斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

安倍政権の7年8ヶ月は20~30代にとって職が増え、給与が増え、株価も好調で、素晴らしい経済環境だった

8月28日に安倍さんが首相を辞任することを明らかにしました。

【詳報】安倍首相、辞任「月曜日に自分一人で判断した」 [政治タイムライン][安倍首相辞任へ]:朝日新聞デジタル

記者会見の場もやけに少ないなと思っていたら体調不安説がメディアに流され始め、同時に憲政史上最長という記録に到達という話題も出ていたので、何となく辞めるんだろうなと想像していたのですが、辞任のニュースを聞いたときには、「本当に辞めるんだ」と少し驚きました。スポーツ選手が引退するならまだしも、首相が辞めるというのは支持率の低下が原因というのが大半でしたから。

安倍さんが首相になってからの7年8ヶ月については、その前の民主党政権のこともそうだし、首相時代の成果(があること、ないこと)も色んな人が色んな媒体で書いています。次の首相が誰になるか、そして安倍政権の政治スタイルを継続するかどうかも盛り上がっている。個人的には、次の自民党の総裁の任期は来年9月までだし、自民党の有力な派閥からの出馬がないのだから、本番は来年なんだろうな(次の首相はあくまで中継に過ぎない)と思って眺めています。

話は変わりまして、私は、この7年8ヶ月の間、地方選挙でも国政選挙であっても、常に与党ではなく野党候補に投票し続けました。特に、年齢はできるだけ若く、そして、男女であれば女性に投票するようにしていました。

このような投票行動をする目的は、日本の多様性をできるだけ広げることです。経営の現場で多様性を広げるのは個人としてできることは限定的ですが、選挙だったら投票すればいいだけで簡単ですからね。安倍政権の7年8ヶ月の後半は、国会軽視、文書破棄、統計改ざんなどなど酷すぎると思い、野党に頑張ってほしいという応援の気持ちもありました。

一方で、安倍政権の支持率は小泉政権ほどではないにせよ高く安定していたし、自民党の支持率も安定していました。私の投票行動は決してマジョリティではないなと、この7年8ヶ月は思い続けていました。

この支持率の背景として、若年層の支持率の高さがしばしば挙げられます。

若年層を重視する安倍政権(大機小機) :日本経済新聞

なぜ首相が若年層を重視するのか。ひとつ考えられるのは、若年層での内閣支持率や自民党支持率の高さだ。日本経済新聞の直近の世論調査で参院選の投票先を聞くと、18~39歳は自民党が50%なのに立憲民主党は5%どまり。

内閣支持率も18~39歳は6割台で不支持率の3倍。60歳以上の支持と不支持が4割台で拮抗するのと対照的だ。

なぜこんなに若年層の支持率が高いのかという分析も色んな所でされていますが、ひとえに仕事が増え、給与が増えているというのはあるかと思います。

まず仕事については、(若年層だけに限定しませんが)有効求人倍率は2009年を底に新型コロナショックが起きるまでは上昇し続けていました。

f:id:topisyu:20200904023834p:plain

図1 完全失業率、有効求人倍率|早わかり グラフでみる長期労働統計|労働政策研究・研修機構(JILPT)

就職内定率も同様に改善し続け、ここ数年は高止まりしています。

図録▽就職内定率の推移(大卒)

若者の仕事がたくさんあったわけです。

そして肝心の年収も、平均年収は20~30代の男性では上昇し続け、

f:id:topisyu:20200904024446p:plain

※大和総研 家計の実質可処分所得の推計(2011~2018年) p.7

女性は年齢関係なく上昇し、

f:id:topisyu:20200904024503p:plain

※大和総研 家計の実質可処分所得の推計(2011~2018年) p.8

さらに女性の正規就業率も非正規からの転換で特に30前後で上昇しています。

f:id:topisyu:20200904024906p:plain

※大和総研 家計の実質可処分所得の推計(2011~2018年) p.10

私は、この7年8ヶ月で新卒採用市場を面接官として、中途採用市場を求職者及び面接官として過ごしてきましたが、企業側の採用の難易度は年々上がっていった(求職者としては企業・処遇を選べるようになった)というのは肌身で感じていました。特に去年一昨年あたりは凄かった。採用する側としては、基準を落としても予定した人数の採用がなかなかできなかった。

ダメ押しで、日経平均株価も1万円から2.2万円まで急成長していました。

f:id:topisyu:20200904030443p:plain

日経平均 :世界の市況 :マーケット :日経電子版

職はあるし、給与は年々上がるし、そして所属している企業の株価が上がれば、かなり気分は良いですよね。定額給付金10万円でたくさんの若年層が証券口座を開設したというのは分かりやすい展開です。

私は就職氷河期世代で、内定獲得にも苦労し、デフレが進み給与の上昇も体験しにくいところがありました。10年前に、高度経済成長期を経験している人から、「年々給与が増えるあの経験を今の若い人が経験できないのは可哀そう」と聞いたのはとても印象的で今でもよく覚えています。10年前の2010年は、リーマンショック後で景気は本当にメタメタでした。

私は今後も多様性を意識して女性候補も多い野党候補に投票し続けるはずです。一方で、この安倍政権下で経済的に良い経験をした若い世代が引き続き自民党に期待して投票し続けるというのはとても自然なことだと思います。

経済的に苦しむのは避けられるに越したことはありませんし、私は「若い頃の苦労は買ってでもせよ」という言葉は大嫌いなので(人間、苦労すると他人にも苦労を経験させようとしがち)、コロナ禍で舵取りは難しいでしょうが、政権与党には経済は良い状態を維持できるよう頑張っていただきたいなと願っています。

私のような野党支持者がこんなこと言ってもまったく響かないでしょうけどね。