斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

韓国ソウルの不動産市況が見るからにバブルで、家計債務が急増していて韓国経済が心配

韓国大統領の支持率が過去最低水準というニュースを読んでいて、

韓国大統領の支持率 就任以来最低の4か月前と同じ39% | NHKニュース

 韓国のムン・ジェイン(文在寅)大統領の支持率は、就任以来最低となった4か月前と同じ39%になりました。不動産価格の高騰に加え、法相と検事総長の対立による国政の混乱が逆風となっています。

法相の話は以前からあったよなーと思いつつ、不動産価格の高騰って何だろうと調べてみたら、かなり危険な状況だということが分かったので、さくっと書いておきます。

ソウルの住宅価格は2017年以来、50%以上上昇

『82年生まれ、キム・ジヨン 』や『パラサイト 半地下の家族』を見ていればご存知の通り、韓国ソウルの不動産価格はかなり高い印象を受けますよね。

ソウルは韓国の人口の1/5が住む街だから高くても当たり前だと思っていましたが、調べてみるともともと高いのがさらに高騰しているようです。次の東洋経済オンラインの記事では大統領の政策の失敗により住宅価格が上昇しているという説明があります。

アングル:ソウル住宅価格高騰、遠のく中流の夢と高まる政権批判 | ロイター

文在寅(ムン・ジェイン)政権が20を超える住宅価格鎮静化策を導入したにもかかわらず、調査会社ナンビオによると、ソウルの住宅価格は2017年以来、50%以上も上昇した。上昇スピードは世界一だ。

他のニュースソースを見てもソウルの住宅価格は実際に50%以上上昇しています。

Infographic: Property Prices Soar in Seoul | Statista You will find more infographics at Statista

一方で、韓国ソウルの人の収入がこの3年で1.5倍になってはいないのもご存知の通りなので、これで気になるのは家計債務がどれだけ膨らんでいるかです。収入の伸び以上に不動産価格が伸びてるなら、借金が増えるものだから。

世界最高水準の家計債務

調べてみたら、対GDPでの家計債務が直近で世界最高水準にまで上昇していました。

「世界最高水準」の韓国の家計負債、もはや限界に(ハンギョレ新聞) - Yahoo!ニュース

 調査対象国中6位だった。韓国より高い国は、独特の住宅金融構造や莫大な年金のため直接比較が難しい北欧3カ国と、その他にはカナダ、スイスのみだった。主要国では米国が75.6%で、英国(84.4%)、日本(57.2%)、中国(58.8%)なども韓国を大きく下回った。

問題は現状が高い水準にあることだけではなく、2000年代の50%から徐々に上昇し2015年には80%だったのがここ5年以内で急上昇していることです。こんな動きは家計債務比率が高い国でも韓国だけです。

当たり前ですが、不動産価格が高騰し、それを借金抱えて購入するので家計債務比率が上昇しているのが大きな要因です。

足りなければ作ればいいがパンのようには作れない

この状況に対し、現在の韓国政府はもっぱら既存の住宅への課税やローンを借りにくくすることで住宅価格の高騰を抑えようとしているのですが、なぜかそれが逆に働いて、どうにかして規制を掻い潜ってマンションを購入する人が後を立たないようです。

需要が多すぎるならマンションを作ればいいのではないかと思うわけですが、

金賢美国交相「供給拡大? マンションがパンなら徹夜して作るのに」-Chosun online 朝鮮日報

作れるんなら作るというリアクションを国交相はしています。

マンションはパンほど簡単ではないものの、フロア数+数ヶ月で作れるものですから(≒10階建てなら一年とちょっと)、今から作ろうと思えばある程度期近なところでの供給数増加は可能です。では、なぜしないのか。

マンションの供給を増やさないのは、前政権時にマンションの供給過剰が懸念されていたことは確実にあると思われます。以下の記事のように2016年には作り過ぎだという話があった。

焦点:韓国住宅ブームに供給過剰の影、家計債務の膨張懸念も | Reuters

そして、皆さんご存知の通り韓国の合計特殊出生率はOECD加盟国最低で1を下回っていて、今年の夏頃から人口が純減していっていますので、普通に考えれば住宅価格が高騰するのは理に合いません。ソウル限定でも人口は減ってる。必ずしも海外のように外国人が利回りを求めて買っているわけでもなさそうですし。これから確実に住居が余る。

そんな状況で、マンションの供給量を増やせば需要を満たせてしまった結果、今度は急激に住宅価格が低下し、一方で世界最高水準の住宅ローンは残りますから、破綻する家計が続出すると容易に推測できます。

私の推測が単なる個人の妄想でないのは、2017年に中央日報が中央銀行である韓国銀行の分析からでも分かります。

韓銀「高齢化でも日本のような不動産暴落はない」(1) | Joongang Ilbo | 中央日報

2017年当時でもすでにバブルの様相があると疑問視されていた韓国の不動産市場で、なぜ日本で起きたようなバブル崩壊が起きないかという理由として、

①韓国不動産市場の上昇率が日本ほど急激ではない、②住宅供給量が高い水準でない、③韓国は一戸建てより取引量が多いマンションが中心という3つが挙げられています。繰り返しですが、韓国銀行の分析。

しかし、ご存知の通り、2020年現在の韓国、ソウルの不動産上昇率は日本のバブル期並の水準ですし(⇔①)、今供給量が多いのは低層住宅です(⇔③)。この状況で住宅供給量が急激に増えれば(⇔②)、韓国銀行の分析から逆説的に韓国不動産の暴落が起きてもおかしくない。

締め

韓国の大統領というのは任期の5年の後半で必ずレームダック(死に体)状態になります。そして、どの大統領も訴追され、有罪になる。

現在の大統領はその訴追をする検察の改革をしようとして韓国国民の支持を失っています。そして、不動産価格の高騰でも支持を失っている。

私の目から見れば、少子化が進む韓国で過剰な住宅供給というのは狂気の沙汰ですし、現政権が行っている住宅への課税やローン規制は非常にまっとうに見えます。

そんな中で、それでも不動産を買おうとする韓国ソウルの人々は、恐らくは、コロナ禍前のフランスパリでも当然だったように、そしてバブル崩壊前の日本でも同然だったように、「不動産は高くなり続けるのだから今買ったほうがいい」という意識があるんじゃないかと推測します。

ロイターの記事にあるように、規制逃れのために、離婚をしたり、妻に仕事を辞めさせたりするのは明らかに異常なのに。韓国独自の不動産制度であるチョンセ・ウォルセも影響しているかもしれない。

どんな国のどんな資産でも、その資産から得られる利益がその資産が保有するリスクを下回っているにも関わらず(リスクに合わないリターンにも関わらず)、その資産の価値が上昇し続けたら、いつかバブル状態になり崩壊します。

もし、韓国国民が今の住宅価格高騰を憂い続けながら不動産を買い続け、韓国の政権が支持率低下に耐えきれなくなって、パンを作るように住宅供給量を一気に増やすような政策をしてしまったら、恐らく、バブルが顕在化し、崩壊するんじゃないかと思います。それで、また、政治に責任が求められ、大統領が何かで訴追される……。

私がここ二日で気になって調べたことなので、にわか知識でどこかに穴があり、韓国政治と不動産価格が今後も安定するということで、実は何の問題もない状態かもしれません。

ただ、収入がそこまで伸びず、そしてハイパーインフレでもないのに、不動産価格が3年ちょっとで50%以上も上昇する地域で住んでいたら、通常の感覚ではいられないと想像できます。何事も起きなければいいのですが……。

※ただただキツい。