子どもを預けてクリストファー・ノーラン監督の最新作『TENET テネット』を観てきました。
映画『TENET テネット』予告 2020年9月18日(金)公開
以下、例のごとく、ネタバレ一切なしでのレビューです。期待値にも影響を与えないレビューにするつもりですが、私がコントロールできるものでもないので、ご自身への期待値への影響も受けたくなければ、レビューを読まずに観に行ってください。
映画を観終わった後の感想
映画を観終わった後は、良い意味で、三半規管がおかしくなって、めまいがして、胃がムカムカしました。また、帰り道での自動車の動きや人々の動作に物凄く違和感を覚えました。
喩えると、10時間ぐらいぶっ通しでゲームをプレイした後の感覚に近い感じですね。別のルールで作られた世界に没入する体験を長時間したために、リアルの世界の法則とのズレを感じるやつです。
150分と1000円強でこの感覚を味わえるわけですから、その価値は十分にあったなと帰り道に思いました。
映画を観ている最中の感想
劇場内が振動するぐらい巨大な音が流れていました。『インセプション』と『ダンケルク』と同じ。ちょっと大きすぎるぐらい。確かにこの音響は映画館でないと体験しがたい。
ストーリーは、状況の察しが良い登場人物たちがテンポ良く会話とシーンを進めるため、ついていくのにはかなり苦労しました。
私は平均的な日本人の上位5%ぐらいの物語理解力があるという実感値なので、私が読解に苦労したということは、日本人の半分ぐらいはチンプンカンプンであってもおかしく気がします。その意味では『三体』に近いけど、『三体』は読み直せる分だけまだ楽。
「『三体』の意味や雰囲気は、一般大衆にはじゅうぶんに楽しめませんからね」(劉慈欣『三体』p.249より) - 斗比主閲子の姑日記
物語の重要な設定を活かした伏線はちゃんとそこここに設置されています。「女?」「顔?」「担架?」「ミラー?」「黒幕?」「記録?」と、私が引っかかった場所は後で伏線が回収されていました。ただ、ヒントは少し難しめなので、映画のお作法やロジックを詰める習慣がないと厳しいかもしれない。
そんなわけで、ご自身が読解力に乏しいと自己分析されている方は、誰か後で解説をしてくれる人と一緒に観に行くといいですね。
ちなみに、映画を観終わった後に、上に貼った予告を見ましたけど、ちょっとミスリーディングな印象です。「第三次世界大戦……!?」って思いながら観ると、「え、そんな動機でそんなことが起きることを危惧している?」と若干ギャップに当惑すると思う。悪役の動機のあんまりさは『インセプション』に似ていて、日本のセカイ系のライトノベルっぽいなと後から思いました。
ああ、忘れてた。アクションシーンはかなり良かったので、ストーリーを理解できていなくとも、斬新なアクションの構図だけでもかなり楽しめられるはずです。こんな景色見たことないっていうのがかなりあった。
映画を観に行こうとした理由
映画館の換気機能は素晴らしく新型コロナウイルスへの感染リスクは非常に低いとは分かっていたものの、食指が動く映画にたまたま出会わず、劇場版『SHIROBAKO』を観てから半年間映画館に行っていませんでした。
予めお伝えしておくと、私は映画を観る前の期待値への影響がないように、メディアで積極的に映画の情報を受け取らないようにしているため、私が出会わないというのは私の観測範囲の問題であり、別にこの半年間で私が観るに値する映画がなかったというわけでは、たぶん、ありません。
『TENET』は、町山智浩さんが「クリストファー・ノーラン監督が劇場で公開されることに拘りを持っていた」みたいなことを言っているのを聴きつけ、クリストファー・ノーラン監督作品は、これまでほぼほぼ映画館で観てきたので、「じゃあ、映画館で観ようかな」と思ったわけです。
デートでダンケルクを観る是非について - 斗比主閲子の姑日記
何となく、作品への賛否の差があるのと、難しそうだということはたまたまネットで目に入った情報から察して、それ以上は情報を得ることなく、予告も観ることなく、映画館に観に行きました。
締め
以上、『TENET テネット』のレビューでした。
「このシーンはどうやって撮影したんだろう?」というのがたくさんあったので、 メイキング映像が公開されたら見たいなと思いました。
私にとっては久々の、良い映画体験でした。映画、無くなってほしくないな。
※こういう裏話の本を読むのも良さそう