斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

実姉だと名乗る人物から「母の相続財産を貰う権利がある」と言われた

ちょっとミステリーのような発言小町のトピがあったので紹介します。

亡くなった母の娘だという女性、相続の権利があると言ってきた : 家族・友人・人間関係 : 発言小町 : 大手小町 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

私の両親は他界しています。
交通事故で1年前に亡くなりました。
私は25歳、現在独身の会社員です。
両親が残してくれた一軒家に住んでいますが、先日私の姉だと名乗る
女性が訪ねてきました。
年齢は30歳、母が父と結婚する前の出来た子供で父方に引き取られたそうです。
母から一切聞いた事はありません、戸籍にも記載はありません(異父ということがあるでしょうが)
母から聞いた事はありませんが、言い残す暇もなかったのが原因かもしれません。
へその御と若い頃の母に抱かれる赤ん坊の写真、母子手帳、身分証明書などを見せられたのでほぼ間違いはないと思いますが…。
相続した母の遺産を自分も受け取る権利があると言ってきました。
だけど残してくれたのはローンのすんだ家、私名義の生命保険、父名義の貯金
くらいしかなく、自宅も父名義でした。
しかも同時に死亡した状態で、両親の遺産を私が受け取っているので母の分は
わからないです。
弁護士に相談してまたくると姉(と名乗る女性)は言っています。
こちらも弁護士に相談して、いくらか渡さないと駄目ですか?
存在すら聞いていなかった「姉」の存在にかなり混乱しています。

これを読んであなたならどう対応しますか? 

いま親が死んでも困らない相続の話 (ソフトバンク新書) 

※相続が揉めるのは大体事前に親族間で相談できていないとき。 

 

コメント

自分だったら、まずは詐欺だと疑います。姉であることを証明するに足る情報がありませんから。どうしても姉だと言うなら、その人物に親子関係が分かる書類として戸籍謄本を出すようにお願いします。

それと、母親から相続した財産がないことも伝えて念押ししておきますかね。

これが、母親の子ではなく、父親の子だと結構大変ですけど、母親の子だったらこういう対応をします。

 

母子関係と戸籍

母子の場合は、父子と違って、(戦中でもなければ)確実に戸籍に載ります。母親は子どもを認知するなんて必要はなく、生んだ時点で母子関係は確定します。出生届も出しますから、それで戸籍上は母子関係が分かる。

離婚後転籍なんかしたりすると、最新の戸籍では子どもがいないように見えても、除籍謄本なんかを取って辿っていくと、子どもを出生したかどうかは確認できます。

だから、相続した時には、他に相続人がいないか、死亡した親族の戸籍を辿っていって確認をするんですよね。

 

トピ主さんは、

母から一切聞いた事はありません、戸籍にも記載はありません(異父ということがあるでしょうが)

戸籍も確認していて(原戸籍も確認しているそうです)、これだけでもう実姉ではないと確定しちゃっていい。

相手からは、

へその御と若い頃の母に抱かれる赤ん坊の写真、母子手帳、身分証明書などを見せられたのでほぼ間違いはないと思いますが…。

こんな情報も出てきたようですが、どうしても姉だと主張するなら、「では、あなたの方で姉であることを証明して下さい。戸籍謄本の母欄に、母の名前がありますよね?」と聞いて相手に証明させればいい。こちらが母親の戸籍謄本等(除籍謄本、原戸籍)を見せて姉でないことを証明する義理はありません。

 

同時死亡時の相続

それともう一つのポイントとして、相続の話についても触れておきます。

トピ主さんも書かれていますけど、

だけど残してくれたのはローンのすんだ家、私名義の生命保険、父名義の貯金くらいしかなく、自宅も父名義でした。
しかも同時に死亡した状態で、両親の遺産を私が受け取っているので母の分はわからないです。

ご両親は同時死亡なんですよね。同時死亡の場合は、民法上は相続が発生しないので、お母さんはお父さんから遺産相続をしたことにならない(逆もそう)。結果として、トピ主さん単独で、ご両親からそれぞれ遺産相続を受けることになります。

名義が特定されている生命保険は遺産分割の対象になりませんし、お母さん名義の財産はなかったようですから、同時死亡によってお母さんがお父さんの財産を相続しているとういことでもない以上、お母さんからの相続財産はなかったということになります。

もし、戸籍上何らかの手違いが万が一あって、実は本当に母子関係があったとしても、母親の遺産がないことを説明すれば、普通は引き下がるはずです。

 

締め

25歳の若さでご両親を亡くした状態で、こんな話が来たら普通は上手く対応できないですよね。トピ主さんには同情します。

しかし、こうやって整理してみると、この相談、何だか司法試験の論文の問題みたいです。随分昔に勉強して以来、問題を解いていないので、ちょっと違うかもしれませんが、司法試験の問題を発言小町のトピ風にして相談したら、法曹界の常識と、世間の常識の違いを確認できそうです。

それと、冒頭に紹介したとおり、これが、母の子ではなく、父の子だった時は、話が違います。父子関係は、必ずしも戸籍だけでは証明できませんからね。相続財産にしても、今回のケースだとお父さんの遺産がちゃんとありますし。

相続の話をこうやって色んなケースで考えるのはとても楽しいですけど、楽しくない人はさくっと仲の良い行政書士さん、司法書士さん、弁護士さんに相談するといいと思います。しっかりとした対応をしてくれますよ。