斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

"生理のある人"という正確な表現で炎上中のソフィのユニ・チャームは数少ない30% Club Japanメンバーで男女平等指数銘柄

以下のようなTweetが話題になっていました。

ソフィはユニ・チャームの生理用品ブランドですが、ユニ・チャームの初任給(というか給料?)が男女で違うということを家庭で発見したというものです。

私が調べた限りでは、ユニ・チャームの初任給・給料が男女で違うというデータは見つけられず、BuzzFeedの取材でも同様のようでした。

「ユニ・チャームの初任給が男女で違う」と読み取れるツイートが拡散→ミスリード、同社も否定

BuzzFeed Newsが同社の広報担当者に電話取材したところ、「性別によって初任給が違うという事実はありません」と回答した。

また、同社での入社後の男女での給与格差の有無について、広報担当者は以下のように語った。

「入社後はそれぞれ役職が上がるなどして昇給していきますが、『男性だから』『女性だから』ということで給料が差別されることはありません」

この件はこれで終わりですが、このTweetへのソフィ公式アカウントによるリプライが炎上しているようです。

ここでの"生理のある人の生活を少しでも快適に"というのが、女性を侮辱していると捉えられたようです。"女性の生活を少しでも快適に"と書くべきだろうと。実は女性のことを大事にしていないのではと。

しかし、生理用品は生理のある人が基本的には使用するもので、女性でも生理がない人もいるわけです(初潮前、閉経後、子宮摘出、トランスジェンダー)。ですから、ここでは"女性の生活を少しでも快適に"と書いたほうが不正確です。ただ、残念ながら燃えているみたい。

それはそれとして、話題になっているので、この機会にユニ・チャームが果たして女性にとって働きやすい企業かを公開情報から調べてみました。

結論から言えば、ユニ・チャームは日本全体からすると女性が働きやすい上位企業であるものの、まだまだ改善(向上)の余地があるというのが私の見立てです。以下、私が調べた情報を羅列していきます。

グループ全体での女性社員比率36.8%、国内の女性管理職比率14.4%

まずは女性社員比率と管理職比率です。

グループ全体だと36.8%が女性社員、女性管理職は海外が27.8%、国内が14.4%です。国内の女性社員比率も探したんですが見つかりませんでした。

※グラフは2022年の統合報告書から

この数字は日本全体からすると恐らく良い方です。女性社員比率は比較が正確にはできないけど、日本全体では女性従業員は26.5%、管理職は8.9%なので。女性の管理職比率が日本の平均より高いということは、普通に考えれば女性社員の比率も高いでしょう。

女性登用に対する企業の意識調査(2021年)

女性管理職の割合は平均8.9%で、依然として低水準ながらも過去最高を更新した。前年比1.1ポイント増も過去最大の増加幅となった。政府目標である「女性管理職30%以上」を超えている企業は8.6%(同1.1ポイント増)だった。また、女性従業員の割合は平均26.5%(同0.7ポイント増)で、女性役員の割合は平均11.8%(同1.0ポイント増)

女性の管理職比率は10年で11%改善、2030年に30%を目標

女性社員比率は直近5年でなだらかに減少しているのが気になりますが、管理職比率は増加傾向にあり、日本国内での女性管理職比率は10年で11%改善したようです。これは、日本企業では41番目となります。

10年で「女性管理職比率」が増加した会社TOP100 | CSR企業総覧 | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース

ユニ・チャームは2030年までに女性管理職比率を30%にする30% Club Japanのメンバーで(日本で現在75社程度)、日本国内の女性管理職比率を30%に引き上げることを目標にしています。

ユニ・チャーム、「2021年 ブルームバーグ男女平等指数」に初選定|2021年|ニュースリリース|企業情報-ユニ・チャーム

当社の日本国内における女性管理職比率は現在約13%(2020年12月時点)ですが、2030年には30%に引き上げることを目標としており、 “30%Club Japan”※1へ参加しています。なお、この取り組みは昨年10月に発表したユニ・チャームグループ中長期ESG目標「Kyo-sei Life Vision 2030 ~For a Diverse, Inclusive, and Sustainable World~ 」にも含まれています。

恐らく、社内では物凄い勢いで女性の管理職登用が進められているはずです。残り8年で現在の14%を30%にするのは簡単なことではありません。

口だけかと言えば、上のリリースにもあるとおり、ユニ・チャームはBloombergの男女平等指数の銘柄に選ばれている数少ない企業であり、

ブルームバーグ、男女平等指数(GEI)の2022年版銘柄を発表 - ESG Journal

日本企業では、みずほフィナンシャルグループ、三井住友トラスト・ホールディングス、三菱UFJフィナンシャル・グループ、、野村ホールディングス、新生銀行、ユニ・チャーム、大和ハウス工業、積水ハウス、大王製紙、住友林業、花王の11社が選ばれた。

株主含めたステークホルダーのことを考慮すれば必死で実現しようとするはずです。ちなみに、海外企業含めた全418社のリストはこちら 

そういう意味では、女性には、新卒もそうですけど、特に中途入社ではお勧めしやすい会社です。中にいなければ外から取ってくるしかないですからね。

取締役1名、執行役員1名は寂しい

ちなみに、取締役は6名中、社外から監査等で1名(元P&G)で、執行役員30名ぐらいで恐らく女性は1名です。

会社概要|会社案内|企業情報-ユニ・チャーム

これは非常に寂しい数字です。取締役は外からだし、執行役員がこれだけいるのに女性が1名ということは女性管理職登用が進んでいるとしても、ガラスの天井があるんじゃないかと考えちゃいます。執行役員は早急に10人ぐらい女性にしてほしいところ。

日用品・化粧品業界で働きやすさは13位(約1900社中)

ここまでは会社の公表情報ですが、本当に働きやすいかどうかはOpenWorkの口コミを見るのがお勧めです。ここは、基本的には退職者・退職検討者が口コミしているので、「立つ鳥跡を濁す」精神で悪く書かれる方が普通です。

日用品・化粧品業界でのランキングではユニ・チャームは13位(約1900社中)です。

上位には世界でも最強クラスの女性が働きやすい会社であるP&Gジャパンを筆頭に、女性社員比率が9割のオルビスなどが並んでいて、口コミ件数が少ない小規模の企業を除けば、業界ではかなり上位の企業と言えます。

そもそもこの業界は女性社員比率が相対的に高く、また、女性の働き方にも理解がある傾向があります。探せば他業界でも女性が働きやすい企業はあるのだけれど、就活でこの業界に縁があったなら、女性にはお勧めしやすい傾向はあります。

締め

以上、"炎上"をきっかけにしたユニ・チャームの女性の働きやすさでした。

ポイントは、女性の管理職比率が増加傾向で、社外に目標数を宣言していて、しかも、男女平等の観点で株式インデックスの銘柄に選ばれているという点です。今後、市場のプレッシャーもあり、女性管理職比率が増える ≒ 女性がさらに働きやすくなりやすい会社になる可能性が十分にあります。

取締役や執行役員の女性比率など、まだまだ改善の余地は大いにありますが、今回の"炎上"でもって、ユニ・チャームを「女性の給料が安い会社」「女性を侮辱している会社」としてしまうのはもったいないというのが私の感想です。

今日はこんなところです。ではでは!

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※このCM、いいじゃん!