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新型コロナウイルスの蔓延に伴い、GIGAスクール構想が一気に推進され、小中学生へのPCやタブレット配布と授業への利用がかなり進展しました。
私は2年半前に次のような記事を書いたように、
教科書や宿題を配って満足している学校・教育委員会は、今すぐに文科省設置のICT活用教育アドバイザーに助言を受けるべき - 斗比主閲子の姑日記
かつては私が住んでいる自治体の遅れっぷりに苛立ちを覚えていました。
現在では、我が家の子どもにも学校からPCやタブレットを配布されており、授業での活用も徐々にではありますが、進んでいます。
※文科省のリーフレット『GIGAスクール構想の実現へ』から。この実現はかなり難易度高い……!
当初想定の授業での活用はまだやれる余地はあると思いつつ、私が個人的にGIGAスクール構想でのPC・タブレット配布に感謝している理由として、「子どもが規制突破を経験してくれた」というのがあります。
ご存じのように、学校から配布されるPC・タブレットには何らかの規制があります。規制の種類はそれぞれ。
GIGAスクール構想の現在地、自治体の8割がクラウド機能を制限 | TECH+(テックプラス)
我が家の子どもたちに配布されたPC・タブレットにも規制があり、その内容は刻々と厳しめに変化しているように見受けられます。そんな中で、我が家の子どもは、どうにか規制突破方法を実行している模様。
この手の規制突破については、苦々しく思う先生や保護者が多いんじゃないかと思いますが、我が家としては願ったりかなったりで、大変ありがたいと考えています。
第一に、誰かが設定した規制を突破するプロセスで、PC・タブレットのハード上の制限やネットワークの抜け穴の存在を自然と学ぶことになるからです。
実際に、我が家の子どもを見ていると、一番下の子どものITリテラシーがここ1~2年で大幅に向上しました。他の子どもにはPCを自由に使えるように渡していたものの、一番下の子どもはまだ早いかなと思っていたのを、GIGAスクール構想で配布されたPC・タブレットの規制突破をガシガシやっていて、気付いたら、ハードとネットワークの知識がかなり身に付いているのを確認しています。
第二に、規制突破の経験が、誰かが情報規制してきたときにそれを回避してバレずに情報収集することの疑似体験になっているというのがあります。
一番下の子は、学校の友達と規制突破方法を情報交換していることを嬉々として教えてくれるんですが、この1~2年で、規制の穴が埋められているのも経験しています。私からは「先生にバレたら規制を埋められるから、情報交換のやり方は上手くやるといいよ」とアドバイスしたら、大層納得していました。
ちょっとここからレベル感が変わるので、言うまでもなく、お好きな人だけどうぞなんですが、皆さんご存じの通り、世界では権威主義国家が増加しています。
そして、その手の国では国家による情報統制が引かれていて、インターネットでさえ、国外の情報を十分に入手できなかったりします。日本の周辺国だと、北朝鮮、中国、ロシア、ミャンマーがその代表ですね。
※Economistの2022年2月公表時点の民主主義指数。青いほど民主主義的、赤いほど権威主義的。A new low for global democracy | The Economistから
そのような国で政府による偏向報道以外で、自分から情報を入手しようとすれば、規制突破をせざるを得ません。時には、自身や家族の生命が脅かされるリスクを覚えつつ。
ロシアでは若い人はYoutubeで情報収集しているし、
ウクライナに対する戦争を始めてから数カ月がたった今も、ロシア政府は市民にユーチューブ(YouTube)の視聴を許している。ウクライナでの戦闘に関してロシア人が見聞きするものをコントロールしようとする中で、明らかな抜け穴となっている。
中国ではVPNを使って欧米メディアやアプリが利用されています。
「もう中国に帰るつもりはありません」警察に1ヶ月拘禁されたことも…《21歳・青年活動家》が語った「思想弾圧のリアル」 | 文春オンライン
中国では天安門事件に関する情報のほか、TwitterやYouTubeなど西側メディアは検閲によって遮断されている。それでもVPNと呼ばれる迂回回線(有料のものが多い)を使い、アクセスすることは可能だ。盧さんはVPNを使い、中国国内では閲覧が禁じられている欧米メディアの情報を読み漁った。仲の良い友人たちと、熱っぽい政治談義を語り合うこともした。
一方、現在の日本は、記者会見や日本記者クラブの仕組みがイケてないという問題はあるにせよ、これらの国とは大きく異なる状況です。自由に国内外の情報にアクセスできる。
ただ、私としては世界的に権威主義国家が増加する中で、将来的に日本が同じような状況に陥ることがまったくないとは考えていません。国民による情報アクセスを制限しようとする政治勢力は、日本では右派でも左派でも一定数いますしね。
だから、情報収集を規制するのを突破して情報を得るという経験を、GIGAスクール構想で配布されたPC・タブレットで子どもが経験してくれているのが大変ありがたいと思っています。疑似体験。
もちろん、ネットde真実的に、インターネット経由で得られる情報がすべて正しいなんてことはありません。並行して、ネットリテラシーがいかに重要かは折に触れて話しています。今、子どもたちに大人気の、西村博之さんの「嘘を嘘と見抜けない人はインターネットを使うのは難しい」という言葉は効きますね。
大物ツイッタラー達が次々騙されてんの草
— なす (@ruraru44) 2023年1月8日
ひろゆき…嘘を嘘と見抜けない人にry pic.twitter.com/jzfC40L9FY
※そんなこと言っている人も嘘を嘘と見抜けないという点含めて
自分が選んで辿り着いた情報だからこそ間違いがないと考えてしまうこともあります。この辺はITリテラシーというより、情報収集リテラシーに近い感じ。ファクトフルネスの10のルールを参照。
話があっちゃこっちゃ行きましたが、結論は繰り返しで、我が家的にはGIGAスクール構想に感謝ということです。
ちなみに、学校から配布されたPC・タブレットと同機種を我が家では実験用に購入済みです。規制がされている機種と、そうでない市販の普通の機種とで、できることにどのような違いがあるかを、親も子どももリアルに確認できるんですよね。もともと配布用のPCは5万円程度という制限があるので、中古でヤフオクとかでかなり安価に購入できます。お勧めです。
以上、今日はこんなところです。ではでは!