斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

新幹線殺傷事件で容疑者の母親が出した謝罪コメントの報道スタンスが報道機関で結構違う

新幹線の車内で乗客が切りつけられた事件で、報道機関各社に逮捕された容疑者の母親がコメントを報道各社に送付したそうです。

私は、成人した責任能力のある人間の言動について親には責任がないという考えを持っていて、報道機関が親にコメントを取りに行く(と言いながら謝らせる)ことや、それを報道することを好ましいとは思っておらず、こういうときに、以前からブログで取り上げている通り、どの報道機関がどう報道するかをチェックしています。

今回の件での私が見つけられた主要な報道機関による報道は以下のとおりです。文量が多い順。

・産経新聞はWESTで謝罪コメントを全文掲載。

【新幹線3人殺傷】容疑者の母「自殺はあっても他殺なんて思いも及びませんでした」 コメント全文(1/3ページ) - 産経WEST

・朝日新聞は容疑者が発達障害であった点を削除してほぼ全文掲載。

「連れ戻していたら…」 新幹線殺傷、容疑者母コメント:朝日新聞デジタル

・NHKは概要を抜粋して掲載。

新幹線殺傷 容疑者の母親「耳を疑い信じられず」 | NHKニュース

・日経新聞は一文のみ掲載。(中部版は少し多いぐらいでほぼ変わらず)

容疑者の母親「一生償えぬ罪 心からおわび」 :日本経済新聞

・読売新聞は確認できず。ただ、容疑者の父のコメントは取りに行った模様。

のぞみ殺傷、容疑者の父「今は家族ではない」 : 社会 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)

・毎日新聞は確認できず。

以上です。

報道機関ごとで親のコメントをどう掲載するか、違いをチェックしたのは今回が初めてなんですが、結構違いますね。

産経WESTは社会関連の報道に熱心なので、全文掲載はやりそうなのが理解できます。朝日新聞もかなりの頻度で親にコメントを取りに行く傾向があるので違和感なし。読売新聞は変化球。毎日新聞は親のコメントを取りに行く傾向がある気がしているので、違和感があります。

毎日新聞については、6/10付で『容疑者自閉症? 「旅に出る」と1月家を出る』という記事を出し、その後記事タイトルを修正し、Twitterでは謝罪をしているので、

f:id:topisyu:20180612060518p:plain

その影響があるかもしれません。(親含めた)生育環境に触れないようにした?

容疑者が発達障害であった点についても、朝日新聞が恐らくは意図的に除外したように、報道スタンスは各社で異なるようです。

【追記】産経WESTでも発達障害であった点について削除されました。この点はメディアの対応で完全に横並びになりました。

容疑者が発達障害であった場合、責任能力があるかないかは程度にもよって刑事で色々な判断があります。簡単なテーマではないので今回は触れません。親の刑事的な責任云々も調べておきたいところ。

ちなみに、荻上チキさんが編集長をしている(していた?)、シノドスでこんな記事を見つけました。

アスペルガー症候群の特性と犯罪――『アスペルガー症候群の難題』著者による解説 / 井出草平 / 社会学 | SYNODOS -シノドス-

井出さんは社会学者であって、心理学の専門家ではないようなのですが、記事だけ読む限りは傾向としては理解できるところはありました。ただ専門家による検証がほしい。ちなみに、井出さんは昔から、はてなでブログを書かかれていた模様。

井出草平の研究ノート

『ides.hatenablog.com』 の人気エントリー - はてなブックマーク

昔の記事含めて読んで見ます。

この件は、報道スタンスの違い含めて、できれば荻上チキさん(id:seijotcp)に扱っていただきたいテーマです。

【追記】【音声配信】新幹線殺傷事件をめぐる報道の在り方について▼2018年6月11日(月)放送分(TBSラジオ「荻上チキ・Session-22」)(Session-22で少し触れられてた)

【追記】臨床心理学と犯罪心理学の専門家がこの件をコメントされていました。

新幹線殺傷事件「発達障害と犯罪」を強調した報道への大きな違和感(原田 隆之) | 現代ビジネス | 講談社(1/4)

個々のケースをミクロで見たとき、発達障害が犯罪の背景としては無関係でないケースもなかにはある。

ただし、その場合も発達障害を単独で犯罪の要因として見るような単純化した見方ではなく、セントラルエイトとの関連を丁寧に分析するべきである。

セントラルエイト(孤立してたり、家庭内不和があったり、無職だったり、余暇が活用できていなかったり)を一つ一つ検討していくというのはその通りでしょうね。原田さんの書かれたこの本は興味深いので、読んでみることにします。

心理職のためのエビデンス・ベイスト・プラクティス入門―エビデンスを「まなぶ」「つくる」「つかう」

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