斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

東芝「当社の業績見込みの信憑性は低いし、来年再来年も計画達成には疑義があるから、株の評価が低いのはおかしくない」

東芝が屈辱的なプレスリリースを出しているのが話題になっていました。

東芝、異例の自虐発表 TOB応募推奨で「当社の業績見込みの信憑性低い」 :日経ビジネス電子版

関係者によると、この資料を決議した8日の取締役会は全会一致だったという。ある上場企業の取締役は「屈辱的な文言を受け入れなければならないほど、東芝にとって背水の陣とも言えるTOBなのだろう。成功させないと後がない」と驚きを隠せない様子だった。

興味を持って原文を見に行ったら、確かに屈辱的な内容でした。 

当社株式に対する公開買付けの開始予定に係る意見の変更の説明会 | 投資家情報(IR) | 東芝

しかし、DCF 法による株式価値は、当社が作成した 2022 年度から 2025 年度までの財務予測(以下「本連結財務予測」といいます。)の最終年度(2025 年度)の計画値に相当程度依存するところ、直近の 2022 年度を含め過去 20 年間を見ても当社が業績見込みを達成した回数は少ないことを踏まえると、当社の業績見込みの信憑性は総じて低いと言わざるを得ず、また、本連結財務予測が、2024 年度及び 2025 年度における、デバイス事業、エネルギー事業、インフラ事業を中心とする各事業の利益率の改善に起因する大幅な増益を見込んでおり、実現のハードルが低くない計画に基づくものであることに加え、島田 CEO からは当社の経営基盤が不安定な状況が続いた場合には 2023 年度予算における 2024 年度及び 2025 年度の計画値の実現が危ぶまれるとの見解が示されており、本連結財務予測の最終年度(2025 年度)の計画値の達成可能性には疑義があることを考慮する必要があります。そのため、これらの事情に鑑みれば、本連結財務予測を前提とする DCF 法に基づく株式価値算定に全面的に依拠することはできず、信用性の低さに鑑みて一定程度割り引いて評価することが適当であるとも考えられ、本公開買付価格が DCF 法のレンジの下限近傍に位置することは、完全に競争的で公正な本プロセスを通して得られた本公開買付価格が公正・妥当であり、当社の株主に対して本公開買付けへの応募を推奨するに値するものであることを否定するものではないと考えております。

※太字は筆者

これ、会社自身がリリースしている内容ですからね。信じられます? 自分で、自分たちの計画作成能力が低いと認めて、だから、その分、株価を低く評価するのはおかしくないって書いてるんですよ。

正確には、東芝の社外取締役で構成される特別委員会による見解なんですけど、東芝は、特別委員会の意見を全面的に受け入れる形で、自分を主語にしてこのリリース文を出しています。

こんな内容のリリースを自ら出すに至った背景事情は理解できますが、8年前に東芝の「チャレンジ」を紹介して、中の人に対する苦労の大きさを勝手に察していた身としては、

東芝の「チャレンジ」を一目で察することができる、あるグラフ - 斗比主閲子の姑日記

まったく知らない会社ではありませんので、経営陣ではない中の人に対しては、これまでの苦労とこれからの更なる苦労の大きさに、個人的には心中察して余りあるところがあります。

このリリース文を出すまでの、経営陣ではない中の人に対して、改めて、改めて、苦労を察するところです。

過去に「チャレンジ」をしていたぐらいですから、わざわざ達成できない計画なんて出したくなくて、ある程度硬いところもありつつ、さりとて「チャレンジ」にならないような数字を考えていたはずですからね……。それが、自分たちで、計画達成できない計画を作っているって認めないといけないなんて……。

8年前から従業員数は2/3ぐらいになっているので、売却しただけじゃなく、辞めていった人も数多くいると思います。もちろん、辞めずに残っている人もたくさんいるはず。本当に大変だったし、これからも大変だと思います。どうか、皆さん、お身体はご自愛くださいませ。

※2017年、2018年に「チャレンジ」に至る本はたくさん発売されたけど、また東芝本が出版されることになるはず