斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

父親は立派な仕事。そして、父親というのは、子どもが居て成り立つ職業。子どもが守られる世界は、父親も守られる社会

この記事を読みました。

母は保育士、父は教員 入学式も参観日も親は不在…反抗した娘が今伝えたい思いは|高校生新聞オンライン|高校生を応援するニュース・情報サイト

全国高校総合文化祭の弁論部門に出場した、工藤美有紀さん(長野・文化学園長野高校3年)へのインタビューと弁論文を紹介したものです。

内容は、「美有紀さんの両親が教師と保育士という他人の子どもを育てる職業で、美有紀さんが子どもの頃は特に母親が自分より他の子どもを優先していると気持ちが荒れたが、高校生の今となってみると母親が仕事を辞めようと悩んでいたことを知り自分がないがしろにされていたわけではないということは分かったとし、日本社会が働く母親も、そして子どもこそ犠牲にしないようになって欲しい」といったものです。

これに関して思ったことをつれづれに書きます。

教師や保育士は他人の子どもより自分の子どもを優先すべき派

記事の中では、美有紀さんの両親が美有紀さんの学校イベントに参加できないことが触れられています。

小学校の入学式。ぴかぴかのランドセルとキラキラの笑顔が輝いたあの日。父は職場での入学式、母も入園式がありました。それからというもの、学校での避難訓練の迎えも、参観日も、体調が悪くて早退する時も、親が学校に来てくれることは無く、いつも祖母が来てくれました。

これは学校の先生あるあるですね。

で、私としては、教師にしても保育士にしても、他人の子どもの入園式・入学式よりも自分の子どもの入園式・入学式を優先すべきと考えています。そのほうが社会の持続可能性があるから。

「自分の子どもと私たちの子どもたちとどっちが大事なのか」みたいなリアクションをする親が一定数いるから、何だかんだで、自分の子どもを優先しにくい教師や保育士がいるのは知っています。私の教師の友人が自分の子どもを優先したことで、自分の子どもが通う学校の他の親(勤務する学校の親ではないですよ)から、「先生なのに自分の子どもを優先して」と陰口を叩かれているのを聞いたことがあるぐらいだから。

必ずしもみんながそう思っているわけではないということを伝えるためにも、何度か書いていますが、私は教師や保育士は他人の子どもより自分の子どもを優先すべき派であることを繰り返し宣言します。入園式や入学式がダブルブッキングしたら、先生にはさくっと仕事の入園式や入学式を休んでもらいたい派。

子どもが守られる世界は、頑張る父親も守られる社会

あと、記事の中では、美有紀さんの父親は家族のサポート役っぽくて、育児の主役は母親であるように読めます。

私は、親と一緒にご飯を食べたい。親と一緒に学校で合った嬉しい事を話したい。親と一緒に夜空を見て、星が綺麗だと言いたい。毎日どこかで起きる「家族の小さな幸せ」をみんなで守っていきたいだけなのです。 子どもが守られる世界は、頑張る母親も守られる社会です。

私は、子どもの考える働く母親の理想像を大切にしたいと考えます。母親は立派な仕事です。そして、母親というのは、子どもが居て成り立つ職業です。母親がどれだけ頑張っても、子どもがどれだけ願っても、彼らの考えを取り上げない限り未来が変わることはありません。「私は、ずっと社会の第一線で働き続けたい。」その思いに犠牲になるものなど、あってはなりません。

弁論としては、父親にスポットをあてるより、女性活躍が叫ばれている昨今では、母親の働き方とそれに対する子どもの思いを書いたほうが注目をされるという意識があってのものかもしれないですけどね。戦略的には非常に正しい。

いずれにせよ、この弁論では、子どものためにも母親が守られるようにということが最後のメッセージとして書かれているんですが、これも以前から書いている通り、私は、子どものためにも、そして母親のためにも、父親も守られる社会であってほしいと考えています。

Father and Daughter #1

※この写真、格好いいな

「女性より男性の方が性別を理由とした制約や推奨を受けている」「男の子は男の子らしく、女の子は女の子らしく育てるべきと考えている母親は4割、父親は6割」 - 斗比主閲子の姑日記

以前の医学部入試で女性受験者が点数を下げられていたのは、大学病院での酷使に耐えられるのが男性だからということが徐々に明らかになっていったとおり、女性が社会で働きにくい背景には、男性が安く長時間こき使われている状況がかなりあります。

これも以前から何度か書いていますけど、私の観測範囲では、父親の長時間労働やハラスメントが改善されれば、家庭内トラブルの5割は起きません。長時間労働で忙しくて疲れていてストレス感じてたら、家事育児なんで無理だし、家庭内コミュニケーションが雑になりますから。職場でのハラスメントをDVとして負の連鎖にするとかもありがちだし。

この弁論文にあるとおり、子どもの権利を守るためにも、そして、母親を守るためにも、父親自身のためにも、父親はもっと社会から守られて欲しいと私は考えています。美有紀さんの文章では"頑張る母親も守られる社会"とあるけど、私は"頑張らない母親も父親も守られる社会"にしたい。いつでもみんな頑張れるわけじゃないから。

締め

以上、つれづれに書いてみました。

美有紀さんが弁論文を発表したのは、全国高校総合文化祭というところで、私は寡聞にも知らなかったため、少し調べてみたところ、公益社団法人 全国高等学校文化連盟が主催者ということでした。

で、いつもの通りこの団体のメンバーの性別をチェックしてみたら、名前だけで確認する限り、理事~顧問の総勢30人で全員が男性でした。

世の中がダイバーシティだと言われて子どもたちにも様々な教育が施されている中で、高校生男女向けのイベントを主催する団体の役員が、このように性別が偏っているのは何とも情けない限りなので、新聞社が徐々に女性役員比率を増やしているように、もう少し何とかならないものですかね。