斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

釣り記事解説"日本男子は、なぜベビーカー女子を助けないのか"

こんな依頼があったので、

元記事を読みに行ったら炎上系釣り記事でした。分析を求められていますので、簡単にコメントします。

日本男子は、なぜベビーカー女子を助けないのか 女の言い分、男の言い分:PRESIDENT Online - プレジデント

http://www.flickr.com/photos/52695441@N05/4948443866

photo by Antoine Ruedisueli

※昔のベビーカー。大きい!

 

釣り解説

まず、タイトルの主語が大きいですね。

日本男子は、なぜベビーカー女子を助けないのか

本文に書いてあることは、「僕は、ベビーカーを運ぶ女性を時々手伝うけど、なぜ内心は不愉快なのか」です。自分の話を日本人男性全員に広げている。

次に、自らの比較的極端な思い込みを繰り返し書いていて、これが大きな釣り針になっています。

ベビーカーは親のために開発された「便利な道具」に過ぎませんよね。

当のベビーたちもあの「車」に乗りたいのでしょうか。親からの距離が遠くなって不安だろうし、速足で歩いたり満員電車の中で押し合ったりいる見知らぬ大人たちの下半身だけが見えて危険を感じるでしょう。言葉を発することができれば、お父さんお母さんにおぶって欲しいと主張するのではないでしょうか。

僕には子どもがいないので実感はありませんが、ベビーカーで得をしているのは親たちだけでしょう。どんどん体重が増えて重くなる子どもを抱えずに済むし、密着もしないので夏場も汗ジミができにくい。ついでに子ども用品や自分の荷物も載せたり吊るしたり。例えは悪いかもしれませんが、スーパーのショッピングカートをそのまま店外に持ち出しているようなものですよね。楽に決まっています。

ベビーカーは必需品とは言えない。だから、運搬を手助けしない日本男子を責めることはできない。この意見、どこか間違っているでしょうか?

思い込みとしては、「乳幼児は抱っこをして欲しいもの」というのがありますね。後は、「乳幼児を抱っこし続けるのはそれほど苦ではない」というものもありそうです。

前者に関して言えば、抱っこを嫌がる乳幼児はいますよね。抱っこが好きな子でも、ずっと抱っこされるのは嫌だったり。抱っこで寝ない子がベビーカーで運んでいると寝るというのは、よくある現象です。

後者に関して言えば、乳幼児の成長曲線を一度でも見てみたらこんな印象にはならないはずなんですよね。平均体重で見ると、新生児なら4kgでしょうけど、1歳児には8~9kgになり、2歳児では10kgを超えてきます。例えは悪いかもしれませんが、5kgの米袋を2袋担いでいるようなものですよね。辛いに決まっています。

ここは、かなり多くの人が同じように指摘できるだけに、ついつい釣られてしまう。

後は細かいところだと、

で、実際に女性と一緒にベビーカーを運び終えてお礼を言われたら「お気をつけて」と声をかけて去ります。我ながら感じいいですね。でも、内心では「勘弁してくれよ。おぶってあげればいいのに。電車内では席を譲るからさ」と嘆声を上げているのです。

個人の感覚を書いているのでしょうが、タイトルで日本男子とくくっていますから、ベビーカーを運ぶのを手伝う男性は、実はこういう気持ちでやっているんですよという親切心をくさすことに繋がってしまっていますし(運ばれる方に疑心暗鬼の芽を植え付ける)、

こんなことを言いつつも、自分に子どもができたりしたら便利なベビーカーを使うようになるかもしれません。ただし、キャリーバッグを引くとき以上に注意するし、周りにも配慮しますよ。混雑した場所や時間帯などはできる限り避けます。

ベビーカーを使っている人=周りに配慮が出来ていない人という前提としていたりします。

ベビーカーの話題はただでさえ燃えやすいんですが、これだけ釣り針が多いと引っ掛かる人は多いでしょうね。

 

なぜこんな釣り記事が出来上がるのか

こんな釣り針だらけの釣り記事がどうして出来上がったかと言えば、大きく理由が三つあると考えています。一つは、プレジデント社による釣りタイトルの設定。もう一つは、大宮冬洋さんの持ち味である突っ込まれ体質。そして、誤配。

 

記事自体は筆者が書く部分が大きいですが、タイトルは媒体を持っている会社が別に決めることがありますよね。プレジデント社の『女の言い分、男の言い分』というシリーズにおいては、内容からかけ離れたタイトルをつけているものが多いので、恐らく編集部がより燃えやすいように、より釣れるようにタイトルをわざと過激にしているんじゃないかと思われます。釣りタイトルは媒体のクオリティを下げますが、PVは稼げるので。

プレジデントオンライン:「仕事人×生活人」のための問題解決塾:PRESIDENT Online

釣り記事解説"おやつカンパニー、過半の役員が辞めていた!" - 斗比主閲子の姑日記

 

二つ目については、大宮冬洋さんという方が、厭世的というか、卑屈というか、自虐的な人で、それをそのまま垂れ流すような文章を書くので、その人に、日本男子視点でベビーカーを語らせてしまったミスマッチということです。PVは稼げたでしょうから、ある意味正解だったので、ベストマッチだったかもしれませんが。

大宮さんのこの記事の前の記事がいい例です。タイトルに2割に過ぎないという話がありますが、本文には2割という数字は一切出てきません。釣りタイトルです。

「男の家事」半分やってるつもりでも実際は2割にすぎない 女の言い分、男の言い分:PRESIDENT Online - プレジデント

本文を一部引用すると、

「私は損するばかり。そんな結婚生活は嫌だ」なんていう女性はカスだとまでは言いませんが、面白くて夢のある結婚はできない気がします。夫を引き立てて輝かせることを自らの喜びとできる働き者の女性だけがこのコラムを読んでいるはずなので大丈夫ですよね。

こんな調子で、ネガティブな方向で言いたい放題です。突っ込まれやすい甘えた記事をあえて書く。

 

大宮さんが2012年に上野千鶴子さんに「再婚して住んでいるのが地方なので友達を作れるか不安です。どうやって友達を作ったらいいですか?」という人生相談をしているんですが、凄いです。ヘタれキャラ全開で、全方位的に上野千鶴子さんに突っこまれています。上野千鶴子さん相手によくやる。

友だちのもやもや 上野千鶴子氏インタビュー(1) | [生き方] 30代のもやもや | あしたの生活 | NHK出版

友だちのもやもや 上野千鶴子氏インタビュー(2) | [生き方] 30代のもやもや | あしたの生活 | NHK出版

友だちのもやもや 上野千鶴子氏インタビュー(3) | [生き方] 30代のもやもや | あしたの生活 | NHK出版

友だちのもやもや 上野千鶴子氏インタビュー(最終回) | [生き方] 30代のもやもや | あしたの生活 | NHK出版

 

大宮さんは、このプレジデントでの連載のスタンスを以下の記事で触れられています。

殴るほど夫が憎いときは…… 女の言い分、男の言い分:PRESIDENT Online - プレジデント

この連載(というか書く仕事全般)でお題をもらうと、たいていの場合は感動と戸惑いを同時に覚えます。「おお~、面白いテーマだなあ。意見を求めてもらえて光栄です。でも、オレには確固たる主張はない。前提となる専門知識もないしなあ。親しい人と居酒屋のカウンターでおしゃべりするつもりで、あれこれ書きながら感想や意見らしきものにたどり着こう。どんな結論になるのかは自分にもわからない」という感じですね。

居酒屋でしゃべる感じで、個人的な感想をダダ漏らしにするスタイル。ただでさえ無防備な大宮さんが更に無防備さをさらけ出す。釣り針だらけになるはずです。

 

このスタイルを理解して、毎回この連載を読んでいる人からすると、元記事で、

叱られそうな主張を後から書きますので、まずは自己防衛のための前置きから述べさせてください。

こう書かれた瞬間に、「ああ、いつもの居酒屋記事か」と頭を切り替えて読めるでしょうが、今回のように多くの人の目に触れてしまうと、こういう注意書きはスルーされますからね。多少は想定していたとしても、大宮さんもまさかこんなに釣れるとは思っていなかったと思います。本来の読者と違う層に誤配すると釣られる人が増える。

 

締め

もともと突っ込まれ体質の大宮さんに、燃えやすいベビーカーついて意見を求めた上で、更に誤解を招くタイトルを付けて誤配されたため、こういう結果になったということですね。

これに味をしめて同じような燃えやすい題材をライターに書かせようとするかで、プレジデント Onlineの方向性が見えてくるんじゃないかと思います。

 

追記

ベビーカー関係では以前こんな記事を書きました。ベビーカー利用に対して世代間ギャップがあるという話ですね。


この記事でベースにした『公共交通機関等におけるベビーカー利用に関する協議会』では、ベビーカー論争での論点のほとんどが触れられていますので、大宮さんのようによく知らない人はまずはここに掲載されている資料を読んでからベビーカー論争に参戦するといいかもしれません。

第一回の資料の、

はどれも面白いですよ。(リンク先PDF)

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