以下の記事で、専業主婦の労働対価は年収1200万円の価値があるという話が出てきました。
どこかでその話は聞いたことがあるなと思って検索してみたところ、ソースはアメリカの求人情報提供会社であるSalary.comでした。2014年で11.8万ドルですね。円安傾向になっているから今なら1300万円ぐらい?
※画像は2014 Mother's Day Infographics - Salary.comから。
どうやってこの金額を算出したかはここに書いてありますが、
How Much Are Moms Worth in 2014? - Salary.com
主婦の業務を分類し、その業務を実際にプロが行った時にアメリカ国内でどれくらいの時給になるか調査し、最後に累計したというものです。
この調査をもとに日本の専業主婦の年収は1200万円だと主張する時の注意点としては、
- 円換算であること
- 週の労働時間は96.5時間を前提(年換算では約5000時間弱)
- 時給の前提となる給料はSalary.com調べのアメリカでのプロのもの
- 時給の高い、CEO、心理学者、管理人などが含まれること
というところでしょうか。なお、同じ考え方で、兼業主婦は7.0万ドルになるそうです。
一方、日本では、内閣府が無償労働の年間評価額として家事労働の価値を5年ごとに公表しています。
直近の2011年の報告では一番高い評価方法で、専業主婦は平均で304万円という数字です。年換算でのトータルでの無償労働時間は2199時間(家事・買い物1807時間、介護・監護56時間、育児299時間)ですから、ならした時給は1400円ぐらいですね。一日6時間労働の計算。
一人当たり年間無償労働評価額と無償労働時間は、OC法では、女性の場合、無業有配偶(専業主婦)の無償労働評価額が最も多く、年齢平均では304.1万円、有業有配偶の無償労働評価額は223.4万円となっている(図表13)。一方、男性の場合、全体では、有配偶以外の貨幣評価額が最も低い。
一人当たり無償労働時間は、女性の場合、無業有配偶は2,199時間で、有業有配偶や有配偶以外よりも長い(図表14)。有業、無業に関わらず、有配偶では30歳代の前半にピークを迎え、その後減少する。男性の場合は、無業有配偶が最も長く、有業有配偶、有配偶以外ではその半分以下となっている。
ここでOC法とありますがこれはOpportunity Cost methodというもので、その人が無償労働をすることによる逸失利益で無償労働を評価する方法です。
先ほどのSalary.comでのプロを起用した時の評価方法については、代替費用法スペシャリストアプローチ(Replacement Cost method, Specialist approach:RC-S法)、代替費用法ジェネラリストアプローチ(Replacement Cost method, Generalist approach:RC-G法)というものでの評価もあり、それぞれ専業主婦で249万円、226万円となります。
Salary.comと比較すると無償労働の時間も、想定時給も両方とも相対的に低いわけですね。時間については一日6時間というのは平均で見ればそんなものでしょうけど、時給の方はOC法はベースとなる女性の給与が低い(男女間で賃金格差がある前提)ので、こういう結果になりますよね。日本での女性の平均給与は300万円弱ですから。
余談
なお、こういう出所の数字だからといって「私の価値は1200万円あるよ!」に対し、
「1200万円?正確には11.8万ドルでしょ?円換算したら1300万円強だけど、そっちのは違うソースなの?業務内容として心理学者やCEOが含まれるの知ってる?日本は内閣府が300万円という報告書を出しているけど、どっちが正しいだろうね。ちなみに内閣府調べでは家事・買物、介護・看護、育児が含まれているけど、君は看取る相手もいないし、僕らには子供もいないし、掃除はルンバで、買物はネットスーパーで、外食しているけど、君は週何時間家事労働しているの?」
という反論をすることはお勧めしません。
主張の意図は「私と仕事のどっちが大事なの!?」と根っこは変わらないと自分は思います。要するに現状に不満がある。
追記
この話題に関連するお勧めの漫画を紹介するのを忘れていました。
派遣切りにあった主人公が、お手伝いで働くのに扶養等で都合がいいからと草食系男子と結婚するという話です。