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斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

個人の善意にあぐらをかいて劣悪な環境で働かせる「悪意」

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仕事に絡んだ問題の中には、その仕事の内容に見合った適切な報酬の支払いと人員配置がなされていれば解決できるものが多くあります。

注:本文で善意と悪意という言葉は、法律用語として使っているものではありません。

 

鳥取養護学校での看護師全員一斉辞職

最近の事例だとこれもそうかなと思いました。養護学校に勤務する非常勤の看護師6名が一斉辞職したというもの。

鳥取養護学校:看護師全員が一斉に辞職 - 毎日新聞

野坂尚史校長は「本来は8人の看護師が必要。一刻も早く人材をを見つけたい」と話した。県教委は「医療的ケアを必要とする児童生徒が増え、看護師の体制が苦しかったとも聞いている。組織としての受け止めなどが不十分だった」と釈明。県看護協会などに派遣を要請中で、近く学校でのケアを再開する方針という。【小野まなみ、真下信幸】

保護者とのトラブルがきっかけで辞職したという報道ですが、校長先生の発言通りなら、元々適正な配置がなされていなかったということですよね。8人が定員の職場を6人で回すのは大変です。

現在、看護師は有効求人倍率が3倍を超えていて、業種としては引く手あまたです。地域的にかなり差がありますが、鳥取県は2倍は超えていそうですから、看護師人材は不足している。

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※画像は、日本看護協会の「都道府県ナースセンター登録データ」分析より。ちょっと古めのH24年のデータ。

そんな状態で、今働いている人たちの環境を改善しないで、その人たちの善意に期待していたら、辞めてしまうのも無理からぬ話です。

 

善意にあぐらをかいた劣悪な組織運営 

これに対して、一斉に辞めたら利用者に迷惑がかかるだろうという意見があるのを見ました。PTA論争でも見かけますね。「PTAを縮小したらそれまでの役割は誰がやるんだ。今のままで保護者が義務として負担するべき」という意見。

これは、問題のすり替えですよね。現実に苦労している人間に負担を押し付けて、組織や制度を維持させようとするもの。教員の部活動と同じで、個人に無理をさせていれば続くわけがありません。人間は意外とよく壊れます。

自分が供給者の立場に置き換えれば当たり前に受け入れられないことでも、利用者観点ではモンスター気味になってしまうことはあるんですよね。「○○なんだから、その仕事はやって当然」と役割(や報酬)を超えたものを期待してしまう。

 

必要以上の倫理観を求める地獄

先日、りそな銀行でとある有名人の方の個人情報がTwitterで流出したという話がありました。りそな銀行による謝罪文を読むと、

お詫びとご報告

6 月 8 日(月)、特定のお客さまが中目黒支店にご来店された情報が、Twitter 上に漏えいしていたことが判明いたしました。
お客さま並びに関係者の皆さまには、多大なご迷惑とご心配をお掛けいたしましたことを、深くお詫び申し上げます。

現在、事実関係については調査中ですが、調査結果に基づき、厳正に対処してまいります。
弊社では、全ての従業員に対して、守秘義務等に関する研修を行ったうえ、全社員から誓約書の提出を受けておりますが、金融機関としてあってはならないことであり、今回の事態を厳粛に受け止め、今後かかることが二度と発生しないよう、再発防止に全力を挙げて取り組んでまいります。

従業員の守秘義務の問題のように見えます。従業員教育に問題の原因を見出していそう。

ただ、経緯を調べてみると、どうやら非正規雇用で働いていた支店の受付窓口から漏洩したようです。そうであれば、非正規雇用の人物に重要な個人情報を扱わせているのがおかしいという議論も出てきます。

重要な情報ならば、安い給料で働いている人間に個人情報を厳格に守らせるという善意に期待していいのか。その扱いをする人物は厳正に選び適正な形態で働かせるか、個人情報の扱いに関して厳格な仕組みを設けた方がいいのではないか、みたいに。

本件に関する上記のtogetterのまとめを読むと、個人を非難している意見もありますけどね。個人を特定して晒し上げにしろという空気もある。低賃金で働いている人に過剰な倫理観を持たせた上で、社会的に抹殺しようというのは地獄だなと思います。

 

みんなお金貰ってないのに頑張ってる?

たまたま昨日読んだTweetでも、同じような話がありました。法医学者で小説家の椹野道流さんの一連のTweetです。

ここでのノーブレス・オブリージュは貴族が故の義務というより、善意ということで使っていますかね。

他のTweetを確認すると、交通費>講師料という状況で、両方共専門学校が負担していたものを、交通費を切るという話が専門学校側から出たそうです。元々安い講師料ではあったものの前の責任者との関係から受けていたのに、責任者が変わり、交通費のほうが大きいなら交通費を切っていいんじゃないかと、そういう話になった。

それで耐えられないから辞めると言ったら「みんなお金貰っていないのに頑張っているよ」とみんなを引き合いに出して、個人を責める。

 

締め

個人情報の流出は褒められた話ではありませんが、こういったことが積み重なって、個人の善意にあぐらをかいた組織やシステムを運用することのリスクが徐々に認知されていくんじゃないかと期待しています。

何かあると末端の個人の問題ということにされて責任を負わされる社会なんて、息苦しくて嫌ではありませんか?