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斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

発売から1週間で1000部売れた電子書籍の作り方 ~編集の起用、執筆ツールの選択、商業本との差別化~

昨年12/23に電子書籍をAmazonのKindle経由で発売いたしました。当初の想定ではトータルで200部いけばいいほうだと思っていたのですが、蓋を開けてみれば最初の1週間で1000部も売れました。この間、Amazonの電子書籍のランキングでは初日が最高で7位、以降も30位以内をキープしていました。購入いただいた方、ありがとうございます。

Kindle KDP 1000

※グラフは、AmazonのKDPサイト > 販売データ一覧より

以前にも宣言したとおり、これから電子書籍を発売したい人の参考になるよう、自分が執筆にあたって気をつけたこと、参考にしたサイトなどをこの記事では書いてみます。なお、今回は文字数の関係から執筆に重きを置いた前編です。値付けやPR戦略などは次回になります。

関連記事としてこちらに触れます。

【宣言記事】単著がなければ自分で出せばいいのでは? Kindle本現在執筆中です! - 斗比主閲子の姑日記 ← 昨年10月に電子書籍を販売することを宣言した記事

【PR記事】【ツッコミ特典あり】本日より電子書籍『ぼーっとしている人が「自分の人生に向き合う」ためのQ&A30』の発売開始です! - 斗比主閲子の姑日記 ←昨年12月23日に電子書籍を発売したことをPRした記事

 

 

総括

最初に申し上げると、個人が電子書籍を出版すること自体はそう大したことではないというのが感想です。クオリティを無視して、価格設定やPRも何も考えなければ、毎月のように量産できるはずです。

ただ単に出版するのではなく、出版社がバックアップしている商業本と競り合うつもりであれば、色々検討するべきことはあります。ただ、今の電子書籍市場であれば、個人でまったく太刀打ちできないかと言えばそうでもない(個人でも戦える)というのが今の自分の結論です。

 

きっかけ

まず電子書籍を書こうと思ったきっかけについて触れておきます。限定した層を狙った物を書きたいという狙いはありましたが、直接的な影響は以下の御三方によるものです。多くの人にとっては不要でしょうから飛ばしてください。

 

1. ズイショさん

昨年1月に、村上春樹さんに来た相談に勝手に回答文を書いたのですが、それに、ズイショさん(id:zuiji_zuisho)という方からお行儀が悪いというコメントがつきました。

村上春樹さんへの相談に勝手に答える 「脈はないとわかっていても……」 - 斗比主閲子の姑日記

先日「面白い相談を引き出せるのもその人のコンテンツ力だよねぇ」という話をしてたところだったのもあって、これはちょっと行儀悪いなぁと思った。

2015/01/28 00:09

それまで発言小町、読売新聞の人生案内、Yahoo!知恵袋、はてな匿名ダイアリー、林先生などなど、他媒体に掲載された相談に自分は勝手に回答し続けており、特にどなたからも問題視されたことはありませんでした。なぜ村上春樹さんへの相談だけお行儀が悪いと言われるのか困惑しましたが、そういうことなら自分でQ&A集を出してみるかと思いついたわけです。

自分にお悩み相談される方はそこそこいらっしゃるのですが、友人・知人どころか、Q&Aサイトでも相談できない、重たい上に身バレのリスクがあるものが多く、残念ながら公開に限界があります。相談者さんからの公開の許可が下りたものは「一人小町」というカテゴリーで公開しています。

一人小町 カテゴリーの記事一覧 - 斗比主閲子の姑日記

 

2. きんどうさん

昨年8月に、AmazonのKindle本の宣伝で生計を立てているきんどう(id:kindou)さんがご自身で電子書籍を発売され、その内側をレポートされていました。これを見て具体的な売り方がイメージできました。

弱小ブロガーですが電子書籍をリリースして初日で2,249冊売れてKindle総合ランキング1位も達成したので、本書で仕掛けた読書体験の可能性について聞いて欲しい - きんどうりさいくる

 

3. はしごたんさん

昨年9月に、自分が定期購読しているはしごたんさん(id:kuroihikari)さんが電子書籍を出したいとブログで何度か書かれていたので、一緒に出せるといいなと一気にモチベーションが上がりました。

お金なんかいらないです無料でこのブログで読めます - heartbreaking.

1. 電子書籍『heartbreaking.』のはじまり - 電子書籍の作り方

 

構想から出版までのスケジュール ~編集の起用は重要~

スケジュールは以下のとおりです。すべて2015年です。

  • 企画の構想 9月末頃
  • 執筆 10月2日~12月6日(約2ヶ月)
  • イラスト描き、表紙の作成、校正 12月7日~12月22日
  • 出版 12月23日

企画から出版までおおよそ3ヶ月です。商業本の場合は執筆を含めて企画から出版までもっとも早いもので3ヶ月程度という話を聞いたため、個人でやるなら間に人が少ないのだからそれぐらいのほうがちょうどいいかもと目安にしました。

これをすべて自分でやるとなると、

  • 仕事や家族との時間もある中でなかなかモチベーションが維持できない
  • 他人の目が一切入らないと出来上がった時に独りよがりなものになる

という恐れから、Twitterで相互フォローとなっており、編集アルバイト経験があるというid:steinさんに企画の構想をお伝えして、編集担当として関わっていただくようお願いしました。

steinさんには書けた原稿の下読みとスケジュール管理(含む叱咤激励)を主にお願いしました。ご本人は大して仕事をしていないと謙遜されていらっしゃいましたが、一人の力では出版できたかかなり怪しいものです。

電子書籍を出された他の方も書かれていますが、素人には信頼に足る編集役は必要だと思います。

そろそろ『Fuzoku実践入門』の表紙について語っておくか - Fuzoku実践入門ブログ

これは、私の個人的見解に過ぎませんが、KDP作家の多くは、編集者と仕事をしたことがないかと思われます。しかし、1度でもプロの編集と仕事をした人はご存知だと思いますが、編集者の視点やアドバイスというのは、作品のクオリティを上げるための最重要な要素であり、何よりも大事にします。

 

執筆過程 ~総文字数は6万字弱を目安~

本の構成は以下の通りです。

  1. 表紙
  2. 著作権情報
  3. はじめに
  4. 目次
  5. 本文
  6. おわりに
  7. 奥付け

重要なのは5.本文です。他は(表紙を除き)後で何とでもなります。

本文は当初Q&Aを60個ぐらいにしようと考えました。分類も今とは違って、恋人編・結婚編・離婚編・子育て編・介護編といったようにライフスタイルを大まかに分類して、それぞれで起きうるトラブルを網羅するつもりでした。

実際にQ&Aを1つ書いてみると1500字~1800字ぐらいの文字数がちょうどよく、60個のQ&Aでは文字数が10万字を超えてしまい長過ぎると分かりました。一般に新書の文字数が12~14万字ということですので、10万字を超えると個人が出す電子書籍としては長すぎる印象がありました。

また、幅広い層に向けたものを書いても、スイートスポットではない世代の方からするとどうでもいい話題が多すぎて価値が薄れるだろうと考え、Q&Aを30に絞り、20代後半~30代の男女向けのものを多めにしました。一つのQ&Aの純粋な執筆時間は1~2時間です。二日に一Q&Aを回答するぐらいでしたので、私生活はもちろん、ブログの更新をしながらでも特に大きな負担ではありませんでした。

このように書いてみて分かることはありますから、本の内容は柔軟に切り替えていいし、それができるのが個人による電子書籍の出版の良いところだと思います。

なお、はじめにとおわりには本の方向性がはっきりした中盤に書き終えました。目次はWordの自動生成機能で作成しています。表紙については別の項で触れます。

 

執筆ステップ ~はてなブログとWordが便利~

主な執筆ツールは、

  • はてなブログ
  • Word

となります。

steinさんとは基本的なやり取りはTwitterのDM、メール、そしてはてなブログのグループ機能で行っていました。はてなブログでは課金ユーザーになるとブログを共同で運営することが可能です。下書きに書いた記事を共同運営者(今回はsteinさん)は見ることができます。今回は電子書籍執筆用のブログを新たに用意しました。GitHubやSlackも話には出ましたが、普段使っていないことから利用しませんでした。

執筆ツールとしてのはてなブログの良いところとしては、共有機能以外に、

  • 文字数がカウントできる
  • 自動保存機能がある
  • 記事を書いた日にちが明確。カレンダーで確認もできる
  • イラストのお絵かきツールがある

というのがあります。執筆者がお互いはてなユーザーであれば電子書籍作成の共同作業を行う場所として悪くはないと思います。

 

本文を書き終えたら、次に、それをすべてWordに貼りました。このためにWordを購入しました。Wordをわざわざ利用した理由は、

  • Wordの校正機能を利用したい
  • WordからAmazonにおける電子書籍にするのが便利

というのがあります。Amazonでは下のようなページがあるなど、Wordから電子書籍を作成することをお勧めしています。

Amazon Kindle ダイレクト・パブリッシング: Amazon の Kindle ストアでの電子出版に関するヘルプ

このガイドでは、Microsoft Word を使用して Kindle Format 8 の本を作成する方法について説明します。Kindle Format 8 を使用している本は、HTML でデザインすることもできます。本を HTML でデザインするためのヒントについてはこちらをご覧ください。

目次はもちろん、フォントサイズ、アンダーライン、太字なども反映されますので、HTMLに親しみのない人はWordが便利だと思います。

 

電子書籍化工程 ~手間等からAmazonのKindleを選択~

電子書籍は個人で発売するときに複数の媒体が考えられます。今回はAmazonの電子書籍であるKindle限定にしました。理由は、

  • Amazonはすでにアカウントを持っていた
  • Amazon以外の電子書籍では知人がいて身バレのリスクがありそうだった
  • 自分がユーザーとしてAmazon以外の電子書籍のサイトをまともに使ったことがなかった

というものです。

ただ、最大の理由は面倒だということです。商業本であれば各サイトの電子書籍化プロセスについて著者が意識する必要はないでしょうが、自分のような個人の場合は、それぞれの媒体別に手続きを考えること自体が億劫でした。発売タイミング、内容や価格の変更がどれくらいで反映されるかを検討すると頭が痛くなる。

電子書籍化工程について広く利用されているでんでんコンバーターではなく、先に紹介したWordからAmazonのKDPのページで変換をしたのも、執筆以外の余計なことをあまり考えたくなかったというのがあります。

 

差別化戦略 ~個人の電子書籍でも敵は商業本?~

今回出す本については、商業本とも、一般の電子書籍とも差別化したものにしたいと考えていました。

理由の一つとしては、以前にこのようなアンケートをしましたが、値段が高くても紙媒体のほうが好ましいと思われる方が一定数いらっしゃったからです。

Amazonの電子書籍の売れ筋ランキングは商業本が大半を占めています。同じ棚に売られていれば、読者にとってはそれが出版社がバックにいる本か、個人によるものかはどうでもいいことです。電子書籍のデメリットを可能な限り排除しつつ、商業本とも競えるように、以下のことを実行しました。

  1. 本文を縦書きに
  2. 表紙は商業本と並んでも違和感がないものに
  3. イラストを豊富に
  4. 分量は少なすぎることがないように
  5. 価格は適切なものに

縦書きにした理由は、ネットで無料で読める文章が横書きが多いからです。縦書きだと堅い感じがしますよね。本の内容にも合っていると考えました。

 

具体的な差別化戦略 ~表紙は本の顔、イラストましまし~

表紙についても、自分がやるのは限界があったため、ブログのヘッダー画像を作ってくれた友人にお願いしました。とても可愛いものに仕上がりましたよね。

ぼーっとしている人が「自分の人生と向き合う」ためのQ&A30

表紙を作成するにあたっては、AmazonのKindleの表紙の仕様を伝えた上で、ジャンルが被っていて売れている商業本と、自分が以前に良い本だと紹介した以下の3冊を参考にしてもらうようにお願いしました。 

また、電子書籍の多くは読者目線で文字ばかりで疲れるという印象がありました。上の3つめの本の著者である医師の森戸やすみさん(id:yasumi-08)がご自身すべてイラストを描かれていたことに感銘を受け、Q&Aの最後に必ず自作のイラストを掲載するようにしました。ペンタブで自力で描くのにはクオリティが均一にならないおそれから○や△などのパーツの組み合わせにしています。

f:id:topisyu:20151223040914p:plain

分量は、結果的に112ページとなっていましたから、お値段(当初99円、現在250円)からするとお得感を感じていただけていたようです。かなりエゴサーチをしましたが、量が少なくて高いという感想は見かけていません。

皆さんが気になる価格設定をどう検討したかについては次回に触れます。

 

締め

こういったことを個人で色々決めていきました。3ヶ月はあっという間でしたね。

ほぼすべて初めての作業であったことからかなり苦労はしたものの、電子書籍市場について理解が深まりましたし、読者からかなり多くのフィードバックが得られたので、とても充実した時間を過ごせました。

価格戦略、PR戦略、Amazonの審査手続き、読者からのツッコミ内容等は次回紹介し、総括いたしますが、

  • 編集大事
  • 表紙大事
  • 校正大事

ということはお伝えしておきます。

一人でもできるところに電子書籍の魅力がありますが、一人でやることの限界もあります。誰か他の人の協力を得たほうがクオリティは向上します。揉めない程度に上手く作業範囲等を取り決めた上で、協同作業をすることをお勧めいたします。

 

追記

編集のsteinさん視点。