斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

日本で株式投資比率が1割であることをもって、"少額"投資非課税制度が高齢富裕層の優遇と批判する東京新聞のセンスのなさ

タイトルで、言いたいことは全部です。続きはお好きな人だけどうぞ。

次の記事を読んで呆れました。

唐突な「資産所得倍増」計画、実現は53年後? 岸田首相の「新しい資本主義」の恩恵は富裕層へ集中か:東京新聞 TOKYO Web

しかし、日本証券業協会によると、2020年度末の個人株主は日本人全体の11.2%にとどまり、高齢者層が多い。現役世代は投資に資金を回す余裕に乏しいとされ、今回の株式投資への優遇策は「金持ちに恩恵が集中する」(経済官庁幹部)との批判もある。

岸田政権がNISAやiDeCoを拡充しようとするのは、日本では株式投資をするのが1割で高齢者層に多いから、主に高齢富裕層が儲かるものだという批判です。

記者が投資のことを一切知らないからこんなテキトーな記事になるんでしょうけど、こういう批判で日本人が投資をしやすい環境を作らせないようにして、東京新聞は何がしたいんですかね。日本人を貧しくさせたいんでしょうか。

そもそも、NISAは小額投資非課税制度で、投資額は最大でも年120万円程度で、つみたてNISAなら年40万円です。iDeCoは会社員で月2.6万円、自営業で月6.8万円が最大投資額です。富裕層は金融資産1億円以上ですから、NISAやiDeCoが多少拡充されようが、富裕層からしたら大した恩恵ではありません。

また、NISAやiDeCoを批判するなら、それが実際にどのような世代で利用されているかを調べてからでしょう。恐らく、都合が悪いから紹介しないんでしょうが、読者を騙していますよね。

以下は日本証券業協会の昨年末時点でのNISAの調査結果ですが、皆さんご存じの通り、直近の新規投資額は20-30歳代が最大です。

残高でみても、つみたてNISAは30代が最大です。

東京新聞が一般NISAの残高を批判するならまだ分かります。一般NISAはなんだかんだいって残高は70代が最大ですから。

これは一般NISAの制度上の問題(短期の株式売買で利用されちゃっている)があったからですが、120万円の投資枠内のうち20万円を長期投資枠にするように制度変更が2024年から予定されています。

新しいNISA制度 : 金融庁

また、iDeCoは以下確定拠出年金統計資料(運営管理機関連絡協議会提供)|統計資料|企業年金連合会からの資料ですが、普通に50歳未満で6割が加入しています。

一方で、資産額には高齢層への偏りがあります。これを批判するならまだ分かるけど、iDeCoの仕組み上、60代まで投資を積み立てて退職金見合いで受け取るのが基本なので、この比率自体は基本変わらないでしょうけどね。(=批判しにくい)

なんにせよNISAもiDeCoも歴史があって、できるだけ現役世代が利用できるように制度変更されてきた歴史があります。例えば、金融庁のNISAのWebサイトは時間をかけて、じわじわ良質なコンテンツを増やしています。そして、実際、若い人も制度を利用している。

NISA特設ウェブサイト : 金融庁

もちろん、両制度ともに不十分なところがあって、

・制度が多岐にわたっていて複雑すぎる

・一般NISAは短期売買されがちで小金持ちのマネーゲームに利用されることもしばしば

・企業型で退職したときにiDeCoに移す手続きを忘れると大惨事

・iDeCoの特別法人税問題は棚ざらし

なんてところは課題感があります。

こういう状況を理解して批判するなら分かりますけど、日本での株式投資比率が1割という数字を使って、金持ち優遇とか言うのは本当に頭が痛いです。事実を調べて記事にするという基本的な動作ができていないのではないでしょうか。

たぶん、根底には投資=悪という発想があるんでしょうけどね。

そういうことならアメリカの個人の投資状況やイギリスのISAやオーストラリアのスーパーアニュエーションを批判して、ああはなってはならないぐらいの記事をぶち上げてもらいたいところです。

一富裕層の私としては、現役世代が将来に有利に資産を積み増せる仕組みとして、NISAやiDeCoが充実してきているので、今後も利用をお勧めしていくつもりです。

なお、何度も書いているとおり、私は資産課税強化賛成派です。NISAやiDeCoでの少額投資を優遇しつつ、資産が多い層には積極的に課税して(税率上げて)、格差を解消したほうがいい。