斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

新型コロナ後のJTB、HIS、近ツリ・クラブツーリズムの取扱高≒客数が前年同期比約2%(98%減)の衝撃

子どもが読んでいる読売KODOMO新聞で、旅行代金の一部を利用者に還元するGo To キャンペーンが紹介されているのを見かけて、遅ればせながら旅行客数がどれくらい減少しているか気になりました。恐らく、ほとんどの人がすでにご存知だと思いますが、個人的にはとても衝撃的な数字だったので紹介します。

ものすごくざっくり数字を捉えているところがあるので、その辺が耐えられない人はそっ閉じを推奨します。

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※この光景はしばらく見られない

JTB 国内販売人員 2%の見通し

JTBは非上場で月次の取扱高を公表していません。毎期の決算は確認でき、

2019年度 連結決算概要|JTBグループサイト

すでに今年の3月決算で業績へのダメージがあって、業界紙での5月末時点の報道では、4~6月の販売人員(客数)が国内で前年比2%、海外でゼロという見通しだそうです。

JTB連結決算、大幅な減収減益も黒字確保、コロナ影響で売上1000億円減少 -2019年度 | トラベルボイス

こうした状況下で第1四半期(4月~6月)の販売人員は、国内ツアーのエースJTBで前年比2.0%、海外ツアーのルックJTBでは前年比ゼロとなる見通しだ。

常時であれば売上高は1.3兆円程度ですから、もし年間通してこの水準なら、売上高が2%で約300億円です。従業員数約3万人で、仮に給与等を300万円としても1000億円はかかるから、もろもろ考えれば、今の純資産1600億円は人件費を賄うだけでも2年以内に底をつく=債務超過。

HIS 取扱高4月1.5%、5月1.8%

海外旅行に強いHISでは、海外は当然、訪日観光客需要も国内需要もガタガタで、取扱高は4月1.5%、5月1.8%です。グラフになっていて一番見やすい。

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※画像は月次業績速報 | IR情報 | HISグループから

HISは売上高が例年4000億円ぐらいですから、取扱高2%未満が1年続いたときの売上高は100億円に満たない。従業員数は1.5万人で、こちらも給与等を約300万円と見積もると約400億円で、純資産1200億円は人件費を賄うだけでも3年以内に底をつく=債務超過。

KNT-CTホールディングス 4-5月の取扱額1.8%

近畿日本ツーリストとクラブツーリズムが一緒になった会社KNT-CTホールディングスの4-5月の取扱額は1.8%でした。

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※画像は月次取扱額状況から

売上高は例年4000億円ぐらいですから、通年続けば売上はこちらも100億円を満たない。従業員数は約7000人で、こちらも仮に給与等を約300万円とすれば200億円で、純資産180億円は人件費を賄うだけでも2年以内で底をつく=債務超過。

締め

想像はしていたものの、実際に数字を確認し、財務に与える影響をものすごーくざっくり計算してみたら想像を絶する水準でした。旅行代理店業界でのリストラは避けられないはず。

話は変わりますが、旅行代理店が前年比2%ということは観光旅館・ホテルでも同様の傾向があって、現に、西武ホールディングスのシティホテルでさえも前年比3-5%程度の売上です。稼働率(部屋がどれだけ埋まっているか)は一桁%台。

月次データ | 西武ホールディングス

そして、国内の旅行業界では、国内向け海外向けでも8月が最も売上が多い月です。

そうとなればGo Toキャンペーンが7/22に始まるようになっており、また、なかなか中止・変更の判断ができずにグダグダになっている背景も大変よく想像できます(≠納得し、歓迎する)。日本の重要な基幹産業としてここ10年ぐらい育ててきた観光産業が壊滅しつつあるのだから、ピークの8月に合わせて一息付けるようにさせたかったのでしょう。

ただ、沖縄では観光客の半数を占める東京発がキャンペーンの対象外になり、お金を落とす高齢者や、数が多い若年層も除外ということになれば、仮にこのままでGo Toキャンペーンが実行されても最大で前年比50%の客が戻ればいいほうだと思います。旅館・ホテルは稼働率6割ないと黒字化できないとされていますから、対策費用も考慮すれば、キャンペーン効果があってもどこの旅館・ホテルも赤字での営業となるはず。

大阪の黒門市場が閑古鳥を鳴いているように、仮に2年後ぐらいに新型コロナウイルスが落ち着いたとして観光地に行ってみたら、ちょっと前の盛況な状況が嘘のようにシャッター通り化しているんじゃないかと推測します。

観光業は、地方創生の一つの重要な柱であり、インバウンド需要で実際にかなり盛り上がった地域もかなりありました。それが、壊滅的な状態になっているはず。産業の裾野が広すぎて2年間すべて税金でカバーはできてないだろうし、インバウンドも2年間ではフルには戻らないだろうし。

私自身は旅行は疲れるので苦手だし、自分で料理をするのは好きだし、家に居るのは家族揃って大好きだから、今回のキャンペーンを利用することはないでしょう。ただ、私が食べるのが・見るのが好きな何かについては、訪問することはなくとも何らかの方法で消費をして、せめてその何かが残ってくれるといいなと考えています。

今回は旅行業界について取り上げましたが、私はまだ新型コロナウイルスで、何が起きたか・起きているか・起きるかをほとんど想像しきれていないはず。