このTweetをたまたま見かけて、
親が作家なので子どもにどんな本を読ませたかなど凄く質問されるけど、我々は読み聞かせを殆どしなかった(疲れるのと"読み聞かせ大事神話"が鬱陶しかったし)。我々は本と縁のない幼児期を過ごしたけどこんな仕事をしているし、家に本がなくても読む子は読むし、本だらけでも読まない子は読まない。
— 川上未映子 (@mieko_kawakami) 2020年6月27日
作家が子育てにおいてどんな本を読ませたか聞く人がいるんだと興味深く思いました。
私は仕事でグラフや契約書を大量に読むのですが(論文も読みます)、私がこういう仕事をしていると知っている友人・知人・ママ友から、「子どもにどんなグラフや契約書を読ませたか?」と質問されることは滅多にありません。あ、嘘をつきました。今までで一度もありません。
私の狭い観測範囲では、弁護士をやっている親に対して「子どもにどんな契約書を読ませたか」を聞いている人は見かけないし、研究者をやっている親に対して「子どもにどんな論文を読ませたか」を聞いている人も見かけません。
一方で、漫画家に対しては「子どもにどんな漫画を読ませているか」という質問をする人はいるような気がするので(気がするだけかもしれない)、たぶん、漫画や小説みたいなものがグラフや契約書に比べれば一般的に身近なことがこの辺の背景にあるように思います。
私からすればグラフや契約書というのも親しみ深く、日々の生活で身近にあるものなんですけどね。だから、このブログでも昔からグラフや契約書(や報告書)を紹介しています。
ただ、世の中ではグラフや契約書は敬遠されがちらしくて、「女性向けの本では部数が減るからグラフは一切入れないほうがいい」と聞いたときには驚きました。実際、初心者向けの投資の本であっても、女性をターゲットにしているものはグラフが少なめです。投資をグラフを使わずに説明するなんて不毛極まりないですよね。
グラフは人を騙すことはあるのだけれど、多くの言葉を使わなくても直感的にメッセージを受け手に発信します。私は、グラフが多用されているから日経新聞やFT(同じグループ)を読むのが好きです。
例えば次の記事で紹介されたグラフは、韓国での日本製品離れがもう1年間続いていることが一瞬で見て取れます。
※輸出管理厳格化1年 韓国、半導体材料進む国産 日本産フッ化水素8割減 車・ビール不買定着 :日本経済新聞
「韓国ではフッ化水素はしっかり輸入されている」と言えば、確かに輸入はされているけれど輸入量が減少しているのは明確に見て取れます。それと同時に日本のビールや自動車も輸入量が減少しているのが見て取れる。日本製品が購入されていないのは明白です。
このように数字で議論をすれば感覚論でのすれ違いが起きるのをかなり防ぐことができます。もちろん、数字を信じない人や数字が誤って集計されていたりしたら上手くはいかないのだけれど。統計不正は本当に酷い。許すまじ。
契約書も権利関係がはっきり分かるから、言った言わないを防ぐ揉め事回避の仕組みとしてとても有効です。
大学入学共通テストで契約書が試験の題材に使われるという話がありました。契約書は論理が明確であるため、学生の論理的思考を問う(培う)目的では私はかなりアリなんじゃないかと思いました。結局、記述式があんなことになって関連して採用されないっぽいかもなんですが。
※画像は大学入試センターから。解いていてとても楽しい。
私は子どもに読み聞かせをまだ続けていますが、読み聞かせは何も本に限らず、漫画、家電製品の説明書、自治体が配布しているコミュニティ誌、そして、グラフや契約書を対象にすることもあります。簡単なグラフなら子ども新聞に載ることもあるし、体温と気温はこのご時世だからグラフに記入して話すこともある。
習い事の約款なんかも身近ですよね。月謝や入会金や解約手続きというのは子どもだって知っておいておかしくない。自分が得ている教育がどんな原則に則っているかが分かっていれば、例えば契約書に定めのない不合理な扱いをされたときには契約書を盾にする(武器にする)ことを子ども自身が実行することができます。
以上、ここまでが長い前置きで話は元に戻ります。
最初に紹介したTweetでは本に縁がなくても本を読む子は読むし、本だらけでも読まない子は読まないとあります。
私が思うに、多くの日本人の生活においてはグラフや契約書が縁が少なすぎるから、グラフや契約書に親しむ人が少ないんですよね。もっと日本人の生活をグラフや契約書だらけにしたらいい。私がこんなにグラフや契約書を好きになったのは、子どものときのくだらない揉め事をどうにか解決する仕組みがないかと考え、その一つにグラフや契約書で明示するというのがあると実感したことは確実にあります。
グラフや契約書を家族で読み解くのも楽しい!ということを最後にお伝えして、今日の記事は終わりにします。子どもにグラフや契約を使って主張・反論されるのはとても気持ちがいいですよ。