斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

「女性がたくさん入っている会議は時間かかる」「女性はいくらでもうそをつけますから」が冗談として機能しない世の中にするために「傍観者」にはならない

東京オリパラ大会組織委員会の会長の森喜朗さんがかなりヤバい発言をしていました。詳しくは次の朝日新聞の記事を読んでみてください。まあ、酷い。

「女性がたくさん入っている会議は時間かかる」森喜朗氏:朝日新聞デジタル

結局、あんまりいうと、新聞に書かれますけど、悪口言った、とかなりますけど、女性を必ずしも数を増やしていく場合は、発言の時間をある程度、規制をしていかないとなかなか終わらないで困るといっておられた。だれが言ったとは言わないが。そんなこともあります。

私どもの組織委員会にも女性は何人いたっけ? 7人くらいか。7人くらいおりますが、みんなわきまえておられて。みんな競技団体からのご出身であり、国際的に大きな場所を踏んでおられる方々ばかりです。ですから、お話もシュッとして、的を射た、そういう我々は非常に役立っておりますが。次は女性を選ぼうと、そういうわけであります。

わきまえておられてって。ははは。

平和の祭典と言われるオリンピックの運営で全人類の半分を敵に回すような発言をしたのですから、私のようなひねくれた人間は「新型コロナの影響でオリンピックが開催されなくなる責任を自分一人で背負うためにこんなことを言ったのかな」と一瞬思いました。

ただ、思ったのは一瞬で、森さんがこんな発言をするのは割と理解できて、あの人はサービス精神が昔から旺盛なので、参加している"お仲間"が喜ぶ発言をしただけだと考えています。

実際に、"その場にいたJOCの評議員会のメンバーからは笑い声もあがった。"ということで、その場にいる人たちにはちゃんとジョークとして機能したのでしょう。JOCの評議員会のメンバーは57名中女性は一人しかいないし。お仲間向けの差別的な冗談。

JOC - JOCについて | 評議員名簿

今回の差別的な冗談をサービス精神で言って、それを周囲が冗談として喜ぶという構図を見て、私がすぐに思い出したケースがあります。衆議院議員の杉田水脈さんが「女性はいくらでもうそをつけますから」と自民党の会議で発言したとされる話です。この時も会議で笑いが起きたそう。

【音声配信】杉田水脈議員が「女はいくらでもうそをつける」と発言か(上谷さくら×澤田大樹×荻上チキ)▼2020年9月25日(金)放送分(TBSラジオ・Session-22)

杉田水脈さんがどういう人かは色んな人が色んな考えがあるでしょうが、私は、本人が今の地位を維持するために、周囲に対して女性を笑い者にする発言をしていると見ています。

女性の自民党議員である野田聖子さんが「女性は野党に出して頂いて」と言うぐらいですから、自民党にいる女性議員は男性議員と"上手くやる"ことが求められるのでしょう。被害者が加害者になっている。辛い。

「女性は野党に出して頂いて」 男女平等、遅れる政界:朝日新聞デジタル

この、ある特定の層・人物に対して差別的な発言をする人間がいて、周囲に面白がる人間がいるという構図は、皆さんご存知の通り、典型的ないじめの構造です。

子どもを守り育てるための体制づくりのための有識者会議(第2回)配付資料 [資料5−7]−文部科学省

 いじめの構造(いじめの4層構造)森田洋司1986年

○ いじめる生徒
○ 観衆(はやしたてたり、おもしろがったりして見ている)
○ 傍観者(見て見ない振りをする)
○ いじめられる生徒

 いじめの持続や拡大には、いじめる生徒といじめられる生徒以外の「観衆」や「傍観者」の立場にいる生徒が大きく影響している。「観衆」はいじめを積極的に是認し、「傍観者」はいじめを暗黙的に支持しいじめを促進する役割を担っている。

ここで書かれている通り、ハラスメントが維持継続されるのは、直接的な加害者だけではなく、それをもてはやす「観衆」や、見てみないふりをする「傍観者」がいるものです。森喜朗さんや杉田水脈さんの周囲で差別的な発言を笑った人たちが「観衆」で、もちろん、これらの発言を見て見ぬ振りをする「傍観者」もたくさんいることでしょう。

この話はもう何度もしていますが、私はこの世からいじめでも差別でもDVでもハラスメントは撲滅すべきだと考えています。だから、私が目にしたハラスメントの「傍観者」には私はならないようにしています。

大分県の小学校のバレークラブの件でも書いたし、

ハラスメントに寛容な観衆・見て見ぬ振りをする傍観者がハラスメントを維持・拡大させる - 斗比主閲子の姑日記

私は、ハラスメントはいかなるものであっても悪であり、撲滅されるべきものと考えています。他人へのハラスメントに気付いたら観衆にならないことはもちろん、傍観者にもならないようにするというのは、簡単ではないもののできる限り心がけたいと、このニュースを読んで改めて思った次第です。 

小島慶子さんの夫への接し方でも書きました。

「そんな人は尊敬できない。お願いだから離婚して」……小島慶子さんの夫への振る舞いは私には"モラハラ"に見える - 斗比主閲子の姑日記

本来は他人の家庭のことですから外野の私がどうのこうの言うものではありません。ただ、ご本人が雑誌やWebに誰もが見える形で公開しており、私の目の前に"暴力"が曝け出されているのを見て何も言わないというのは私の中での正義に反すると思い、あえて書いています。総合的俯瞰的と何度も繰り返す人間に不誠実・不合理を覚えるのと同じです。

 本人に悪意がなくて冗談のつもりであっても、日本でまだまだ男女平等が進んでいない状況をさも女性側に原因があるという言説を、よりによってオリンピックを開こうとする人間が公の場で言ったなんて、私は見過ごせません。

諦めの気持ちで「日本の偉い人はこんなもので、受け入れなければならない……」って「傍観者」でい続けたら、日本はいつまでたっても女性差別が存続され続けますから、自分が「傍観者」とならないように、森喜朗さんの今回の発言を批判しておきます。

今日はこんなところです。