先日、オリパラ組織委会長の森喜朗さんの発言を取り上げました。
「女性がたくさん入っている会議は時間かかる」「女性はいくらでもうそをつけますから」が冗談として機能しない世の中にするために「傍観者」にはならない - 斗比主閲子の姑日記
私はその後の森さんによる謝罪会見を荻上チキさんのSessionで、その場で更問をした澤田記者の解説付きで聞きました。
謝罪をしたものの、その後もこの件は鎮火の気配が見えず、東京都や総理大臣・閣僚に抗議の声が上がり続けています。
「更迭すべきだ」「許せない」 森会長の女性蔑視発言、東京都に抗議電話100件超 - 毎日新聞
森喜朗氏の女性蔑視発言、閣僚から辞任求める声なし - 毎日新聞
それで、この件を見ていて、公益財団法人である東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の会長の解任を東京都や総理大臣ができるものなのかなと思って調べてみました。普通に考えれば、権限があるはずがないので。特定の法人の役員の解任を政治家・行政ができるはずがない。
昨年3月に書いた記事の派生系です。
東京都はオリンピックの開催を中止できない。契約書上、中止できるのはIOCだけ(開催都市契約2020より) - 斗比主閲子の姑日記
で、結論からいえば、森会長の解任は東京都も総理大臣も権限はありません。できるのは、組織委の理事だけです。理事が理事会を開いて過半数の承認を得れば解任できます。組織委の定款・理事会運営規程に書いてあります。
理事会の招集は会長だけができるように読めますが、一般法人法にも準拠するとあるので、一般法人法を読めば理事は誰でも招集が可能です。
では、誰が理事をやっているかというと、以下の方々です。
作詞家 秋元 康
麻生セメント株式会社代表取締役会長 麻生 泰
国際オリンピック委員会オリンピックプログラム委員会委員 荒木田 裕子
公益財団法人日本スポーツ協会副会長兼専務理事 泉 正文
福岡ソフトバンクホークス株式会社取締役会長
一般財団法人世界少年野球推進財団理事長 王 貞治
日本政府代表 中東和平担当特使 河野 雅治
東京都議会議員 小山 くにひこ
東京都議会議員 髙島 なおき
株式会社コモンズ代表取締役会長 高橋 治之
公益財団法人日本オリンピック委員会副会長
公益財団法人日本サッカー協会会長
国際サッカー連盟カウンシルメンバー 田嶋 幸三
オリンピアン(体操) 田中 理恵
オリンピアン(柔道) 谷本 歩実
トヨタ紡織株式会社取締役会長 豊田 周平
東京都オリンピック・パラリンピック準備局長 中村 倫治
公益財団法人日本障がい者スポーツ協会日本パラリンピック委員会参事 中森 邦男
パラリンピアン(水泳) 成田 真由美
写真家 映画監督 蜷川 実花
衆議院議員 馳 浩
東京都議会議員 東村 邦浩
公益社団法人関西経済連合会会長
住友電気工業株式会社取締役会長
近畿陸上競技協会副会長
公益財団法人日本陸上競技連盟評議員
一般財団法人大阪陸上競技協会会長 松本 正義
参議院議員 丸川 珠代
スポーツ庁長官 室伏 広治
公益財団法人日本スポーツ協会常務理事 ヨーコ ゼッターランド
公益財団法人日本陸上競技連盟会長 横川 浩
国際オリンピック委員会委員
国際体操連盟会長 渡邉 守成
秋元康さん、王貞治さん、田中理恵さん、蜷川実花さんみたいにみなさんがご存知の方がたくさんいらっしゃいますね。この方達の誰かが理事会を招集すれば、森喜朗会長の解任の決議を諮ることができます。理事会は議事録が残りますから、誰が賛成反対したかもたぶん?分かる。
ぱっと見で、理事会を招集するインセンティブがあるとしたら、森会長の発言を批判した小池都知事が旗揚げした都民ファーストの会に所属している、東京都議会議員の小山 くにひこさんでしょうか。オフィシャルサイトに問い合わせ先があり、Twitterもやっている。
ということで、もし、森会長が辞任したほうがいいと思う人がいらっしゃったら、上記に挙げた理事に働きかけるのが有効ですね。総理大臣や東京都知事に間接的にプレッシャーをかけるというのももちろんできるけど、結局は、理事会の過半数の承認が必要になります。
以上です。以下、余談です。
ロビー活動は地元の地方議員を捕まえるのがおすすめ!
以前に教職員の配偶者の方からモヤモヤメールをもらいましたが、その後、こんな質問がありました。
感想「公立教師の夫が運動部の顧問で休みが取れず、今後子どもが生まれた後に彼が子育てしてくれるのか不安です」 - 斗比主閲子の姑日記
追加での質問になり恐縮ですが、斗比主さんは例えば私が教師の働き方について改善を訴えたいと考えているように、政治的に何かを訴えたいときになにか個人でできるロビイングのような活動はされていますでしょうか?
よくはてブで「地域の議員に声を届けるといい」などというコメントを見かけますが、議員にどのように声を届けたらいいのかもわからないですし、自分の声など聞いてくれないのでは、メールや手紙も無視されるのでは?と思ったりします。
最近も斗比主さんの資産の格差が広がる件に関してのツイートで「既に莫大な資産を築いている層への資産課税強化を政治に訴えること。何もしなければ10年後も資産格差は拡大する。」という文言を拝見したので、「政治に訴える」には、自分には何ができるんだろう?と思っており、斗比主さんがなにか個人でされてることがあれば教えていただけますでしょうか?
私がしたことがあるのは地方議員への働きかけです。さすがに資産課税強化を地方議員に伝えてもしょうがないので(ネットの片隅で叫び、投票行動で示すのみ)、公園や学校の運営みたいなもので困ったことがあったらメール・電話します。例えば、学校のICT化が進んでいないとか。
この手法は立憲民主党の枝野幸男さんも推奨しています。
今はちょっと支持できないです…枝野さんに正直な疑問をぶつけてみた ネクストキャビネットは作らない理由(withnews) - Yahoo!ニュース
――若い人の声を政治に届けるにはどうすればいいですか?
枝野:まずは若い人たちが声を上げなくちゃいけないですよね。政治へのアプローチの仕方が分からないときはどうしたらいいのか。地元の地方議員を捕まえることです。
できれば大きな政党に属している議員を。教育や子育ては立憲民主党なり野党側だろうと思いますし、他のテーマだったら自民党かもしれない。共産党かもしれない。それぞれのテーマごとに得意な政党はあります。
今回、都議会議員さんの名前をあえて出したのも同じ理由です。働きかけるならこの人ですよと。さすがに東京都の都議会議員ともなると数万の得票数が必要になるので、都民一人一人の意見への対応はそこまで期待できないでしょうけどね。
ただ、市議会議員や区議会議員ではまったく様相が異なります。埼玉県の戸田市議会議員選挙で、スーパークレイジー君が1000票程度で当選したように、地方議員はかなり少ない票差で当落が決まります。
スーパークレイジー君の当選によせて - 西東京日記 IN はてな
ですから、例えば地元で困ったことがあれば、友人知人ら10数名ぐらいで地方議員に直談判しにいくと、地方議員はかなりの確度で真面目に話を聞いてくれます。PTAの会長とかなら絶対に話を聞く。聞かざるをえない。
余談ですが、今検索して面白い記事(地方議員とPTA役員を兼務することにかかわる一議論 - iemoto BLOG)があったので紹介します。地方議員がPTA役員を兼務できるかを法律や条例の観点から検討したもの。超面白かった。
話がそれました。
別に自民党がダメということではないので、地元の議会を傍聴してみて積極的に市民の声を集めている議員さんに目星を付けましょう。一人に塩対応されても、複数の議員さんにダメ元でアプローチすればいい。
地方議員と話をすると、日本は民主主義の国なんだって実感できるのでお勧めです。私は過去にボランティアで地方議員のお手伝いをしたことがあり、そのときに、陳情に来るたくさんの人々の話を聞くことができて、とてもほっこりしましたよ。