斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

電通中間決算最高益の原因は、①研修所・運動施設の売却、②海外回復、③国内デジタル好調

電通の業績が注目されているようです。

電通中間決算は最高益 五輪効果、収益への影響は限定的:朝日新聞デジタル

電通がオリンピック・パラリンピックの広告事業を引き受けているのだから収益がいいに違いないという発想からのようですが、中間決算の中身を軽く見た限りでは、中間決算が最高益になっているのは、①研修所・運動施設の売却、②海外回復、③国内デジタル好調が原因です。

どうやって確認したかを簡単に紹介します。

損益計算書の内訳を確認

まず、今年の1-6月が最高益だということですから、電通が開示している決算書を確認して、どの利益項目で去年と差が出ているかを確認します。

損益計算書を下から眺めていくと、

f:id:topisyu:20210812122213p:plain

※文字の追記は筆者

営業利益で前年同期比で差が出ていて、それは固定資産の売却益291億円が効いているのと、粗利が300億円ぐらい改善しているのが効いているのが分かります。

固定資産の売却益は社員向けの運動施設と研修所の売却です。

電通グループ、都内の運動施設など売却 約300億円で: 日本経済新聞

セグメント情報の確認

では、粗利の改善は何が効いているのでしょうか。電通が開示している決算説明資料を見るとその分析があります。

f:id:topisyu:20210812122306p:plain

ご覧のようにDI(電通インターナショナル。電通の海外事業)の貢献と、DJN(電通ジャパンネットワーク。電通の国内事業)の貢献というのが見て取れます。北米・ヨーロッパを中心に今年の1-6月は景気が回復していたので、海外の広告が好調だったということです。

国内売上は会社別で内訳が出ていますが、デジタル領域の成長が顕著です。

f:id:topisyu:20210812122709p:plain

締め

ということで、電通の中間決算最高益の内訳は、金額が大きい順で①研修所・運動施設の売却、②海外回復、③国内デジタル好調ということのようです。

オリンピック・パラリンピックによる売上は7-8月にも一部計上されるかもしれませんが、少なくとも1-6月では利益の貢献は限定的に見えます。

ちなみに、電通は皆さんご存知の通り売上(収益)は海外55%、国内45%と海外の方が大きく、それもあって執行役員の半分ぐらいは外国人になっています。

f:id:topisyu:20210812123903p:plain

また、電通はこの5年ぐらいで成長率が下がっていて(今期は回復予定)、資産の効率性を示すROAも2019年2020年と二期連続でマイナスでした。

f:id:topisyu:20210812124156p:plain

ここ10数年の電通は、国内はデジタル領域に注力することで何とか売上を維持しつつ、海外企業を買収して海外売上を伸ばしてきたわけですが、ROEやROAは改善が見えていないため、資産効率改善を目的として本社ビルの売却を発表しました。

電通グループ、本社ビル売却益890億円: 日本経済新聞

電通というと国内の政府やテレビ局との関係が注目を浴びがちで、その観点だけで分析しようとすると限界があります。

今回三要素として取り上げた、資産効率性、海外進捗、デジタル事業の観点で眺めてみると、電通全体をより俯瞰的に見えるようになると思います。

今日は、こんなところです。ではでは!