今年このブログでは東芝について何度か取り上げています。業界自体もそうですが、自分は東芝について個人的に繋がりがあり注目しています。その東芝が先日大規模リストラを発表したのはご存知のとおりです。
不適切会計と修正後の決算と会社の今後を見ればこの流れはほぼ想定されたものでしたが、中央大学教授の竹内先生が記者にこう答えられたように、
エンジニアは新聞報道で会社の危機を知る - 竹内研究室の日記
先日、メディアの方から、「不適切会計をきっかけに東芝を辞めたエンジニアの取材をしたい」という依頼を受けました。
「知り合いの多くは主力のフラッシュメモリ事業に居るせいか、まだ誰も辞めていませんよ」と答えたところ、記者さんから、「えっ、なぜですか、こんなにヤバイのに」という返答。
私も他人のことを言えた分際ではないのですが、エンジニアは良くも悪くも経営などの「世事」に疎いものではないでしょうか。
エンジニアの方ですと、経営と距離がある、財務に詳しくないということから会社の危機になかなか気付けないことがあります。
ということで、経営層に近くない、財務にも詳しくない方がどうやって会社の危機を知るか、簡単に分かる指標や事象をいくつか紹介してみます。どちらかと言えば、大きめの上場企業の社員向けです。
- 同業他社と比較した時の自己資本比率が低い
- 社長が事業畑ではなく財務畑に、取締役に銀行の人間が入る
- 株価の急落
- 採用数の減少、採用活動の停止
- 交際費など不要の費用の支払いが絞られる、取引先への支払いが遅れる
- 事業の組織再編
- 締め
- 宣伝
同業他社と比較した時の自己資本比率が低い
近頃は完全な同業他社というものはなかなかありません。SONYは家電業界と言いつつも金融業で儲けていますし。
ただ、投資家や銀行目線で見た時はやはり同じ業界に属する会社は比較対象として扱われる傾向はあります。そのうち銀行が着目するものに債務償還年数と自己資本比率があります。債務償還年数は少しややこしいところがあるので、とりあえずパッと見で分かりやすい自己資本比率に限定しましょう。
総資産に占める自己資本の割合である自己資本比率は、低ければ低いほど財務体質が悪いと考えられます。同業他社と比べて著しく自己資本比率が低いとなると借入が返済できるか怪しいと見られます。
こうなると経営に銀行が口を出すようになります。収益体質の改善もそうですし、借入を減らすために事業の売却等も検討されることになります。事業の将来性よりも短期的な財務体質の改善に目が向くことになります。実質的に銀行傘下となりリストラが始まります。
自己資本比率はYahoo!ファイナンスで簡単に見れます。
シャープ(株)【6753】:連結決算推移 - Yahoo!ファイナンス
(株)東芝【6502】:連結決算推移 - Yahoo!ファイナンス
(株)日立製作所【6501】:連結決算推移 - Yahoo!ファイナンス
パナソニック(株)【6752】:連結決算推移 - Yahoo!ファイナンス
社長が事業畑ではなく財務畑に、取締役に銀行の人間が入る
銀行傘下に入っているかどうか、事業のリストラを行おうとしているかのポイントとして、社長が突然財務畑の人間になるとか、メインバンクから取締役が派遣されるなどがあります。もともとそういう伝統や文化があるなら違いますが、財務体質があまり良くない中でこういう経営体制になると、事業のリストラに走ることを見越したものと考えられます。
株価の急落
株価が短期間で大きく下がるようなことがあれば、それは何かの事実によって会社の将来の収益が悪化することを投資家が判断したと考えられます。株価が改善すれば一安心ですが、その後株価が低迷したままとなると、経営改善に大鉈が振るわれる可能性が出ます。
※画像は、東芝 投資家情報(IR):IR資料室より
採用数の減少、採用活動の停止
日本企業では今後リストラをすることが想定される場合、新規の採用は絞るようになります。既存の社員をリストラしておきながら新しく人を雇うのでは既存の社員に説明がつかないという発想からです。会社の将来のことを考えれば採用は継続したほうがいいんですけどね。事業単位で見た時に採用活動が停止され、これが数年続くようであればその事業の撤退も考えられます。
※画像は2016年度新卒採用計画のお知らせ|ニュースリリース:シャープより
交際費など不要の費用の支払いが絞られる、取引先への支払いが遅れる
絞れるものは絞れということになるため、交際費が減額されます。カラーコピーを減らせという話も出てくるでしょう。
また、お客さんからの回収は早く、仕入先への支払いは遅くするよう指示が出ます。こうすることで資金繰りを改善できるからです。ただし、一時的ならまだしもこんなことを長く続けると、お客さんも取引先も逃げていきます。
事業の組織再編
良い意味で事業を別会社化したり、事業を集約することはあります。ただ、業績が悪い中行われる組織再編は、その後の事業の売却等を想定している可能性があります。会社の中が綺麗に整理され始めたら何かが始まる時です。(業績の良い非上場企業ならば上場準備もあるでしょうけどね。)
締め
売却やリストラが悪かと言えば必ずしもそうではないところがあります。
ただ、社員としてそういうことが事前に分かっていれば、待つ以外に何かできることがあるかもしれません。給与がかなり下がることが想定されていれば、住宅ローンを背負うかどうか、子どもを私立の中高一貫校に入れていいかの判断にも影響が出てくるでしょう。身軽でないからこそ、こういうことを知っておいた方がいい人はいると思います。
心は一度折れてしまうとなかなか回復しません。火中にいる方はどうかご自身も大事になさってください。
以上、本題です。以下、宣伝です。お好きな人だけどうぞ。
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