斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

『脳内ポイズンベリー』は脳内会議が偏向しているのが面白い

今日から実写映画が公開されるということで、水城せとなさんの『脳内ポイズンベリー』を読み直しました。以前、同じ水城せとなさんの『失恋ショコラティエ』を紹介した際に、『脳内ポイズンベリー』もお勧めしていますが、いい機会なので『脳内ポイズンベリー』もレビューしておきます。

※脳内描写は原作に忠実っぽい感じ

なお、一巻だけKndleで期間限定無料配信されています。

脳内ポイズンベリー【期間限定無料】 1 (クイーンズコミックスDIGITAL)

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 ※表紙は脳内キャラクターで統一 

 

あらすじ

年の割には若く見える、アラサーの主人公櫻井いちこが、若い男や落ち着いた男に迫ったり、迫られたり、くっついたり、離れたりする話です。

櫻井いちこは、過去恋愛で手痛い傷を負っており、自分から積極的に男性に接触したり、男性からの好意を受け入れるのが怖い。そんないちこが脳内に作ったのが、5人の人格による会議体です。脳内会議体で議論を尽くすことにより、男性から受ける傷をできるだけ最小にしようとしますが・・・。

この脳内会議体の5人のメンバーの会話がこの漫画の大きな魅力の一つとなっています。5人の人格は以下のとおり。

脳内ポイズンベリー - Wikipedia

吉田 - 議長を務めるメガネ男子。多数派に従いがちな風見鶏。
池田 - ネガティブ思考の女子。
ハトコ - ゴスロリ風にアレンジした服装の女子。
石橋 - 元気な男子。
岸 - 記録係の初老の男性。票決が偶数で割れた時は参加する。

念のため言っておくと、櫻井いちこはビリー・ミリガンのような多重人格者ということではありません。よくある天使の思考と悪魔の思考を更に細分化したものとご理解ください。

 

間違いまくりの主人公

そういう脳内会議体を設定して、できるだけ傷を負わないようにする主人公ですが、結果的に選ぶ選択肢は傍から見て間違ったものばかりです。そんな発言しちゃったら、相手が誤解するようなことを平気で言っちゃう。

いちこが間違った選択をしたり、誤解を生じさせる原因は、大きく2つあります。

一つは、脳内でフル回転で次の一手をどう打つかを考えているため、そうした結果で何らかの行動・発言を起こすことから、外から結論だけみると飛躍があるというのもあります。いちこが何を考えているか全然分からない。

そして、もう一つが、脳内会議が偏っていることです。

 

脳内会議の偏向

脳内会議においては、先ほど紹介した5名が喧々囂々の議論を繰り広げます。役割分担がされていて、吉田がロジカル、池田がネガティブ、ハトコが天然、石橋がポジティブ、岸が枯れみたいな感じで、一見するとバランスの良い議論がされているようです。

ただ、どの人格も結局は元は櫻井いちこが作り出したものであり、櫻井いちこが望む結論を導き出すためにそれらしい議論をするだけでしかありません。

例えば、以下は1巻11Pの脳内会議の一コマ。

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ここで詰めているのがネガティブの池田で、涼しい風のメガネ男子が吉田です。ここで決めた決断というのが、若い男性に声をかけるかどうかです。読んでいれば分かりますけど、櫻井いちこは脳内外(普通の場面)ではこの若い男性にかなり好意を持っています。吉田が風見鶏ということでこういう脳内決定が下されたように見えて、いちこの決断をそれらしい理由で後押ししている。

次は、3巻の42ページ。これは落ち着いた男性からのアプローチをどう捉えるかについての脳内会議です。隅の方にいる女の子が天然のハトコ。勘違いさせるのが問題と言っているのがポジティブな石橋です。

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これも各キャラクターが自分たちのスタンスで議論しているようで見えて、落ち着いた男性からのアプローチはとりあえず真に受けないで置いておこうという流れを作っています。

こういうものについて、「何だ、全然合理的な議論がなされてないじゃないか!」と憤る方もいらっしゃると思いますが、自分はこのグダグダな、偏った会議が好きで『脳内ポイズンベリー』を楽しんでいます。

 

思考は偏っているものですよね?

何で楽しいかと言えば、やっぱり人間の思考ってそういうものかなと思っているからです。自分の中で自分を客観視なんて限界があるものですよね?

漫画だからといって、どこにでもいるアラサーの女性が超人的な思考をしてるとそれはそれで変。別人格を簡単に作り出せるわけなんてない。

所詮人間一人が考えられることには限界があって、そういう限界がある中での思考というのはどういうプロセスで行われているのかというのを、脳内会議のキャラクター設定をすることで分かりやすく明示しているのが『脳内ポイズンベリー』という作品だと考えています。

普通の人間がどういう思考で普通に間違っていくのか、それを眺められるのが楽しいんです。

 

締め

ということで、『脳内ポイズンベリー』の紹介でした。

失恋ショコラティエのレビューでも書きましたけど、 

こちらの作品の方は、かなり不愉快になる登場人物は主人公ぐらいなので、そういう意味では、あまりキャラクターの悪口が言えないというのが残念ですね。

一例ではありますが、ある種の女性の脳内がどうなっているかを知るために読んでみるのもいいんじゃないかと思います。 まあ、自分なら友達にはなりたくないですね。

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