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我が家では、子どもが自分の"意思"でハマるものを選べるように、本棚に雑多な本を置いています。人間、自分が選択したものは良いものと思いがちなので、それを利用して、子どもが暇なときに"たまたま"手に取って、それにハマるという構図を作るわけです。図書館の推薦図書の家庭版のようなもの。
ただ、ジャンルはその子がちょっと背伸びしたらハマりやすいものを選ぶようにしているので、スミソニアン協会監修の百科事典のような硬派なものから、
自治体によっては有害指定図書されている『アリエナイ理科ノ大事典』みないなものまで幅広く置いています。
ちなみに、どちらも半年以上置いていたら、あるときに子どもがハマってくれました。
コツは親が読ませたい本を置くのではなく、子どもの今の発達状況・好奇心を考慮した本を置くことですね。親にとって良いかどうかとか、どうでもいいことなので。あとは、とにかく待つこと。子どもが"今"興味を持っていないからといって本棚から撤収しないで、置いておくこと。
そういう本が我が家の本棚には100冊ぐらいあるわけです。漫画を含みます。
半年前には、このやり方で子どもが星新一にハマったことを紹介しました。
私の子どもが星新一の小説にハマるまでに読んできた本の紹介、あるいは本好きの育ち方 - 斗比主閲子の姑日記
色々読んできているので限定はしきれないものの、絵本の読み聞かせをし始めた時期からすると以下の順番でスモールステップが構築できたと考えています。
- ドラえもん(漫画)
- かいけつゾロリシリーズ
- 科学漫画サバイバルシリーズ
- ジュニア空想科学読本+空想科学読本
- ドクターストーン(漫画)
- 5分後に意外な結末
- 星新一 ←いまここ
私はこのまま星新一からSFにハマって、テッド・チャンにたどり着くと面白そうだと思って、SFの本を大量に置いておいたんですが、結局、星新一の出版されている本全部と、短編のSFを数冊読んだぐらいで、SFにはドハマリはしていませんでした。
同時に、星新一が読めるぐらいだから、現代のライトノベルは読めるようになっているんじゃないかと思い、成熟度合いも考慮して、いくつかのライトノベルを置いておいたんですね。もともと児童文庫はそれなりに読んでいましたし。
絵本・漫画読みの子どもの次のスモールステップとしての児童文庫(ジュニア空想科学読本、星のカービィ、若おかみは小学生、IQ探偵ムーなどなど) - 斗比主閲子の姑日記
そうしたら、置いてあったライトノベルのうち、西尾維新さんの『化物語』(上巻)を子どもが読み始めたわけです。気付いたら上巻を読み終わっていて、「面白いから続きない?」と聞いてきた。
※化物語のAudible、神谷浩史さんが朗読している。アニメそのままじゃん!
『化物語』といえば、アニメ制作会社のシャフトが10年ちょっと前にアニメ化したのでご存知の人も多いと思います。高校生の男女が怪異に巻き込まれる話です。主人公の独白と、登場人物同士の会話が非常に多い。小説は二段組の構成で、挿絵はほぼなく、とても分厚い。この子の発達度合いからすればまだまだ難しいと思っていた作品の一つです。
ただ、本人がハマったとなれば話は別です。
「面白いなら、どうぞどうぞ」ということで、あとは恒例の、存在するもの全部網羅するという方式で、ファーストシーズンの『化物語シリーズ』の『化物語』(下巻)、『傷物語』、『偽物語』(上下巻)、『猫物語(黒)』を置いておきました。今、子どもがじわじわと読み進めていっています。
前から言っているように私は暇潰しで子育てをしているわけですが、私が想像していない方向に子どもが興味を示すのは見ていてとても面白いです。
化物語シリーズは、私たち夫婦も10数年前に楽しみましたから、そこに子どもが"偶然"たどり着いたのは、非常に興味深い。言うまでもなく、私たち夫婦がよく知らないけれど、子どもが好きになる可能性がある本も置いてあるので、完全な"偶然"ではないけれど、"必然"でもないわけです。あと、この子がこういう興味の方向性に行っているだけで、他の子が踏襲しているわけでもありません。
思えば、私が、赤川次郎さんの『三毛猫ホームズシリーズ』を読み始めたのも、村上春樹さんの『ノルウェイの森』をドキドキしながら手に取ったのも、親が本当にたまたま本棚に置いていたのを何気なくチェックしたことがきっかけでした。
「家には本があるのに子どもは本好きにならない」という言説をしばしば見かけますが、それで困っている人は(本気で困る人はいないでしょうが)、漫画でもゲームの攻略本でも児童小説でも伝記でもライトノベルでも、はたまた、ゲーム攻略wikiを印刷したものでも、親が中高生の頃に書いた黒歴史の小説でも、自分の子どもが興味を持ちそうな分野の読み物を、子どもが落ち着いて過ごす場所に、雑多に置いて、ひたすら待つことを私はお勧めします。
「子どもが本を読んでくれない」というのは、えてして、「子どもが(親が読んでいる/親目線で子どもが読んでほしい)読み物を読んでくれない」ということだと私は見ています。