斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

ストッキング・タイツのアツギ株式会社の簡単な財務分析

ストッキング・タイツ・レギンスを製造販売しているアツギ株式会社が話題になっていたので検索したら上場会社であることが分かったので、簡単に財務諸表を見てみることにしました。

IR情報|決算短信|ストッキング・タイツ・インナーウェアの【アツギ】

財務諸表を見ることはそんなに難しくなく、企業の健康状態が数十分で理解できるので、皆さんも気軽に財務分析をすることをお勧めします。

まずはPL(損益計算書)から

直近の上半期のPLを見ると売上が前期比で約4割減で、大幅な営業赤字に陥っていることが分かります。

2021年3月期 第2四半期決算短信

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皆さん知ってのとおり、新型コロナウイルスの影響はアパレル産業に大打撃となっており、特にEC主体ではなく、百貨店など実店舗主体のアパレルメーカーは大きく業績を落としており、アツギもその例外ではないようです。

今期の業績が悪いのはある意味想定通りなわけですが、気になるのは2020年3月気の上半期も売上減が起きており、営業赤字だということです。

もしかしたら恒常的に売上が下がっているかもしれないと、過去分の決算も見てみたところ、

2020年3月期 決算短信

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前期は通期で、そして前前期も通期で前年対比で売上が減少しており営業赤字なようです。更に遡ると業績は2017年の売上高230億円、営業利益10億円がピークで、以降は業績が急激に悪化しています。

事業としてはストッキング・タイツ等の繊維製品の製造販売が売上の大半で、ここ3年の売上減は、冬物の季節商品が売れていないこと、インバウンドの減少が影響している模様。定番商品は安定して売れている一方で、成長ドライバーになるようなブランドある製品が作れていないことが課題にあるようです。

つぎにBS(貸借対照表)を

PLが悪くて営業赤字と聞くと会社が潰れてしまうと思うかもしれません。実際そんなことはないのですが、アカギアツギのBSを見てどんな財務体質がチェックしてみます。

2021年3月期 第2四半期決算短信

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BSは最初に右側(貸方、負債・純資産)を確認します。ご覧の通り、アツギは負債・純資産の合計で420億円に対し純資産が350億円もあるという自己資本が厚い状態です。負債の科目を見ても銀行借入・社債はありません。

会社が倒産するというのは債務の支払いができなくなる状態で、アツギは外部への支払い債務がせいぜい40-50億円程度しかありませんから、こんな状況なら、倒産みたいな状態は起きにくいです。さすが日本企業は財務体質が盤石です。

ただ、右側で債務が少なくとも、左側の資産に十分な流動性がないと債務の支払いができなくなりますから、次は左側(借方、総資産)を見てみましょう。

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現預金が未だに70億円もありますし、支払債務以上に売上債権がありますから、この時点で財務的にはかなり安心できます。気になるのは商品と仕掛品が重たそうなところです。売上が今期は170億円ぐらいに低迷しそうな中で、商品・仕掛品がこれだけ思いと商品によっては減損の必要が出てくるはずです。

それはそれとして、アツギは不動産事業と太陽光発電と介護事業も行っており、それが土地の130億円と投資有価証券63億円に紛れ込んでいるはずで、これらの資産もいざとなれば第三者への売却は容易ですから、さらに財務体質が盤石であることが分かります。

この様子なら今の業績低迷が5年続いても問題なさそう。

最後に簡単に株式指標も

本当ならCF(キャッシュフロー計算書)も見るところですが、PLとBSを見ればCFは間接的に何が起きているかは想像できますし、アツギはそんなに面白いCFではなかったので(特別な事象が起きていない)割愛して、せっかく上場しているのだから株式指標を少し見てみます。

アツギは2017年3月期に時価総額210億円ぐらいだったのが、この3年ぐらいで業績低迷によりずるずる下がって今は80億円ぐらいになっています。

アツギ株式会社 (3529.T) | 株価 | 株価指標 | ロイター

赤字ですからPERを見てもあまり意味がないので、EV/EBITDA倍率を見ると大体6倍ぐらいのようです。アパレル企業としては8倍ぐらいで高い水準なので、業績の低迷からすればそんなに違和感のある水準ではありません。

一方、PBRは0.4倍です。アツギは無借金状態で、資産には現金化できるものがたくさんあるのはすでに見てきたとおりですから、PBRの観点ではアカギアツギは超お買い得な銘柄です。

こうなれば敵対的買収をしかけられてもおかしくなく、それに対抗できるかどうかが気になります。株主を見ても、東レや旭化成や江綿やオンワードが取引上数%ぐらい持ってくれていますが、他の株主は機関投資家ぐらいです。

アツギ【3529】の大株主と資本異動情報|株探(かぶたん)

アツギの浮動株比率は高いと考えられますし、アツギのホワイトナイトになる企業もあまり想像がつかないので(今どき国内のストッキング会社が欲しい企業は少ない)、となると敵対的買収には弱い会社だなと思います。

私が経営者だったらMBOでの非公開化を検討します。

締め

以上、簡単に財務分析をしてみました。

今回ぐらいの精度で、PLで売上と営業利益を見て、ついでにBSで財務の健全性を見て、少しCFと株式指標を見る……というぐらいであれば大体10分もあればできるようになるはずです。もう少し詳しく見るとしたら、マージンの推移がどうなっているか、販管費が重たくないか、売掛・買掛の回転期間に異変がないか、(借入があれば)借入余力があるかといったものを見ていきます。

人間は健康診断をしますが、企業の健康診断が財務諸表(と分析)みたいなものです。自分が所属している企業や関心を持った企業の健康状態を見てみると、なぜその企業がこのような事業戦略を取っているかが少し想像しやすくなるはずです。

アツギの場合は、ここ数年でインバウンドや実店舗向け売上が厳しくなっており、オンラインでの販売強化の必要があるということですね。

ではでは! 

※この商品展開はいいと思う。