斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

韓国の合計特殊出生率は世界最低だけど、2024年に底を打ち回復する予想だから、日本政府には大いに学んでほしい

私は韓国の合計特殊出生率に注目しています。

韓国首都ソウルの合計特殊出生率が過去最低の0.64(全国0.84)に - 斗比主閲子の姑日記

理由は、OECD加盟国(どころか世界全体)でも最低の合計特殊出生率を毎年更新し続けているからです。

韓国の出生率、22年は過去最低の0.78 OECDで最下位 - 日本経済新聞

台湾(2400万人)、シンガポール(550万人)も1前後で世界的に低いですが、韓国の水準(2022年で0.78)は圧倒的に低い。

地域的には香港(750万人)も0.7-0.8ぐらいで同じくらい低いのですが、対比するために、人口1000万人のソウル特別市の合計特殊出生率を見ると、0.59です。ソウルと同じぐらいの人口の東京23区の合計特殊出生率は1ぐらいですから、やはり、韓国、そして、ソウルの合計特殊出生率の低さは際立っている。

※出典は韓国統計局

韓国の合計特殊出生率がこれだけ低くなったのは、2015年頃からのことです。

※出典は韓国統計局

この背景には、日経の記事にも触れられていますが、韓国の不動産価格の高騰があります。

例えば、ソウル特別市のマンション価格は2000年対比で2010年で2倍、2022年で5倍ぐらいになっています。これだけ不動産価格が一気に上がれば、所得がいくら上昇しようが間に合いません。何しろ、この間のソウルの賃金上昇率は2倍程度ですから。

ちなみに、一家庭あたりの教育費の支出も2000年からの20年で2倍以上になっています。賃金が上がっても、教育費が同じぐらい上がり、それ以上に不動産価格が高騰しているというわけです。

このように、結婚したとしても支出が大きすぎるために複数人の子どもを持てないのが韓国の現状になります。合わせて、韓国では婚姻数自体も急減しているので、結果的に合計特殊出生率も急減することに繋がっています。

国が違えば、色んな数字が変わって当たり前ではあるものの、私は韓国の状況から日本は政府は学ぶことが大いにあると思っています。

例えば、不動産価格の上昇は、日本でも主に都市部を中心に高騰してきている状況があります。東京23区ではここ10年で2倍ぐらいになっています。

アジア富裕層が吊り上げ、マンション急騰の脆弱 | 不動産 | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース

教育費だって韓国ほどではないけど一家庭の教育費支出は20年で1.5倍ぐらいになっていますし、婚姻率も韓国ほどではないけど下がっている状況です。

日本が韓国の手前の状態で、韓国は地理的には当然近く、人種・文化も近い面があるわけですから、韓国がどのように対処をしていくかというのは、日本にとって重要なケーススタディです。

韓国統計庁の2021年12月の予想では、実は2022年度の0.78という過去最低の数値は予想通りで(予想では0.77)、2024年には0.70まで下がるとしています。で、ポイントは、この0.70を底に反転し、2035年には1.18まで戻ると予想していることで。

韓国では、不動産価格の高騰を是正する施策はかなり色々やられていて(投資目的の購入をしにくくさせたり、供給戸数を増やしたり)、加えて、教育費高騰への対応も、直接的な所得補助も行われていたりします。

これだけ多くの対策を並行してしているとどれがどれだけ効いたのかが分かりにくいものの、韓国は公的な統計情報の収集・公開が日本より非常に充実しているので、一定の分析はできるんじゃないかと思います。どうやら、現金給付系は効果薄めっぽい。お金があれば、教育費に回すでしょうしね。

韓国政府が手厚い子育て支援策を決めたが、出生率向上は今度も難しいか |ニッセイ基礎研究所

日本政府は異次元の少子化対策を行うと言っているものの、EBPMなのかがちょっとよく分かりません。

日本国内で、子どもを持つことの障害になっているものを列挙し、それにいくらぐらい投資をしたらどれくらい出生率が改善する可能性があるかを、日本国内での各自治体での差であったり(最大は沖縄、最低は東京)、お隣韓国の対処であったりを踏まえつつ、仮説を立て、検証していって欲しいですね。

ちなみに、個人的には、そもそも婚姻率を上昇させるのは無理っぽいから、非婚でも子育てしやすい環境を整えたほうがいんじゃないかと思っています。韓国の状況を踏まえて。ただ、素人の雑感なので、専門家の分析が今後各種委員会・会議で示されるでしょうから、アンテナ貼って、注目していきます。