Twitterでフォロワーさんが絶賛されていたので、九井諒子さんの『ダンジョン飯』を読んでみました。Amazonのレビューは9割が☆5つという凄い状態。
実際、かなり面白く、この幸せな時間を他の人とも共有したく、皆さんにもぜひ読んで頂くためにも、レビューを書くことにしました。あまりネタバレにならないようにしていますが、何にも情報を入れたくない人は以下のレビューは読まないで、そのまま書店で購入して下さい。
ダンジョンの料理漫画!?
まず、RPGのダンジョン内での料理漫画と紹介しても意味が分かりませんよね。自分も読み始める前はどんな內容かさっぱり分かりませんでした。
要は、トルネコの大冒険における不思議なダンジョンのような迷宮が存在しているファンタジーな世界で、その迷宮で現れる魔物とかを屠って、その魔物を料理して食べちゃおうという漫画です。以下、17Pでの説明。
確かに、肉食の魔物がいるなら、草食の魔物がいて、草食の魔物がいるなら、植物もありますよね。人間が食べられるものがあってもおかしくない。いや、そこで自給自足ができて当然。
普通に美味しそうな料理
魔物を料理するなんてどんな感じになるのかと思いきや、出来上がった料理はかなり普通です。以下、P33で登場する『大サソリと歩き茸の水炊き』です。美味しそうな鍋。
ここでの歩き茸は、ダークソウルのエリザベスみたいなやつです。
※画像は、ドイツ語版ダークソウルのWikiから。
出来上がりはかなり普通なんですよ。普通に料理漫画っぽい。クッキングパパっぽい。違いがあるとすれば、食材の調達方法と調理方法ぐらいです。ダンジョンに登場する魔物を台無しにならないように工夫してハントして、その場にあるものを利用して料理する。このギャップが面白い。
食材の調達方法の中では特にマンドレイク編が最高でした。引き抜くときに悲鳴を上げ、その悲鳴をまともに聞くと発狂してしまうというマンドレイクをどうやって採取するのか。
※マンドレイクの参考画像(冗談です)
ああ、そんな風に調理するんだ……
魔物を調達するのはこれはこれでこの漫画の醍醐味なのでぜひ読んで頂くとして、特殊な調理方法とはこんな感じです。画像はP128から。
これは、ダンジョンに張り巡らされた罠を使って、食材を下ごしらえするシーンです。こういう使い方があるとは知りませんでした。便利ですね。
締め
この漫画は、ダンジョンの世界で現実的な料理をするという非現実な設定で既にやられちゃうのですが、登場人物が皆魅力的で軽いテンポで進み、ところどころでクスっと笑えるところも魅力の一つ。
そして、料理描写が妙に生々しく、登場人物の感じるダンジョン飯に対する嫌悪感や抵抗感や好奇心も手にとるように伝わってきます。以下の、画像はP112から。
この生々しさは、実際に魚を捌いたり、と畜するのにも近いところがあるでしょうか。サンマの頭を落とすとか。そういう料理の生々しさが好きではない方は、たとえ仮想の魔物をさばくというものでもちょっと受け入れ難い部分はあるかなと思います。
topisyuは料理はかなり好きなのですが、読んでいて、料理を作りたい意欲がムクムクと湧いてきました。
これまでダンジョンであまり料理をしたことがない人が料理をし始めるのには最適な本だと思います。お勧めです。
※Kindle版は紙版の30%オフぐらい。凄い時代になったものです。
ちなみに、作者の九井諒子さんは他にも何冊か漫画を発売されています。『竜の学校は山の上』もお勧めです。短篇集で、ちょっと趣は違いますけどね。九井諒子さんの作品は本作含めて以下のページで試し読みができます。
あとは、こちらでも。
『ひきだしにテラリウム』特設ページ | Matogrosso
以上です。
余談
ここからは余談です。
自分はこの作品のような仮想世界でのリアルな生活というジャンルがかなり好きです。NHKの教育テレビで毎週土曜日に放映されている『ログ・ホライズン』もかなり好きです。うちにはテレビがないので、姑に「子供が見たいから」とお願いして録画してもらっています。
- 作者: 橙乃ままれ,ハラカズヒロ
- 出版社/メーカー: エンターブレイン
- 発売日: 2011/03/31
- メディア: 単行本
- 購入: 18人 クリック: 511回
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※元の小説。
こちらは(ゲーム内での)料理レベルがある程度いかないと美味しい料理が作れないとか、アイテムで料理スキルを補強できるとか、そういう細かな設定も面白い。こういう世界観は、ゲームに馴染みがないと楽しめないかもしれませんけどね。
『ロード・オブ・ザ・リングス』でも食事のシーンがかなり好きです。どれも美味しそう。
こういったエンターテインメント作品をあまり多く見ているわけではないのですが、リアル感を出すために、不倫であったり、相続争いだったり、介護だったり、そういった現実世界ではよく見かけるイベントについても触れられた作品があるなら読んでみたいものです。タックスヘブンに逃げるとかもいいですね。マネーロンダリングとか。
たぶん、今回紹介した『ダンジョン飯』が人気になったり、『ログ・ホライズン』がNHKで放映されるようになったのは(內容としては昔からあるかもしれませんが)、子供の頃ゲームに熱中していた世代がある程度大人になって、単なるファンタジーではないものを求めるようになったというのが背景にあるんじゃないかと思っています。
とすれば、ゲーム世代がもう少し育って、ちゃんと不倫したり、相続争いしたり、介護したり、マネーロンダリングするようになれば、そういった現実のイベントが仮想世界で取り上げられた作品も逆説的に増えてくるんじゃないかと期待しています。
繰り返しですけど、それほどエンタメ作品を消化しているわけではありませんので、もし、既にそういうリアルな內容に特化した作品があることをご存知の方がいらっしゃったら、ぜひ教えて下さい!
etsuko.topisyu@gmail.com
参考
漫画の画像を引用すること(転載ではない)について気になる方はこちらのブログをご参考にどうぞ。
こちらは弁護士から聞かれたたことをまとめられたもの。
この記事では引用の要件を満たすように紹介したつもりですが、何かあればご指摘ください。