斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

「アルコール依存症」の人相手でなくても、話すときは「私」を主語にするのは有効

厚生労働省のサイトに掲載されていた依存症啓発漫画が話題になっていました。

依存症啓発漫画 第1話

全体的にとても良かったです。何が良いかって、アルコール依存症だけでなく、薬物依存症やギャンブル依存症も紹介されるなど範囲が広いのと、あるあるな誤った対処が優しく諭されつつ、嫌な人間が登場しないところですね。

現実はこんなに周囲に恵まれていることも必ずしも多くはないので、「こうはならないだろう」という感想を抱くこともあるんでしょうが、厚労省のサイトに掲載される漫画としてはこれが最適解だと私は思いました。

で、この漫画の中にアルコール依存症の人との接し方のTipsがいくつか紹介されています。例えば、邪険に扱うのではなくまず挨拶をしようとか、お酒を飲んでいないシラフのときに話しかけようとか、良い面も伝えるとか。その中の一つが、表題にある話すときは「私」を主語にしようというものです。

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依存症啓発漫画 第6話のp.15から

この主語を「あなた」にすると攻撃的になるから、「私」にすると攻撃的になりにくいというのは、確か水島広子さんの本でも紹介されていたと記憶しています。

女子の人間関係

女子の人間関係

  • 作者:水島広子
  • 発売日: 2017/06/16
  • メディア: Kindle版
 

※この本にも書いてあったけど、他のにもあったはず 

私も、「私」を主語にして書いたり、話したりするのは日々の習慣にしています。むやみに他人を傷つけずに、できるだけ自分に協力してもらうという功利的な目的からですね。

例えば、

「なんであなたは分かってくれないの!?」

は、

「私がこう考えていることを理解してもらえると嬉しい」「私の言いたいことが伝わっておらず困っている」

と言い換えたり、

「普通はそんなやり方はしない」

は、

「私はこういうやり方をしてもらえると嬉しい」

みたいに、主語を全部自分に言い換えちゃうわけです。私のブログでもしばしばこういう書きぶりにしています。無駄に敵を作る必要はないし、優しい文体のほうが読み手にもフレンドリーですしね。

この種のコミュニケーションに慣れた人、例えば我が家の子どもたちは親の手の内を完全に明かしているため、私から主語を「あなた」から「私」で話しかけられたときは、「きっと自分たちに何かお願いしたいことがあるんだろう」と思われることはありますが、それでも効果はしっかりあります。分かってたって、「あなたのここがダメ!」と言われるより、「私はこうしてもらえると嬉しいな」と言われたほうが気分は良いものです。

他に、シラフのときに話すようにするというのも、相手がイライラの真っ最中や超疲れているときやさめざめと泣いているときに、あえて相手にやってもらいたいことを話さないほうがいいのと考え方は同じです。

12時間外で働いて帰ってきて早々に「あなたの今朝のゴミ出しについてお願いしたいことがある!」というのは、相手に聞く耳を塞ぐとても有効な方法というのは、試した人、試された人からすればとても理解できるでしょう。

私が、家族の体をマッサージしながら、お願いしたいことを話すのをお勧めしているのもこれが理由です。一番相手が聞く耳を持つときにメッセージを伝えたほうが効率的です。私はよくパートナーや子どもの足をさすさすしながら、「やってくれると嬉しいことがあるんだよね」と伝えるようにしています。喧嘩腰で怒鳴り合うのは時間とエネルギーの無駄です。相手は正さない。

以前に、発達障害傾向のある児童向けの子育て方法は、発達障害の傾向がそれほどない子育てでも有効なところがあると紹介しました。同様に、依存症患者の人向けのコミュニケーション手法がそうでない人向けに有効なところはあります。

問題が起きているところ、簡単ではないところでは研究のリソースが費やされて、エビデンスがある対処方法が確立されますからね。完全なエビデンスはないとしても、特殊ケースから一般ケースに手法を応用して対応してみるというのは、まだ手がかりがあるだけ全然楽です。

「依存症なんて自分には縁が遠いな」と思っていても、もとの漫画で紹介されている内容は非常に多くの学びがありますから、 ぜひ読んでみてください。サイトで読みにくい、何度も読みたいということであれば書籍版もあります。

だらしない夫じゃなくて依存症でした

だらしない夫じゃなくて依存症でした

  • 作者:三森 みさ
  • 発売日: 2020/05/15
  • メディア: Kindle版
 

※読んでいて、線路に落ちた、痴漢をした私のアルコール依存症の知人を思い出しました。一緒にお酒を飲むのは私も共犯になりそうで怖かった