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斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

保育園を増やすことに反対するのは高齢者なのか?男性の方が多いのか??

認可保育園の入園審査の大勢が決まるのが2月であるため、この時期は毎年、認可保育園に入園できたかが話題になります。PTAが話題になれば4月が来たことが分かり、帰省に関する怨嗟が蔓延れば8月か12月が来たことが分かります。セミが鳴けば夏が来たことが分かるように、季節の風物詩になっています。

 

 

今年も保活は話題に

最近は夫婦共働きが進み、また都市部に人口も集中しているため、認可保育園に関する話題は年々増加しているようです。今年は、

このはてな匿名ダイアリーの記事がきっかけとなり、ネット上で議論が噴出し、とうとうNHKで取り上げられるまで至りました。

 

自分もいわゆる『保活』について2年前に記事にしたのですが、

その厳しさは相変わらずのようです。

 

子育て層はすぐに当事者でなくなるから政治への影響力が弱い?

この、主に都市部、特に東京における保育園の惨状について、このような状況が政治的に解決されないのは、若者の投票率の低さに加えて、子育て層が現役時代にいくら保活で苦しんでも、喉元過ぎれば熱さを忘れるように、保活が終わって数年経ったら、当事者意識が薄れるからだという話がありました。

政治が子育て層を簡単に無視できる、投票率以外の大きな理由 | 駒崎弘樹公式サイト:病児・障害児・小規模保育のNPOフローレンス代表

 

たぶん、それが正しい部分はあると思います。例えば、PTAの強制参加の仕組み・拘束時間の長さが未だに残っているのには、ひとえに当事者である時期を切り抜けることが基本戦略となっているというのがあります。

PTAを変えようとすると膨大な手間がかかります。それをするぐらいなら、無難に切り抜ける方が楽。無事役員等を満期で終えたらこれでようやくお役御免であり、わざわざ後になってPTAを変えようとは思わない。 

 

一方で、根強く社会運動を展開し続けるのは意味があるというのも事実としてあると考えられます。例えば、名古屋大学准教授の内田良さんが2年前から組体操のリスクを訴え続けていたわけですが、

【緊急提言】組体操は,やめたほうがよい。子どものためにも,そして先生のためにも。▽組体操リスク(1)(内田良) - 個人 - Yahoo!ニュース

2年経った2016年の今年にとうとう文科省が対策をするまでに至りました。

事故多発の組み体操、安全策を要請へ 文科省、各教委に:朝日新聞デジタル

たまたま、不幸な事故が続いたという背景はあるにせよ、訴え続けることの効果というのはどこかで出てくるものです。

 

誰にも子ども時代はあり、高齢層には子育て経験世代もいる

一方で、都市部の保育園の惨状は当事者意識を持つ人が少ないからという考えに、疑問を呈する記事もありました。

子育て層の理解者が少ないという事実 - 何気ない記録

少なくとも人工的に生まれた人は少ないはずで、全人口の4分の1以上は“子育て経験層”である可能性があり(正しくはそういう計算ではないけど、かなり暴力的に書くとね)、また高齢世帯のもその理解者・支援者は多いはずである意味一番今発言力をもった勢力であるともいえる。 

しかし事実はそうではない。  

ざっくりと言えば、子育てが終わった世代が現時点で当事者ではないとしても、かつて当事者であったことから共感の余地はあるだろうし、また「少子高齢化が問題だ」と考えていない人は少ないのだから、当事者意識云々で解決するものではないという内容です。

これもある意味理解できるもので、PTAは地域共同体の維持のために必要であるとして積極的に支援する人はいますし(学校の嫁ならぬ地域の嫁)、同じ発想で地域の活性化のために子どもを育てやすいようにしようと考える人もいるでしょう。

このような論理展開の末、この記事の中では、子育てを経験済みの層にとって、子どもを育てやすい社会にするということの優先順位が低いのではないかという仮説が立てられています。

 

誰が今の時代の子育てにネガティブか?

上の記事では、

この問題は子育て云々がそもそも原因ではなくて、おそらくは昭和の時代と今の時代で人のかかわり方が変異していることが原因ではないかな、と思うが、何も定量的なデータも参考となる文件もあるわけではない。

という記述がありました。

これを読んで、自分が過去に書いた記事を思い出しました。ベビーカー利用に対して実は世代間でギャップがあるということを紹介したものです。

詳しくは記事を読んでもらうとして、ベビーカー利用について、同じ子育て経験がある人の中でも賛否にギャップがあることは、以下の図で分かります。

ベビーカー 子育て経験 年齢

※図は、国交省主催のベビーカー協議会第一回『資料4(公共交通機関におけるベビーカー利用について)』(PDF)から。緑の線は筆者。 

ベビーカー利用について子育て経験の有無ではなく、子育て経験者の末子の年齢によって差があるというものです。実は、末子が20歳以上となっている子育て経験者がベビーカー利用の抵抗勢力になっているのではないかと考えられる。

 

誰が「保育園の子どもの声が騒音だ」と感じているのか?

このような、世代間や、経験の有無での現在の子育て事情への賛否が分かる資料は他にないかなと色々調べてみました。

その中で、これは面白いなと思ったものがあったので紹介しておきます。誰が「保育園の子どもの声が騒音だ」と感じているのかが推測できるものです。

ご存知の通り、保育園建設というのは地域住民には反対されることが多々あります。そして、その一番の理由に挙げられるのが騒音です。厚生労働省の『人口減少社会に関する意識調査』では、以下のような質問をしていました。

Q27 住宅地に立地する保育所について「子どもの声が騒音」であるという声があり、近隣住民からの苦情や立地反対、訴訟に発展するケースも生じていますが、このような考え方についてどう思いますか。(単一回答)

どのような回答結果だと思いますか。

やはり、高齢者であれば高齢者であるほど騒音だと思い、この考え方に同感できると回答しているのでしょうか。結果は、以下のとおりです。

 

 

保育園 騒音 子ども 反対 賛成

騒音だという考えに同感できると回答している人の割合がもっとも多いのは40~49歳の女性でした。もっとも少ないのは60~79歳の男性です。イメージと大きく異なるのではないでしょうか。

「保育園を増やすことに反対するのは高齢者なのか?男性の方が多いのか??」というタイトルの問いについての直接的な回答ではないですが、この結果を見て、自分は必ずしもそうではないのではないかと思いました。

 

締め

「子育てを経験したのだから子育ての苦労は理解できる」という考え方に自分は否定的です。

 

先日報道されていた海外論文でもこんな推論がされていました。

子育て経験のある上司とない上司、どちらが育児の苦労に共感してくれるか? | HBR.ORG翻訳リーダーシップ記事|DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー

過去に苦境を乗り越えた経験を持つ人は、似たような苦境にあり克服できないでいる人に対して、特に厳しい見方をする傾向が強いようだ。 

過去苦境をサバイブできたからこそ、同じ苦境に現在いる人に対して厳しく見るというものです。これはあるあるとして理解できる方も多いのではないでしょうか。元ブラック労働者であった管理職がブラック労働環境を維持しようとするという、日本のブラック労働環境はまさにその典型ですよね。

 

以前、結婚・育児がネットで燃えやすいのは、誰もが大したエビデンスも持たないのに自分の経験を至上のものとして信じている一方で、自分の経験を一般化して語りたがるからと書きました。

※この話題で森戸さんの本の優しい表紙がサムネイルにあると違和感ありますね。

 

先ほどの調査で、ベビーカー利用については、子育て経験がない人は、子どもの年齢が20歳以上の子育て経験者よりも肯定的でした。「保育園の子どもの声が騒音だ」という考え方に同感できない割合が高いのは、60~79歳の男性が一番で、次が60~79歳の女性です。

 

同じ女性だから分かってくれる、子育て経験者だから分かってくれると考えて徒党を組むのは悪いことではないですけど、それに拘泥しすぎると、実は周りにいる、頼りになるかもしれない支援者の存在が見えなくなる可能性があります。

高齢者と若年層の対立構造を作り出そうとするのも同じことです。高齢者に対する社会保障費が大きすぎるとしてそれをカットしたところで、子世代が介護疲れになって共倒れするだけかもしれない。保育士の給与が低いのと同様に、介護士の給与も低いのは周知の通りです。

 

同じ女性だから、子育て経験者だから分かってくれるというのであれば、発言小町で、主に女性の子育て経験者同士が、些細な問題について、共感もへったくれもないもない罵詈雑言を毎日ぶつけあっているなんてことにはなっていないと思うのは私だけでしょうか。(小町話法)

 

 

仕事と家族 - 日本はなぜ働きづらく、産みにくいのか (中公新書)

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※2015年に買って良かった本の一つ。