斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

総務省への違法接待疑惑が出ている菅総理の長男が勤める東北新社の簡単な企業分析

今日も一人小町にしようと思ったんですが、気になった会社があったので簡単に企業分析をすることにしました。

元総務相として、父として…「ズブズブの関係」に菅首相の影 東北新社の接待問題:東京新聞 TOKYO Web

はい、今話題の東北新社です。15分ぐらいネットの資料をチェックして、思ったことを分かりやすく紹介していきます。ちなみに、東北新社はジャスダックに上場していて、経団連にも加入している企業です。

東北新社は放送事業会社というより国内大手のCM制作会社

東北新社は昨今の報道では放送事業会社として紹介されますが、 メディア事業は売上の2割程度しかありません。

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※グラフはセグメント別データ│財務指標│IR情報│東北新社より

事業のもっとも大きな柱はCM制作です。売上の4割ぐらいです。

どんなCMを手掛けているかというと、

f:id:topisyu:20210224011212p:plain2021年3月期第2四半期決算報告書より

上のCMをご存じの方も多いのではないでしょうか。我が家にはテレビがないので、寡聞ながらどれも存じ上げません。

次に大きな事業はコンテンツ制作です。映画制作や音響字幕制作になります。これも大きな収益の柱です。その次がメディア事業という位置づけです。

放送事業者の東北新社と言われているのは業界の人からすると「いやいやいや」って感じでしょうね。今回の件で追求する上ではその方が分かりやすいでしょうが、私は不正確だと思います。

売上は右肩下がりも黒字確保

売上高は2017年3月期をピークに右肩下がりです。

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※表はセグメント別データ│財務指標│IR情報│東北新社より

今期はコロナ禍で広告費が随分削減された影響もあり、売上高は522億円と前期比-13%の減少ですが、営業利益はしっかり9億円ぐらい出せる予定のようです。

売上原価がほぼ売上高連動の変動費のようなので(プロダクション会社とか外注費が大半?)、一般管理費がほぼ固定費だとして、売上が400億円ぐらいまでであれば営業黒字を維持できる財務体質です。

今回の件で仮にメディア事業が全部吹っ飛ぶようなことがあっても会社は存続できるはず。

現金盛りだくさんで、株価は激安のPBR 0.4倍

次にバランスシートです。

総資産は900億円程度、純資産(自己資本)は700億円ぐらい。借入にほとんど依存しない財務体質ですね。一方で、時価総額は300億円ぐらい。時価総額/純資産のPBRは0.4倍ですから、PBRが低い企業が多い日本企業の中でも低いほうです。

資産サイドを見ると、

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2021年3月期第2四半期報告書より

現金が300億円あって、有形固定資産が200億円あって、投資有価証券が110億円あります。CM制作で土地建物を持っている意味はあまりないので売却しても問題ないとすれば、実質700億円ぐらいのお金がある会社です。多少の赤字が出ようが絶対に潰れません。

言い換えれば、上場しているよりも今すぐ会社を畳んで資産を売り払ったほうが株主には多くのお金が還元される会社です。株主からしたら不満が出そうですよね。

創業家が62%を保有しているから株主からは不満は出ない?

東北新社の株価の低迷が問題にならないのは、上場している株式の62%が創業家に保有されているからと考えられます。

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2020年6月26日支配株主に関する適時開示より

ご覧のような状況ですから、少数株主が株価の低迷を憂いようが創業家が問題視しなければ会社は変わりません。歴代社長はずっと創業家一族で来ていますから。現社長の二宮清隆さんは創業者の娘の二宮五月さんの夫にあたります。今回、菅さんのご長男と一緒に総務省の接待をされた方ですね。

ただ、この創業家が支配している状況も変わる可能性があって、上の注釈にある通り、まず、創業者の植村伴次郎が2019年に亡くなられ、そのご子息の植村徹さんも相次いで2020年に亡くなられています。植村伴次郎さんの株はご親族に相続されたようですが、植村徹さんの株はどうやら処分されたようです。

このため、現状の株主構成だと創業家は過半数を割る40%程度の株式しか専有していない可能性があります。

菅さんの件が話題になって、会社もてんやわんやでしょうが、

特別調査委員会の設置に関するお知らせ│ニュース│東北新社

※弁護士と副社長と監査役で特別調査委員会を設置したとのこと

恐らく、会社の中では、創業家をどう位置付けるかという議論が相当行われているのではないかと推測されます。何しろ、相次いで創業者とその次の社長が亡くなられ、創業家の影響力が低下し、そして後継の現社長が今回の不祥事に関与していたというわけですから。

今の取締役・執行役員のどこにも植村姓・二宮姓の人はいないので、もし社長が退任するようなことがあれば、創業家の色合いが一気に抜ける可能性があります。

ちなみに、本当に植村徹さんの持分が創業家に渡っていないとすれば、株価がもっと割安になれば村上ファンドみたいな人たちが狙ってきてもおかしくない状況ですね。

締め

以上、簡単に東北新社の企業分析をしてみました。ちなみに、従業員の平均年齢は40歳で、平均年収は500万円です。

私はほとんどよく知らない企業だったんですが、創業家が相次いて亡くなられていた中での、現社長による不祥事への関与ということで、会社の中は大変なことになっているのではないかと推測されます。お疲れ様です。

現在、特別調査委員会が調査をしており、報告書もいずれ公表するということですから、菅さんご長男及び菅総理の進退と合わせて、引き続き続報があればチェックします。

しかし、この件が公務員倫理規程違反に当たらなければ、掛け麻雀の黒川レートと同じく、

黒川検事長賭けマージャン 「レートはテンピン」「高額と言えぬ」 法務省局長答弁 | 毎日新聞

公務員の接待の概念が大きく変わるでしょうね。だって、タクシー券渡しても、7万円の食事を支払っても接待じゃないんだから。