を選ぶなら

さらに、図書館に行くのも、自分で買うのも時間的な余裕がないという人には、福音館書店の『こどものとも』シリーズをお勧めしておきます。毎月絵本が500円ぐらいで郵送で届きます。

福音館書店|月刊誌のご案内