11日にワタミが中間決算で赤字を計上し、年内で102店国内の店舗を閉鎖するという報道がありました。
同日、富士フイルムは中期経営計画として、自己株買いと配当で2千億円強を投資家に還元し、M&Aを積極活用しヘルスケア等の事業を強化し、デジカメ事業は縮小するという報道がありました。
一般には、ワタミは居酒屋の会社というイメージが強いでしょうし、富士フイルムはカメラの会社というイメージがあるでしょうから、こういう報道を聞くと驚かれる方もいらっしゃると思います。会社はどうなるのか。
ただ、これらの方針も、各社の事業別の業績を追っていると特に違和感なく受け止められる部分があります。
先月、こんな記事を書きましたが、
今回は会社のセグメント情報(事業別の情報)をチェックすることで、その会社の方向性を何となく見て取れますよということを紹介してみます。
内容は、それ以上でもそれ以下でもありません。プロ向けではありませんから、あしからず。
上場している会社は大体セグメント情報を開示しています
ややこしいことは抜きにしますが、上場していて事業がある程度複数に跨っていると、企業はセグメント情報というのを開示することになります。セグメントとは英語のsegmentで"部分"という意味ですね。事業別の情報ということです。
開示しているのは各社のIRのページの決算短針(及び有価証券報告書。どっちでもいい)です。会社名+IRというキーワードで検索して、各社のIRページにいくと置いてあります。
このセグメント情報を各社チェックすると実は思っていたイメージと違って面白いことが分かることがあります。
ワタミは介護と宅配食品が利益源の会社
まずはワタミから。
以下の表はワタミの2011年3月期のセグメント情報です。
※表は平成24年3月期 有価証券報告書から
ご覧のとおり、売上で一番大きいのが国内外食事業で808億円の売上に対し42億円の利益で事業の最大の柱だったことが見て取れます。
一方で、2014年3月期のセグメント情報がこちら。
※表は平成26年3月期 有価証券報告書から
この3年で、国内外食は売上高722億円まで落とし、利益も赤字になっています。一方で、介護と宅食は成長していて、これらの事業が国内外食の代わりの利益源となっていることがはっきり分かると思います。
ここからワタミとしては、引き続き国内外食は利益が出ない限りは縮小を続け、介護は安定収益源としながら、宅食を中心に事業を拡大していくのではないかということが推測されます。
今年はワタミの社名を冠する店舗を中心に閉鎖していっています。あと10年も経たないうちに、魚民と争った和民の看板を見かけることはなくなるかもしれません。
富士フイルムはオフィス用機器と医療用機器の会社
次に富士フイルムについて。
富士フイルムはその社名の通り、写真のフィルムで有名でしたが、今ではカラーフィルムの売上は1%を切っています。さらに、デジタルカメラが含まれるイメージングソリューション事業は3つある事業の中で一番売上のシェアが低い状態です。
※画像は富士フイルムグループの事業領域(富士フイルムってどんな会社?) | 富士フイルムホールディングスから
ワタミと同じようにセグメント別の収益の推移をチェックしてみます。親切にも2003年からの11年分のセグメント別の数字がExcel形式でダウンロード可能です。
※表は富士フイルムホールディングス | 財務データダウンロードから
ご覧の通り、この期間でイメージングソリューション事業は売上を二分の一以下に、営業利益ベースではほとんど赤字続きで前期は何とか十分の一ぐらいの数字で維持できている状況です。
一方で、医療用機器が含まれるインフォメーションソリューション事業と事務用機器が含まれるドキュメントソリューション事業は2008年前後で多少の波はあるものの安定的に収益を稼いでいることが分かります。
収益率を考えればデジカメ事業を赤字を垂れ流さない、筋肉質な体質にしたいという中期経営計画は違和感がないのではないでしょうか。
締め
開示情報から会社に何が起こっているか、何が起きるか推測してみるというのは過去も何度か紹介しました。
セグメント情報は、月次の売上と同様に、比較的直感的に理解できるものです。
ソニーは金融、TBSは不動産だとか、セグメント情報を見ると、会社が一体何で儲けているかが一目で分かりますので、気になる会社があったらセグメント情報をチェックしてみると楽しいんじゃないでしょうか。
なお、ここまで書いた上で、Amazonで面白い画像がないか検索していたら以下の本が引っかかりました。
「強い会社」はセグメント情報で見抜きなさい 「ソニーは金融業」「TBSは不動産業」??財務諸表で読み解く各社のプラチナ事業 アスキー書籍
- 作者: 長谷川正人
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2014/11/07
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タイトルがそのまんまですね。ソニーとTBSがどれだけ引き合いに出やすいか分かるかと思います。Amazonでは中身を多少見れますので、どの企業にどう着目するか参考になると思います。(読んでないのでお勧めというわけではありません)
出版社はアスキー・メディアワークスで、こちらはHagexさんの本をアスキー新書で出していましたが、ビジネス書だったり、最近は色んな本を出版しているんですね。