何か会社の不祥事があると、「原因を調査した結果、ある人物一人が起こしていた問題でした」と説明されることがあります。
* Who Killed Lila Stangard?
実際、その不祥事にメインで関わった個人はいるんでしょうね。会社と言いつつも、なんやかんやでその業務の責任者というものはいるものですから。それで、そういう話を聞くと、「なるほど、そうすると、その個人が問題行動をしただけで、会社としては責任がないということか」と思ったりしますが、一方で、「でも、どうしてその個人が会社が公式に謝罪するような大問題を起こせたんだろうか」とも思うわけです。
分かりやすい例だと、金銭の着服とかですね。親会社から出向してきた経理部長が子会社の経理で粉飾をして、数億円の金銭の着服をしたとか。他には、ある編集者が著作権者に断りなしにその著作権者の作品を勝手に本にして出版したとか。また、ある責任者が管理していた複数のマンションの杭が強固な地盤まで届いていなかったとか。更には、あるチームが主導して排ガス規制の不正を長年していたとか。最後のケースは海外ですけどね。
皆さんご存知の通り、日本企業というのはそれなりに内部統制や管理システムがしっかりしているんですよね。それこそ、判子を何人も押させないといけないとか、後で監査が入るとか、ややこしいところがあって、そういうところが日本企業にはスピード感がないと揶揄されるところでもある。個人がスタンドプレーができないように組織が作られています。権限が個人に集中しすぎないように、責任が分散するようになっている。
こういうのを知っているから、誰か一人に責任があるという話を聞くと、どうも腑に落ちない感じになります。プロセス管理が徹底されている日本企業のはずなのに、個人がそんな大それたことをできるのかなって。
CEOとか大株主絡みの役員が何かしでかしたというのならまだ分かります。これも問題なんだけど、何だかんだで日本企業は社外取締役がまだまだ無視されることが多いし、そういう人たちはそれなりの権限を持っていたりするものなので。でも、これが一社員となると少し疑わしくなる。その人や人たちはスケープゴードにされているんじゃないかと疑ってしまう。
会社としては存続がかかっていたりするので、少数の人間を犠牲に差し出したいという気持ちは分からぬでもないですけど、そういう不正行為をできる環境の方こそ、本来は問題視した方がいいですよね。個人が簡単に大問題を引き起こせる構図があるとすれば、その構図自体を是正しないかぎり、同じような問題が再発する可能性が残ります。こうしてその会社に対する不信感は残る。
何だかんだで多くの人がこういう不信感を抱き続けます。だから、こういった不祥事を会社が公式にコメントする場合には、どうしてその個人が問題を起こせたのか、回避する方法はなかったのか、今後どうやって起こさないようにするのかといった、背景や再発防止策含めて語って頂いたほうがいい。時間もコストもかかり、幹部クラスの責任問題にまで発展するかもしれないけれど、結局はそっちのほうが信用を早く取り戻せます。
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